↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乱世の転生者  作者: 情熱のデンプシー
第二部 河の国編  第3章 商人クウガ
PR
85/99

スカウト


 大陸歴1531年、夏。



 ディムル王子誘拐から数か月。



 セリア王国は、エスパーラ帝国に宣戦布告。



 同盟国であるエメラルド国と連携を取り、エスパーラ-エメラルド戦線に介入。



 エスパーラ帝国はたまらず戦線を撤退。


 事実上の敗戦である。








「城都にいるのが口惜しいな」


 自分が戦場に出てさえいれば……。

 ゲイルは悔しそうに舌を打つ。


 辺りに凍えるような威圧感を充満させる。


「やはり、難敵はセリアですね」


 そんな中、気にせず言葉を発したのはフォールである。


 どこの生まれとも知れぬこの青年は、ゲイルに見込まれ引き上げられた。

 今ではゲイルの軍事相談役である「参謀」の地位にまで上り詰めている。


 そんな彼は寝ぼけ眼をこすりながら羊皮紙を長机に広げる。


「もともとエメラルド国攻略は、対セリア戦の足掛かりを手にするためのものでした。かの国にはセリア王国が長年攻めあぐねた天然の砦、ダイアナ山脈があります。ダイアナ山脈はセリア王都にもそれなりに近い。セリアを攻め込むための中継地点として、上が眼をつけるのもわかるというものです」


「想定外は、セリアがエメラルドを守ったことですな。此度の防衛戦にセリアのうま味はそれほどないはず。ふむ。王子殿下を我らが横取りした以上、セリアの援軍はないと思われたのですが。いったいエメラルド王はかの国とどのような取引をしたのか」


 顎に手を添え思案する老兵、名をレアンドロと言う。


 城都を任せるにはあまりにも若すぎるゲイル将軍。

 そのお目付け役、ご意見番として帝都から派遣されたゲイルの副官である。


「……エメラルド王子の様子はどうだ」


「その……相変わらずの人気者です」


 実に言いづらそうに、報告するのは秘書官の女性カノンノ。


 彼女はフォールの妹にあたる。

 兄に比べてきつい印象を与える彼女は、報告を続ける。


「最近では、城都に仕える多くの者と接触を図り、同志を募っております。その試み、我が国によからぬことを企んでいるのは明白。所詮は野卑な山猿エメラルド、早いうちに斬り捨てることを愚心致します!将軍っ!」


「ふむ。実は私も声をかけられております。自分の野望は乱世を終わらせること、そのために時が来たら力を貸して欲しいと。副官である私にまで声をかけるとは、なんともまあ大胆不敵です」


 と、レアンドロは苦笑した。


 そして、


「俺も誘われた」



「「え」」



 ゲイルの言葉に、フォールとカノンノは声を重ねて驚いた。


 ありえない……。


 城都を治める将軍本人にまで話をするなど、傲岸不遜にもほどがある。

 こういうことはもっとこう、コソコソやるものではないだろうか。

 どういう神経をしているのか……。


「フォール。王子殿下と関係を持った者のリストを作ってはどうか。裏切り者が出るならその中から割り出せる。いざと言う時に使えるやもしれん」


「ええ、レアンドロ副官。実は現在作成中です。ただまあ、あまり意味がないでしょうが」


 秘書官のカノンノは兄の顔をにらみつける。


 一体どういう意味か、と。


「リストに入るのは、城内を出入りする人間ほぼ全員。近いうちにそうなりますよ」


「なっ、なななななな……!やはり殺すべきです!これは我が国への謀反といっても差し支えありませんっ!そうそうに始末いたしましょう!」


 二の句がつげないほど狼狽するカノンノ。


 ゲイルはクツクツと笑った。


 相変わらず好き勝手やる。

 隠すつもりもないその行動。

 こちらがこうして慌てるのも計算通りか。


 あの道化師、真面目に相手をするだけ馬鹿を見る。



「捨て置け」



 終始抹殺を主張する、タカ派のカノンノもすぐさま黙る。


 それほどまでにゲイルの言葉には力があった。


「皇帝陛下の命はあの小僧の活用だ。フォール、あの小僧の今後は?」


「はっ。研究室の準備がようやく整いました。そこで労務に着かせようと思います。後は結果でご覧に入れて見せますよ」


「……いいだろう。上手く利用しろ。エスパーラのためにな」


 城内における玉座の間。

 そこにはゲイルが信を置く腹心たちが集っている。


 例えば、参謀フォールに副官レアンドロ、そして常にゲイルの側に控える秘書官カノンノ。


 ゲイルは腹心たちに向けて告げる。


「奇貨、置くべし。全てはエスパーラの繁栄のために」




『はっ!全てはエスパーラの繁栄のために!!』




 いつも淡白なゲイルは、薄く、しかしはっきりと幸喜な笑みを見せた。



 ディムルとカナミが関わると、この将軍は良く笑う。




 秘書官のカノンノは、苦渋の思いで唇をかんだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。