カリスマ性の勝負
「仲間を作ろう。共に時代を変える仲間を!」
人質。
ディムルエメラルド。
敵地にありながらたくましくも生き延びる後の賢王は、行動を開始した。
城都に勤める武人・文官たちに次々と声をかけた。
もちろん、誰でもいいわけではない。
必要なのは優秀な人材だ。
そして何より、自分と志を同じくし、志のために命すら懸けられる存在だ。
ディムルは多くの人たちに声をかけた。
無論、自分は人質の身だ。
エスパーラに反意を示すような発言はしない。
そのあたりは上手くやる。
彼には自信があった。
そして結果は、
「全敗ですか?」
「あははは、全敗です……」
カナミの問いに、額に汗をかきながら苦笑する
「うーん、使用人の人たちとはラポールを築けるんだけどなあ、軍役についている人になると不思議と上手くいかない。特に武人の人は……だあーっ!くそっ!!」
憎き敵国、エメラルド国の王子。
反発的な態度がとられることは仕方がない。
それでも、最低の好感度を覆す自信はあった。
好きと嫌いは紙一重だ。
反転させるのは難しくないと考えていた。
「……私には、少しわかるかもしれません」
カナミはうつむきがちに話しだした。
「我ら武人にとって、大切なのは忠義です。それは自分個人の御恩や感謝にとどまりません。一族が代々仕えてきた祖国や主君。武人の忠誠には歴史があります。それはそう簡単には覆りません」
カナミの言葉に俺は感嘆した。
なるほど、家制度か。
現代日本の価値観がベースとなっている俺には盲点だった。
前世の歴史においても世界各国に点在するこの制度。
一族代々が主家への忠誠を尽くす。
孫子の代になろうと決して裏切らず、個を捨てて貫く。
その代わりに優遇をもらう。
封建社会において代表的なシステムだろう。
これを覆すのは容易な事ではない。
カナミは家ではなく個人として俺に忠誠を誓ってくれている。
しかしそれは彼女が多感な時期の少女であったからだ。
揺るがぬ信念を持つ大人はこうはいかない。
だとすると狙いは……。
逡巡する俺に、カナミは悔しそうに続ける。
「なにより、ゲイル将軍はカリスマです。城都に仕える武人たちは、それを知っている」
カナミは思い出していた。
ゲイル将軍を襲ったその夜を。
『何故主君の気持ちを汲み取れん。この愚か者がっ!!』
……悔しいが、奴の言葉には力がある。
……厳しく、己を奮い立たせてくれる力が。
それは、麻薬のような魅力があることをカナミは知っていた。
あの輝きを前に、自分たちにいったい何ができるのだろうか。
そう思うカナミに対して、ディムルはぶつぶつと呟いた。
「ターゲットは多感な若年層、または家格が低く今の立場で満足していない者……一番の狙い目は、エスパーラ軍にゆかりの薄い者。入城許可を得ている業者や商人なんかが対象か」
ディムルには一切の躊躇は無かった。
状況がどうでも関係ない。
相手が誰でも関係ない。
いつだって次を考えている。
カナミは自分の偏狭さを恥じた。
あるじゃないか、ここにも。将軍にだって負けない輝きが。
「ありがとう、おかげでプランが見えてきた。後は俺とゲイル将軍、カリスマ性の勝負だね!」
ディムルはにかっとほほ笑んだ。




