少年の過去
ローラン・アメジストはセリア王国との国境付近で生まれ育った。
一族皆が軍に所属する武門の家系である彼は、幼いころから武芸を学び、相応の思想教育も受けていた。
セリア王国との戦争が始まってからは、出兵した両親の代わりに年の離れた兄が親代わりであり、兄に連れられ通い始めた剣術道場の門弟たちが家族であった。
今年の春、セリア王国との戦争が激化。
15歳の元服を終えていた兄や道場の兄弟子たちは戦場に赴き、
二度と帰って来ることはなかった。
自分のことをチビだと馬鹿にしていたチュス
飛びきり剣が強く意地が悪かったカルメロ
誰よりも熱心に指導してくれた塾頭のダリル
うざいくらい世話焼きな兄貴
みんな死んだ。
時代は乱世、弱肉強食の世の中だ。
友達だなんて考えはガキの理屈でしかない。
ならばもう誰も頼らない。
一人で生き、そして己が大望をかなえよう……。
視野の狭い稚拙な子供である彼は、そう考えた。
年並みの思いを押し隠して。
なのに、
『君と王子。友達でしょ。違うの?』
ただの従女に見透かされた。自分の想いを。
奥底に沈めて、押し隠していた想い。
本当は、一人は嫌だ。
「あ、ローラン。こんにちは」
タイミングよくディムル王子が通りかかった。
ローランは舌打ちした。
「なんだか、いつもより顔色いいね。立ち姿が綺麗だ」
「お前ん所の痴女にマウント取られたからな。全く貞操の危機だったぜ」
「??」
ディムルが疑問符を浮かべながら首をかしげる。
まあ説明する気はさらさらないのだが。
「その話はもういい、それより」
ディムル・エメラルド。
この国の王子で、剣術始めて半年足らずの素人で、勝てるわけねえのに何度も何度も向かってくる大バカもの。
「木刀もってこいよ。今日もしごいてやる」
ローランから誘ったのは、初めてのことだった。




