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転生したら精霊!? 元令嬢は召喚されました  作者: 奏多


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魔法探しともう一つの方策と

 サリエル王子は、すぐに決断した。


「可能性があるなら、やってみよっかー」


 そのために皇子は、時間稼ぎをしつつ、自由になる時間を手に入れることにした。

 まずは国王に頼んでみたようだ。


「もうちょっと考える時間がほしくて……。グレーティアの準備もあるじゃないですか。譲位なさるのは半年後ぐらいにできないんですかー?」


 譲位について賛成する意思はある。だけど心の整理がしたいし妹の結婚は成功させてやりたい。

 そう言われては、国王の方も無下にはできなかったようだ。


「あいつと相談してみよう」


 そう言ってバイロン公爵と話し合ったらしく、結果として五か月の猶予ができた。

 それによってサリエル王子は、バイロン公爵側の方針について、少し察せられるところがあったようだ。


「彼は一応、グレーティアを見逃すつもりはあるみたいだね。でなければグレーティアが出発してからの譲位になるかもしれないのに、五か月の延長を了承しないだろう」


 なるほど。最初はグレーティア王女の結婚も許さないつもりかと思ったけれど、五か月あれば準備を整えて送り出すことはできる。

 そもそも、準備は王女としての威信を保つために必要な物だけで、コンラート王子は状況が難しければ自分が全て手配するから、気にしなくても大丈夫だと請け負っていた。バイロン公爵と王子王女が反目していることは、彼も承知していたからだ。


 気にしなくても大丈夫というか、そんなことを気にして嫁に来てくれないよりも、今すぐ連れて帰りたいという感じだった。


 ある意味、あんなにもかしずかれて、意のままに動いてくれるというのだ。今まで厳しい状況で育ってきたグレーティア王女にとって、安心できる結婚相手だったかもしれない……と思う。

 私自身は嫌だけど。

 とにかくこの期間に、自分に合った魔法を探し出せなければ、サリエル王子は本当に危ない。


「その場合には、仕方ないので国を出るしかない」


 とラフィオンはあっさりと言うし、その時にはものすごく私も協力するけれど。

 具体的には、グレーティア王女の出発に便乗して私の故国へ向かうらしい。バイロン公爵も、戦力をもたずに出れば追いかけてこないと考えたようだ。


 ……少しどきっとする。

 『現在』を生きている方の私が、ラフィオンと会うことになるかもしれないのだ。

 過去に戻れた時のことを思い出してしまう。

 私は、不思議な手紙を送って来た人に会えるかもしれないと思って、港へ行った。

 結局ラフィオンはいないどころか、消息もわからず、グレーティア王女まで死んだと聞かされてしまったけど。


 あの時の私は、たぶん外の世界に憧れがあったんだと思う。

 父親の言う通りの人生しか歩けなくて。それはとても安全な道なんだとわかっているから、逃げ出すことはしなかった。何もできない貴族令嬢が一人で暮らそうとしても、娼婦に身を落とすのが関の山だもの。


 けれど、いつも私の心が反発を感じていた。

 ――自由に生きたい。

 せめて、一緒に暮らして行く人は自分で選びたい。

 そんな私の元に届いた不思議な手紙。たぶんそこから、何か人生が変わるきっかけがもらえるんじゃないかと思ってしまったのだ。


 実は自分で作ったきっかけだったわけだけど。死ななかった私に、そんなことがわかるわけもないので仕方ない。

 それにもしラフィオンと会うことがあるとしたら……。やっぱり私の人生は変わり、ラフィオンは外国の手紙を知らせてくれた人という認識に戻っているだろう。


 その後、ラフィオンと関わり続けていられるのか、それとも当初の予定通り、ラフィオンではない人に嫁がされてそれきりになるのか。

 想像したら、ぎゅっと胸が痛んだ。


《どうしたんだマーヤ》


 なぜか私の不安定さに気づいたラフィオンが、そう尋ねてくる。


《あ、いいえ。なんでもないわ》


 生き残る方法を模索するので一杯のラフィオンを、心配させたくない。だから私は、その場を誤魔化した。

 まずはグレーティア王女が無事に嫁いで、ラフィオンとサリエル王子が無事でいられるようにならなければ。

 そのためにラフィオンは、サリエル王子に奴隷になった元貴族の子供を集めるように言った。


「同じように、違う魔法を使えるようになる子供がいるかもしれません。それが証明できれば、貴族達の中には王子に必ず味方する人間が出るでしょう。その味方は、まずあなたを裏切らない」


 なるほど。周囲の目が厳しくて、そのまま子供を外へ追い出さなければ自分の立場を失いかねない母親や父親もいるだろう。そういった人達は、未来を与えることができたサリエル王子を決して裏切らないはずだ。

 さらにもう一つ、バイロン公爵の目を緩ませる策を行うことになった。


「ラフィー、危なくないかい?」


 サリエル王子はとても心配そうだったけれど、ラフィオンはやると決めたようだ。


「これに関しては、直接接触しなければ相手の出方も意図もわかりませんから。私自身がやるしかありません、殿下」


 そうラフィオンは、養子についての話し合いをすると言うのだ。


「国王陛下の言う条件の中に入っていたことです」


 さすがに不安がるサリエル王子に、ラフィオンはきっぱりと言ったのだった。

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