14.忠義を尽くす
クア=お金のこと
店主との話し合いが終わり、元レイラの部屋でアリエスが入れた紅茶を飲み一息ついていた。
ベッドのシーツ代と迷惑料で店主には謝礼金5万クアを支払うことになった。
本当は20万クアを払うと言ったのだが、店主がそんなに貰えないというので、店主の言い値から5倍にして支払うことにした。5万クアも多そうな顔をしていたか、迷惑料も含まれているというと渋々と店主は引き下がった。
「迷惑料と考えたら多くはないだろう?」
「はい。ロイ様のご判断は正しいかと。店主が謙遜し過ぎなのだと思います」
アリエスに意見を求めると、私は間違ってはいないと思った。
――コンコン。
「失礼します~。ロシュ様~、レイラ様が起床されたので、馬車を宿の前に持ってきてもよろしいですか?」
部屋に入ってきたクエリアが、馬車の移動を申し出た。
「まだだ。兵士長との話し合いが済んでいない」
「も~。仕事の遅い人達ですね~」
「私達が早すぎるんだ」
「早すぎなくはないと思いますけどね~」
「それよりも。レイラは朝食がまだだろう。馬車よりもそちらな方が先だ」
「はっ!そうですね~!ジェミネにも準備させます~!」
そう言ってクエリアは部屋から出ていった。
「仕事熱心ですが抜けている所をもう少し直してほしいですね。あの人がバルナさんの娘だとは思いたくはありません」
「少しくらいはいいだろう」
アリエスは、バルナをメイドの鏡として尊敬しているため、クエリアのようなふわふわとした口調で私やむすめ達に接するのも、バルナの娘であることにも反抗したくなるようだ。
「ロイ様がそうおっしゃるなら……」
「まぁ、レオも最近抜けているところがあるか――」
「はっ?レオが?」
抜けている行動をとっているのはクエリアだけではなかったなと思い口にして、しまったと思った。
レオのことを喋った瞬間、アリエスから怒気が溢れだしているように見える。
主に忠義を尽くすことがアリエスの信条。
それを騎士であるレオにもしてもらいたいと常々思っているようなのだ。強要とまではいっていないため放置していたが、
「ロイ様。申し訳ないのですが、詳しくお聞かせ願いますか?」
「あ、あぁ……」
アリエスの怒気発し方がバルナに似てきているのは、少し厄介だなと思い始めた瞬間だった。
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