12.我が公爵家の制服
馬車は何事もなく私の領地を抜け、宿泊をする町に到着した。
「とうさま。町を散策してきても?」
「いいがもうすぐ日暮れだ。短い時間しか散策は出来ないぞ?」
「それは大丈夫です。行き先は決めてありますから…それであの、メダの格好をもう少しラフに変えさせても?」
「どうしてだ?」
私の部屋を訪ねてきたレイラが町の散策を申し出てきたのはなんとなく予想はしていたが、専属騎士であるメダの服装を変えてほしいと言ってきた。
我が家の騎士は皆、薄い灰色のコートに白のパンツが制服として義務づけられている。ブラウスなどは自由だ。
同じくメイドの方も、藍色を基調としたワンピースに白いエプロンがついたものが制服として義務づけられている。
その服装を変えてほしいと。確かに町の中では浮くかも知れないが……。
「とうさま!私、前にも言ったと思いますが、とうさまを含めて顔立ちがいいんです!ですから、女性達が騎士様騎士様とメダやデネヴィーに言い寄られると、いつも私が邪魔者みたいな目で見られるのです!それが嫌なのです!」
「レイラを邪魔者扱いとは…」
「とうさま!お願いいたします!どうか持っていている私服に着替えさせてください!」
騎士達やメイド達は私服を持っては来ているが……。
「レイラの願いを受け入れたいのは山々なんだが…メダの私服はもっと目立つぞ?」
「えっ?」
「アリアス。部屋の外にいるメダに私服を持ってこさせなさい」
「はい」
部屋の中に私達の会話を邪魔しないようにいたアリアスに頼み、メダを私服込みでここに来るように伝えてもらう。
「あの。とうさま」
「メダの私服は目で見た方がより説得力があるぞ」
しばらくして。アリアスと共に入室してきたメダ。
「ロシュ様。持ってきましたよ」
「ここで開いて見せてくれ」
「分かりました」
布袋から取り出されたメダの服。
「レイラ。この服を来た人間を隣に連れて歩きたいか?」
「いえ。ご遠慮させていた出しますわ」
「ロシュ様!酷いですよ!人の私服をそんな風にいうなんて!」
「いや。私は構わないんだがな。メダ。分かるだろう?レイラがその服の色を好まないのを」
「えぇ、だからレイラ様の前では絶対に私服では現れません」
メダが取り出した服の上着はピンクだった。男性ではまず好んで着ようとは思わないであろう色を、メダは好んでいる。そして身に付けている。だが、レイラはピンクを絶対に好まない。プリリル公爵の子供達を思い出すからだ。
「メダがピンク好きだったなんて…」
「俺もレイラ様がピンク嫌いだと知ったのは専属になってからでして…申し訳ございません」
「いえ。人の好みは様々あるから……でも。ごめんなさい。とうさまが言ったように、私の前では絶対に着ないで」
「もちろんです」
「とうさま。メダはこの騎士服のまま連れて行きます」
「あぁ。行っておいで」
「メダ。服は私の方で戻しておくわ」
「助かるアリアス」
かくしてレイラとメダは町に散策へ出掛けた。
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