第77話 救出作戦(1)
翌日、俺達はヘンドリクセン王が囚われている城へ出発した。
兄ギュスターヴの配下、ケヴィン達、そして俺のパーティの総勢25名ほどの一行だ。
全員がケヴィンの魔法で隊商に変装しており、偽装は完璧だ。
「ヘンドリクセン王が幽閉されている城ってのはやっぱ警備厳重なのかな。」
「さあねえ。だがギュスターヴの配下が調べたところによると、城に配置されている兵はマルゴワール伯爵の配下だという事だ。廃城に近い場所だから、大軍勢が配置されているわけでは無さそうだ。」
ケヴィンが答えた。
「ふーん…」
俺は前方にいる兄ギュスターヴと(その配下)を見た。
兄ギュスターヴは隊商のリーダーに扮し馬に騎乗していた。
傍には護衛している屈強そうな男達だ。
ナイザール王国は所謂魔法王国であるが戦士が全くいないわけでは無い。
今ここにいるギュスターヴとその配下がそれにあたる。
ギュスターヴは俺の兄でもあり、偉大なる魔導士初代ヘンドリクセンの血を引く人物であるが、その内なる魔力を闘気に変換して戦うのを得意としていた。
勿論その闘気を使いこなす屈強な肉体を持ち、武芸も習得している強者だ。
ケヴィンの魔法で変装している間は闘気を使うことは出来ないが、その肉体や武芸だけでもかなり戦うことが出来そうだ。
配下の者達もギュスターヴに及ばないだろうが、同じような力を持っていると良いだろう。
「ところでお前達は戦いの準備は出来たのか?」
「んー? まぁね。」
「お前がアルフレッドや、何と言ったかな、あのギュスターヴ配下の獣人の…」
「ノエル、ね。」
「そう、あのノエルという獣人の魔導士と何かしていたのは見たが…。まぁお前がそう言うのなら大丈夫なんだろう。」
ケヴィンはそれ以上突っ込んで聞いてこなかった。
前にも述べたがケヴィンの変装魔法の効果を失わない為に、俺達は魔力を発揮することが出来ない。
また変装が解けた後は1時間は変装を魔法を掛けなおすことが出来ないのだ。
だがケヴィンは俺達の事を心配しているのだろうが、それ以上に信用してくれているようだ。
俺達は街道を進んでいく。
半日ほど歩くと、遠くに目的の城が見えて来た。
しかしどうやって城に入るのだろう?
「バルデレミー商会名の通行証があるそうだ。あの城への補給物資を届ける名目のな。」
ケヴィンが答えた。
なるほど、どうやらかなり準備に時間を掛けた作戦の様だ。
全て準備万端というわけだな。
そこから1時間ほど歩いただろうか。俺達は城門に達した。
警備の兵が数名城門脇の小さな扉から出て来た。通行証の確認に現れたのだ。
先頭の方にいた男が1枚の紙を見せていた。
警備兵がそれを確認し、指示を出した。
数分後、城門が開き俺達は中へ入城した。
全員が入城した所で、隊商の長に扮した兄ギュスターヴが右手を挙げた。
すると部下の男達が行動を起こし、近くにいた警備兵をなぎ倒していく。
いきなりかよ!
不意を突かれた警備兵は一瞬戸惑っていたが、その内の一人が呼子を吹き鳴らした。
ギュスターヴが馬から降り、その兵士に当て身を食らわせ気絶させた。
「よし、お前達10名は敵を足止めしろ。俺は父上が囚われているであろう牢獄へ行く。」
「御意。」
「ベルクール、お前は魔法を使えるな。ここに残る俺の部下の援護を頼めるか?」
「おう、任せろ。」
「残り5名は俺と来い。アルエット、お前はどうする?」
うーむ、牢獄へ向かうのは5名か。これなら兄を援護した方が良さそうだ。
「私達はお兄様と行きます。」
「分かった。無理しないで構わんからな。」
兄ギュスターヴは割といい人らしい。
「大丈夫ですよ、お兄様。私達もこの状態でも戦う方法は考えてあります。」
「ふむ、期待するぞ。…来い!」
ギュスターヴとその部下が走っていく。
俺達も後に続いた。
さてこれからだ。
ここから先は工夫して戦っていかなくては…!




