第78話 救出作戦(2)
ドガ!
「ぐへ!」
バキ! ゴン!
「ガ、ガハ!」
ギュスターヴが敵兵をなぎ倒していく。
…販促だ、じゃない、反則だ。
兄ギュスターヴのスキルは魔闘気、実は一般的なものである。
前にの述べたように魔力を闘気に変換するもので、扱える人物は少なくない。
それを十分に発揮するためには自らの肉体を鍛えたり、技を磨く必要がある。
俺の風の魔法で身体強化をするのも原理的には似たものともいえる。
だが今回は魔力を使用することは避けなければならない。
つまり兄は自らの肉体の力、技だけで戦っているのである。
それだけで強いのに、魔力が使えたらいったいどれほど強くなるのだろうか?
「これ、俺達必要あるのかな?」
俺は小声でアルフレッドに話し掛けた。
「うーん、ギュスターヴ殿下だけで大丈夫そうだよね。」
その会話をギュスターヴが聞いていた様だ。
「ハッハッハ。まぁ、俺の予定では忍び込めさえすれば終わったようなものだったのだがな。さて…」
ギュスターヴは足を止め前方にいる数名の兵を見た。
「あれは中々出来そうだ。」
なるほど。その中の1名、部隊を率いている隊長のような人物。
かなり高い技量を持っていそうな感じだ。
「アルエット。俺は一刻も早く父上をお救いしたいのだが、お前達にあれを任せられるかな?」
うーん、魔力を使えない状態では無理に決まっている。
だが俺達は準備してきたのだ。その一端を見せるのは悪くない。
「10分だけなら何とかしましょう。」
本当は最大30分まで大丈夫だが、脱出のための保険も残しておきたい。
「なるほど。父上はこの先に囚われているはずだ。では10分以内に戻れる様努力しよう。」
「お願いします。」
俺はそう言うと呪文書の力を開放した。
俺が使用した呪文書の効果、それは風の魔力の開放だ。
呪文書による魔法の発動は自身の内なる魔力を使用していないので、ケヴィンの変装魔法を邪魔することが無い。
「カール、俺と共に前衛。アルフレッド、リディ援護お願いね。」
俺の掛け声と共に、仲間達が態勢を整える。
アルフレッドは6枚所持している呪文書の内2枚を発動。
それはカールへの攻撃力及び速度強化魔法である。
リディも1枚を発動、効果はクロスボウへの矢、10発分の装填。俺の魔力の代わりである。
「行くよ!」
俺は剣を抜き、敵兵に迫った。
カールも俺に続いた。
敵兵は実力者と思しき隊長を含め、5名。この隊長は俺が相手をするつもりだ。
隊長は大剣を抜き、俺の剣を受け止める。
残りの兵も援護に出ようとするが、カールが立ちはだかった。
「ほう…!」
ギュスターヴが右手を顎に当てながら声を上げた。
妹とその仲間が恐らくこの城を守る中で一番熟練であろう者達を、それも人数で負けている状態にも関わらず相手をしている。
兄としては自分もしくは部下を援護に回した方が安全なのだろうが、妹はそれを求めなかった。
妹は10分は大丈夫と言った。
恐らくは自信があるのだろう。
確かにあの動きは大したものだ。
あの呪文書にいる身体強化が必要なのだろうが、確かな技術を身に着けているのは間違いない。
ならば自分はその間に父上を救出してくればいいだけの事だ。
「行くぞ。ここは大丈夫だ。」
ギュスターヴは部下と共に先を急ぐ。
この先には父王が囚われている。
救出作戦の成功は目の前だ。




