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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第8章 反攻編
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第74話 束の間の休息(2)

兄ギュスターヴ、そしてケヴィンとの再会してからの数日は静かなものだった。

グヴェナエル共和国自体はレオポルド率いるナイザール王国の影響下に入ったとはいえ、その経済の中心地たる港にはその影は殆ど見られなかったからだ。

「おい、アスカ。ちょっと良いか?」

ケヴィンがロイと共に部屋に入って来た。

「うん? どうしたの?」

「ちょっと話をしてぇ。出られるか?」

「分かった。アルフレッドも一緒で良い?」

「もちろんだ。外に待ってるから、準備出来たら出て来てくれ。」

「うん。アルフレッド、支度しよう。」




約十数分後、俺達は準備を終え外に出た。

まぁ準備と言っても少し髪の毛を整えていつものローブを羽織るだけなのだが。

俺達はケヴィンに連れられ、港町を守る城壁の上にやってきた。

「南の方に町があるのが見えるか? あれがグヴェナエル共和国の政庁がある町だ。」

俺はケヴィンが言った方角を見た。

その方角には確かに城壁に囲まれた町が見えた。

「グヴェナエル共和国には二つの中心があると言える。一つは国に指導部がある所、あの町がそうだ。もう一つが経済の中心地であるこの町だ。この町は、聞いているとは思うが、バルデレミー商会も含まれる商人ギルドが高度な自治が行われているんだ。」

なるほど、そのお陰で俺達だけでは無く兄ギュスターヴも比較的安全に行動出来ている訳だ。

「そうだね。でも話ってこの町についての説明じゃないでしょ?」

「そうだ。アスカ達はナイザール王国から脱出した時にノワールコンティナンに転移したと聞いている。俺はノワールコンティナンからこの大陸に戻ってくるまでのお前について知りてえ。」

ふむふむ。

ケヴィンはとても仲間思いの人だ。

俺達がノワールコンティナンに飛ばされた後、きっと心配していたことだろう。

さすがはケヴィンだ。そう思ってケヴィンを見ると、腰に下げている剣に手を掛けているのが見えた。

「は、はぁ…!?」

俺は思わずびっくりしたような声を出した。

「俺は“ローラン”の方ではAランク冒険者をやっている。Aランク冒険者として、ノワールコンティナンから生きて帰って来たお前の実力を知りたいんだ。」

な、なんだってー!

いくら冒険者は好奇心の強い人間が多いからって、とんでもないヤツだ。

…あ、俺も冒険者か。

心の中でそんなノリツッコミをしている間に、鋭い太刀筋で剣が振り下ろされるのが見えた。

その瞬間俺は風の魔力を足に集中させ、数メートル後ろへ素早く飛んだ。

「ほう…。並の冒険者や魔物なら両断出来るように斬りかかったつもりなんだがな。これを難なく躱すか。」

「向こうではもっと鋭い居合い抜きを見てるからね…」

俺は体勢を起した。

「それにしても、いきなり斬りかかってくるなんて危ないじゃない。」

俺はそう言いながら自分の刀に手を掛けた。

「ふむ、そいつがお前の武器か。」

「そうだよ。味わってみるかい?」

その刹那、俺は一気に抜刀して突きを繰り出した。

「ム…!」

ケヴィンは剣でそれを受け流した。




「す、すげえな…」

ロイが思わず感嘆の声を上げていた。

「アスカの奴、いつの間にあんなに腕を上げていたんだ?」

「アスカはノワールコンティナンでテオドール・クザンという人に師事してたんだ。もちろん、アスカの努力も凄かったけど、テオドールの指導も凄かったな。」

「テオドールだって? あのAランクのか…」

アルフレッドの言葉に、ロイが目を丸くした。

「そんなに有名な人なのか?」

「ああ。長年冒険者やってるものにとっちゃ、かなりのな。もう5年以上はノワールコンティナンで活動してて、Aランクでも最上位に近い奴さ。」

ロイが腕を組んだ。

「へぇ、そうだったんだ。確かにギルドの施設じゃ、そんな感じだったけどね。」




約10分程、俺とケヴィンは剣を交わした。

「あー、ケヴィン。ストップ!ストップ!」

「ああ? せっかく楽しくやってたのに。」

「もー俺、疲れたから!」

俺はムスッとしながら座り込んだ。

ケヴィンが実力の何割を出したのかは知らないが、戦っていた中ではそれほど引けを取っていなかったと思う。

「アスカ。俺は結構本気で戦ってたんだぜ。もうお前はAランク並の実力になってるはずさ。」

「そ、そう?」

まぁそう言われて悪い気はしないが…。

ケヴィンの真意は分かっている。

「…ケヴィンは俺がまともに対人戦闘が出来るか心配していたんだろ?」

「ああ、分かったか?」

対人戦闘と言えば、ノワールコンティナンからの航海中に海賊と対峙した。

だがこれから巻き込まれるであろう戦いは本格的な内戦の一部であろう。

「アスカ。お前くらいの実力ならば、今までの戦いでは優位に戦えた場面もあっただろう。だが今度はレオポルドが率いる軍隊が相手だ。さすがに、今回ばかりは俺でも敵を殺すつもりで臨むつもりだ。それが結果的に仲間を守る事にもつながるからな。」

ケヴィンの言う通りだ。敵となる人の数は海賊とは全く違う。

俺はチラッとアルフレッドを見た。

例えば俺の大切な仲間が、敵に殺されそうになったとする。

そして俺がその敵を殺せば仲間を守ることが出来る。

そうなった時、俺は敵を殺せるのか?

敵には家族があるかもしれない。

だがレオポルドに率いられた軍の一員だ。

レオポルドの命令があれば、俺達へは並々ならぬ殺意を持つだろう。

殺らねば、殺られる。 そういう世界がまさに目の前に迫っている訳だ。

その時が来れば…

俺が今手にしているこの剣は、

吸い込まれるように黒く輝いている美しい剣は、多くの人の血を吸うことになるのかもしれない。


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