表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

触手って拘束のイメージ強いよね

テンポ重視で書きました。

8/13(木)〜8/16(日)の4日間で集中投稿。

 目が覚めたら全身触手のバケモノになっていた。


 手足の感覚はない。

 代わりに、自分の体から伸びる触手一本一本から、これまで味わったことのない感覚が伝わってくる。


 ――いったい何が起こってるんだ?


 試しに触手を一本持ち上げてみる。

 濁った緑色のその触手は、わずかな湿り気を帯びていた。


 ……たぶん、タコに近い姿をしているんだと思う。鏡で見たわけじゃないから想像だけど。


 少なくとも、前方が見えているので目が付いているのは間違いない。

 呼吸の感覚から横広の大きな口をしていると思われる。

 鼻はたぶん付いてない。




 ――ついさっきまで満員電車に乗っていたはずなのに。


 いつものように起きて会社に向かう途中、スマホ片手にSNSを眺めていたのが最後の記憶だ。

 それが気付けばこの全身触手の姿で、どこかもわからない森の中にたたずんでいた。


 これは、いわゆる魔物転生というやつだろうか?


 死んだ記憶もなければ神様に会った記憶もないが、結果だけ見ればWeb小説で読みなれた状況に似ている。


 進化を重ねて成り上がっていくあの物語に。


 ということは、ステータスやスキルなど、あの創作の世界で目にした力が今の俺にも宿っているかもしれない。

 そう思った瞬間――ブンッという音とともに目の前に半透明のウィンドウが現れた。


 ーーー

 名前:タノウエ

 種族:レッサーローパー

 進化ゲージ:0%

 固有スキル:魂を啜るもの

 所持スキル(1/5):痛覚無効

 ーーー


 タノウエって俺の前世の苗字じゃん。

 見慣れた名前に心の中でツッコむが、その下には知らない情報が続いていた。


 まずは種族のレッサーローパー。

 たしか全身触手のモンスターの名前だったはずだ。今の自分の姿を考えればその種族名にも納得がいく。


 次に進化ゲージだが、これもわかりやすい。今は0%だが100%になれば進化するのだろう。


 スキル欄が二種類ある理由はわからないが……所持スキルの痛覚無効はイメージしやすい。

 現に今も触手が地面に触れているが、分厚い布越しに触っているような不思議な感覚があった。


 そして固有スキルの、魂を啜るもの。

 その言葉に意識を向けると、さらなる説明が現れた。


 ーーー

 【魂を啜るもの】

 相手の生命力を吸い取ることができる能力。

 直接噛みついた方が吸収速度は速いが、体で触れるだけでも微量の生気を吸い取ることが可能。

 進化ゲージの上昇率にプラスの補正がかかる。

 ーーー


 これは、チートでは?


 古今東西、魔物転生系と進化は切っても切り離せない関係にある。その進化ゲージを溜めやすくなる能力ならハズレでは無いだろう。


 その上で生命力の()()だ。

 今後この森でサバイバルを行う上で、自分の継戦能力は最重要項目である。生命力の吸収がどの程度の効力かはわからないが、攻撃にも回復にも使える当たり能力の可能性が高い。


 これなら何とか生き残れるか?


 正直、触手のバケモノになっていると気付いた時は絶望した。見た目がキモいし、そこまで強くもなさそうだったからだ。


 だけどこの【魂を啜るもの】があれば話は別だ。

 かつて読んだ物語の主人公たちのように、進化を重ねて遥か高みを目指していけるかもしれない。


 ――グゥ~。


 安心したら腹が鳴った。

 もっとも、このバケモノボディのどこが胃なのかは良くわからないが。


 触手を引きずりながら森の中を移動する。

 いくら【魂を啜るもの】があるとはいえ、今の俺は転生したばかり。そこらの魔物にも負ける可能性がある。

 早いところ進化して強くならなければ、安心して夜眠ることもできない。


 触手をなんとか動かして木の上に移動する。

 そのまま奇襲の準備を整え、獲物を待つ。


 途中ゴブリンが目の前を通り過ぎたが、三匹で固まっていたため襲撃を断念した。仮に一匹だったとしても棍棒を持った相手と正面戦闘はしたくない。


 まずはもっと弱い魔物から狙わなくては。

 そうして見つけたのは、一匹のうさぎだった。


 額から角を生やした桃色の毛のうさぎは、周囲を見渡しながら影に隠れて移動している。

 ゴブリンとすれ違う時も息を潜めてやり過ごしていた。


 うさぎの様子を見るに、この森の食物連鎖の最下層に位置する生き物なのだろう。

 これまではその小柄な体を活かし隠れ潜むことで生き延びてきたに違いない。


 だが、上からは丸見えだ。


 周囲からうさぎ以外の魔物がいなくなるのを待ち、飛びかかる。

 ――ドシャ。という音と共に落下の衝撃が体を突き抜けるが、痛みは感じない。

 そのまま俺はうさぎに覆いかぶさった。


「キュッ!?」


 触手をうさぎの四肢に絡め、動きを封じる。

【魂を啜るもの】の効果で少しずつ体に力が流れ込んでくるのを感じた。

 このまま押さえ込めば――。


「キュキュ!」


 ふいに、うさぎの体が光り、抵抗が激しさを増した。

 先ほどまでと比較にならないほど暴れ回り、俺を抱えたまま猛スピードで走り出す。


 このままじゃ振り落とされる!


 慌てて触手を総動員してしがみつく。

 その中の一つがうさぎの目を塞ぎ、パニックになったうさぎがさらに加速した。


 あ、まずい。


 止める間もなく木に激突する。

 衝撃で触手の拘束がほどけ、空中に放り出された。


 ……この隙に逃げられたら次いつ会えるかわからない。転生したての俺が倒せる相手なんてそう多くないはずだ。

 この機を逃したら確実に進化が遠のく。


 急いでうさぎの元に向かうと、奴は逃げ出すことなくその場で頭を押さえてうずくまっていた。


 チャンスだ。

 再び触手を操り、うさぎにのしかかる。

 うさぎも精いっぱい抵抗するが、そこに先ほどまでの力は込められてない。


「キュッ! キュキュ! キュゥ」


 目尻に涙を浮かべながらうさぎが首を振る。

 おそらく命乞いをしてるのだろうが、こっちだって魔物を倒して進化しなければ生きていけないのだ。


 心を鬼にして、口を大きくあける。


 せめて苦しみが長引かないように一気にトドメを刺す。


 ――ごめんな。


 そう言ったつもりの俺の口から漏れたのは、かすれた重低音の獣のうなり声だった。


 口元を血が濡らす。

 それを思いっきり啜ると、活力のようなものが体の中心から湧き出してきた。


 うさぎの目から光が消える。

 同時にその体から白い光の玉が飛び出し、俺に向かって飛んできた。

 避ける間もなくその光が体に当たり、吸い込まれるように消えていく。


 ――ピコン!


 ――スキル【ハイパーブースト】を獲得いたしました。


 直後、電子音声のような女性の声が脳内に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ