猫好奇心 ▶︎尻尾むぎゅっ
2匹でお風呂に入る。
ナナヤから見て、ルルルフの家のお風呂はきちんと整頓されている。
シャンプーや石鹸が、キチンと棚に収められているだけで、毎度驚いてしまう。
「ところで……シャンプーじゃミャい瓶があるけど、これは何かミャ?」
「香油ニャ……って、うちに泊まる事、結構あるニャよね?」
「こーゆ? 使わないミャ」
ルルルフは、香油の役割を教える。
しっかり洗っていても、パサパサ毛並みだと、見すぼらしく見えちゃうし、櫛の通りも悪い事を伝えると、ナナヤは首を傾げっぱなしだ。
「クシ?」
「お風呂上がりに櫛をかけると、毛が絡みにくくなるニャ。あと、短い毛でも毛並みが綺麗になるニャ」
香油の効果を聞いても、まったくピンときていないナナヤは、口を開けっぱなしで首を傾げる。
「ニャんでもトライしようニャ! あとで使おうニャ」
「ま、待つんミャ! 猫好奇心は、身を滅ぼすミャ!」
「ルルルフは滅んでニャいから、平気ニャよ」
=・ω・=・ω・=・ω・=
お風呂から出ると、ツヤツヤのネコが鏡の前で並んでいた。
「誰ミャ、これ」
「ナナヤだニャ」
暗めの灰色の毛ではあるが、艶があり光が当たっている部分は白く見える。
鏡の前には、いつものダルさ全開なナナヤではなく、ちょっとだけシャキッとしたように見えるナナヤが映っている。
毛艶で印象も変わる驚きを知り、ナナヤはパチパチ瞬きが止まらない。
「ミャ、ミャ、ミャーーー!! こんなお上品に見えるネコがナナヤとか、ありえんミャーーー!!!」
「長毛のカーチェは、もっと丁寧にお手入れするんニャよ」
「こ、こ、これより、丁寧にミャ?! そんなの大変ミャ」
わたわたと手足をバタつかせて、ナナヤは動揺を隠せずにいる。
「こうやって、たまーにお手入れするのも大事ニャよ。自分を大事にするのも、必要ニャ」
喉をゴロゴロならしながら、ルルルフは気分あげあげの言葉を渡す。
「オシャレカーチェたちは、こんな事を毎度やってるのかミャ……大変ミャ……」
「大変の後にとっても満足できるから、頑張れるニャよ。ナナヤだって、ちょっと手強いモンスター狩ったら、すごい満足感あると思うニャ」
「爽快ミャ! ナナヤ、頑張ったミャ! ってなるミャね」
「手強いモンスター狩るために、武器のお手入れしたり、トレーニングしたりするのと、似たようニャもの」
「そういうモンなんミャね〜」
方向性は違うが、結果のために努力するという事は一緒なので、ナナヤは納得したようだ。
そして、風呂上がりのミルクを一気飲みして、口の周りに白髭をつける。
「フサ猫せんせーみたいだミャ!」
「フサ猫せんせーは、ミルクが付いても、わからニャそうだニャ」
ゴロゴロ喉を鳴らして、尻尾をパタパタ動かしてご機嫌そうな2匹。
「明日はお休みだミャ。夜更かしするミャー!」
「だめニャ。ルルルフ、明日採取に行くから早起きするのニャ。お寝坊すると、朝ごはん食べれニャいよ」
「ミャっ?! ナナヤも採取についていきたいミャ!」
「わかったニャ。なら、もう寝るニャーよ。日の出前に出発して、朝露いちごを採るのが目標ニャ!」
そう言いながら、ルルルフは台所に立ち、ご飯支度を始める。
「寝るんじゃミャーの?」
「朝ごはん作ってから寝るニャ」
「ナナヤにも出来ること、あるならやらせてミャ」
家事初心者に、いきなり何かを作ってもらう事はさせられないので、ルルルフはどの棚のどこにある何を取ってもらうか、丁寧に説明する。
自分で取った方が早いけれど、お手伝い意欲があるうちに覚えてもらい、小さな事からやってもらう事にした。
そして、朝ごはんの準備まで終わると、2匹は眠りについた。
=・ω・=・ω-=-ω-= Zzz
前日に朝ごはん準備をしていたので、すぐに朝食を食べる事が出来た。そして、朝ごはん準備のついでに軽くお昼用のご飯も準備していたので、お弁当と水筒を持つ。
「採取カゴはこれミャ?」
「そうニャ。よくわかったのニャ」
「ルルルフが採取行く時に、このカゴ使ってるの、ナナヤ知ってるミャ!」
あれ? 意外とよく見ている。ルルルフが真っ先に思ったのが、それだった。
ナナヤが汚部屋製造ネコなのは、片付けを教えてくれるカーチェが居なかったからなのか? そんな疑問が浮かぶ。
「もう1個同じ採取カゴがあるから、それをナナヤは使って欲しいニャ」
「わかったミャ」
そして、2匹は森に出かけた。
「採取って、どうするミャ?」
狩りをするカーチェは、採取をする者があまりいないので、採取方法はわからない。
「今日の目的は、イチゴとお薬にニャる草と、ニンゲンの町に売りに行く鉱物ニャ。それを採るのに質がいいものを見るんだニャ」
村の様子を見て採取する物を決めたり、村のカーチェに欲しい物を聞いたり、頼まれたりするので、それを取りに行く。
森のすぐ近くに、朝露を滴らせたイチゴがなっている。
「まず、これニャ」
実がなっている場所から、5センチくらい先の茎を切る。
「ここらへんの茎を切ると、またのびてくるニャ」
「茎と実の境をプチリじゃミャーのか」
植物の特性を教えながら、森の恵みをもらう感謝を忘れないよう、ナナヤに教えると、ナナヤは採取跡のイチゴの茂みにペコリとお辞儀をして、「もらいますミャ」と告げる。
次は鉱物だ。
「鉱物って、岩山とか洞窟にあるんじゃミャーの?」
「ルルルフ、この森で見つけたのニャ!」
そうして、ルルルフに続いて森の中をナナヤは辺りを気にしながら歩く。そして耳が音を捉え突然ルルルフの尻尾を掴んだ。
「ニャギャッ」
「モンスターの気配がするミャ」
カーチェ自体、気配察知能力が高いのだが、魔物退治をするカーチェは、さらに高い者が多い。
モンスターに気づかれる前にこちらが気付けるので、ナナヤはルルルフにいち早くそれを伝えた。




