もらった物 ▶︎お片付け
村のカーチェらがくれた品々を、ナナヤの部屋に片付けていく。
ルルルフの父母が使っていた部屋なので、ナナヤは丁寧に扱う。
さすがに、日常生活力がマイナスに振り切れているナナヤでも、そのくらいの良識は持ち合わせている。
――ルルルフが、大事な大事なパパママのお部屋を、ナナヤに使わせてくれるミャ。
ルルルフのパパママに、怒られミャいように大事に使うミャ!
ふんす! と鼻息を吐き出してひとつひとつ丁寧に扱う。
「どうしたニャ?」
「すまん、今までちゃんと丁寧に物を扱ってこなかったから、動作がおそいミャ……」
「いいニャよ。慣れたらテキパキ出来るんニャから」
父母の部屋を、大事に使ってくれようとしてくれるナナヤに、ルルルフの頬が緩む。
「じゃあ、ルルルフお夕飯作ってくるニャよ」
「わかったミャ! ナナヤはお片付けしてて大丈夫ミャ?」
「大丈夫ニャ」
ゆっくり最低限の生活力をつけて貰えば、ナナヤが村を出る時、困りはしないだろう。
片付けや掃除、料理や皿洗い。洗濯とそれに付随する洗濯物干し、乾いたらたたんでしまうなどなど。
ナナヤは覚える事だらけになりそうだが、ゆっくりゆっくり覚えていけばいい。
まだ時間はあるのだ、とルルルフは鍋をかき混ぜながら頷く。
「ルルルフは狩りを少し上手になりたいから、教えてもらおうかニャ」
助けて助けられての生活は、今までもこれからも続く。
=・ω・=・ω・=・ω・=
ナナヤは自分の家では、ポイポイ物を放っていた。
だが、今手元にあるのは、村のみんながくれた物。
もしかしたら、くれた物の中には、思い出として取っておきたかった物だってあったかもしれない。そう思うと、申し訳ない気持ちになって、大事に大事に扱う。
「これから、ヨロシクミャ」
貰った服、教科書、ペン……さまざまな物を丁寧にしまって、ナナヤはよろしくの挨拶をする。
そして、次のお片付け荷物のひとつを手に取ると、びっくりして毛が逆立った。
「こ、これはイカンミャ!」
手にあるのは、三毛柄とふさふさな毛のカーチェを模したぬいぐるみ。
夫婦人形と言われる、番となったカーチェに贈られるもので、結婚祝いの定番品だ。
飾るにしても、他カーチェが飾っていいものでは無い。
「たぶん、フサ猫せんせーだミャ」
布で丁寧に包み、学校行くときに持っていこう、と机に置く。
片付けをしていると、ほか三組ほどの夫婦人形が出てきた。
「まさか、押し付けたわけじゃミャーよね……そうじゃミャいと信じたいミャ」
夫婦人形は、村1番のお針子が作るので、とても可愛く綺麗に作られている。そのような品は、ちゃんと持ち主に返さないと、バチがあたりそうだ。
どのカーチェかひと目でわかるくらい、そっくりに作れる器用さに感心しながら、4組目の夫婦人形を布で包み終える。
「ナナヤー! ごはんニャー!」
「わかったミャー」
ルルルフに呼ばれて、ナナヤは一旦部屋を出る。
すでに、夕飯の盛り付けや配膳が終わっている。明日からは、手伝える事を覚えて、増やしていこうとナナヤは頷いた。
「お片付けは順調かニャ?」
「たぶん……けど、整頓には自信が持てミャいから、見てほしいミャ」
「わかったニャ」
生活感はあるものの、しっかり片付いているルルルフのおうち。
今日は散らかってる、という時はテーブルの上に飲み終わったコップが置いてある状態の事を言う。ナナヤからしたら、どこが散らかってるのかと思う。
ルルルフとナナヤでは、散らかっているの基準が大幅に違うので、整頓上手なルルルフにコツを聞きたいと、お願いをすると、ルルルフは快諾してもらえた。
食事が終わり、ルルルフは食器の洗い方をレクチャーする。まず、お皿についているソースなどは水で洗い流す。
そして、油汚れの少ないもの順に洗う。
おっかなびっくりながら、お皿を丁寧に洗い、洗い上がりの合格ラインなども教えてもらったナナヤは、コクコク頷いて感心した。
「お片付けのコツは、まず物の役割を決める事ニャ」
「役割??」
ルルルフは食器棚を見せる。
「まずこのお皿。これには普段のご飯用のお皿という役割が振られてるニャ。そしてそれは、よく使うものにニャるから、食器棚の取り出しやすい位置に、置いておくのニャ」
楽に取れる位置に、普段使いのお皿がある。
食器棚の下の開戸を開くと、綺麗な柄のお皿がある。
「ここは、お客さんが来た時に出す、お客さん用の食器が入っているニャ」
「上は普段用、下はお客さん用をしまうのが、この棚の役割なんミャね?」
「ルルルフのお家ではそうニャ」
普段用という役割の食器・カトラリーは、取り出しやすく、使いやすい位置に置いておく。
「つまり、お部屋にある物も役割をつけて、しまう位置を決めるミャね!」
「その通りニャ!」
部屋に移動すると、棚には色々なものが並べられている。
その中で、普段使う頻度が高そうな物を、机の周りに持ってくる。
「机のそばの棚に、学校で使う物をいれるニャ」
教科書、裁縫道具、文房具、ノート類を棚にしまう。
「ナナヤは、机の中を使うと、全部そこに隠しそうニャから、引き出しは使っちゃダメニャ」
机の引き出しの中に入れてあった鍵を取り出して、施錠してしまう。
「か、隠すってどういうことミャ??」
秘密にするものなどなさそうなため、隠すの意味が分からず、ナナヤは訊ねる。
「あとで片付けよう、って思って机の中に入れちゃうと、視界から見えなくなるから、忘れっぽくニャるんだニャ。それが繰り返されると、机の中がゴミだらけになるニャ」
「あー、わかるミャ。いつかしまおうって、押し入れに入れておくと、いつの間にか押し入れがパンパンになってるミャ」
ナナヤの後回しクセを封じる為に、机の引き出しという見えなくなる場所は、使用禁止となる。
そして、なんでもポンポン物を置かないように、机から離れた場所の棚は、お気に入りのぬいぐるみや雑貨を飾る場所と定める。
「お気に入りアイテムの陣地に、余計ニャ物は置かニャい!」
「わかったミャ!」
見えないしまい方をしない。役割を決める。役割ごとに置く場所を決める。と、ルルルフが普段実践している方法をお伝えして、ナナヤもそれを真似する。
「全部の片付け終わったら、床に物を置かニャい」
「わ、わかったミャ!」
今までポイポイ放っていた生活から、一変してしまうけれど、みんながくれた物、ルルルフの形見である両親の部屋という、片付けやすい条件が揃った場所で、整頓生活スタートとなる。
仲間思いであるカーチェたちなので、良心が痛む粗雑な行ないはしづらい。
ナナヤはお片付けのできるカーチェになるぞ、と鼻息を荒くした。




