ルルルフ ▶︎採取ピクニック
挿絵があります。
お休みの日の朝、寮の朝ごはんを食べて、前日に注文したお弁当を受け取り、カバンに詰める。
採取道具を持って、準備が終わったので外に出ると、パイセーンがすでに門扉の前に居た。
「おはようございますニャ! お待たせしてごめんニャさい」
「大丈夫ニャッチ。まだ待ち合わせ時間前ニャッチ」
気持ちが逸っているのか、待ち合わせの時間よりだいぶ前に支度を終えたルルルフ。
実はパイセーンも同じで、待ち合わせ時間よりかなり前に、寮の前にやってきていた。
そしてふたりは、近くの森へ採取に出かける。
=・ω・= ⸝⸝'ᜊ'⸝⸝=* ॑ᗜ ॑*=
「パイセーンさん、この森すごいですニャ! お宝のいっぱいですニャ〜〜!! 見たことない素材たくさんニャ〜〜!!」
石をどけてみると、貴重な虫がいる。
木の皮が目の前で剥がれたと思ったら、プルプルメープルの樹液が溢れてきた。
草むらをかき分けたら、宝石までいかずとも高値で売れる綺麗な天然石が落ちていて……
「お、おう……。すごいニャッチな……」
街からいちばん近いこの森は、レアアイテムなど出るはずもないくらい、初心者ハンターが採りつくしているような場所である。
下手すれば、街の人も薬草の採取に、森の手前くらいまでは来るような場所だ。
「パイセーンさん! これ、ルルルフ見た事無いですニャ。何かわかりますかニャ?」
そう言って差し出す物は琥珀。
琥珀の中には、見たこともない生物が閉じ込められていた。
「オイも詳しくはわからないが、たぶん学者に渡せば喜んでもらえるニャッチ」
「わー、それなら嬉しいニャ! パイセーンさん、学者さん知ってるですニャ?」
「ギルドに伝手はあるニャッチ」
次々に発見される珍しいアイテム。
ルルルフはこの街に来てから、ちっとも採取に出掛けていなかったため、久しぶりの採取で、のびのび過ごしている。
――アネイゴさんが、ルルルフは珍しい品を採取してくることが、ややあると聞いていたが、ややではなく、これはドチャクソだと思うニャッチ……
しばらく採れていなかったレアが、まとめてルルルフのところへやって来ているような雰囲気だ。
しかし知らない土地のアイテム。これらは一般的に採れる物だろうと思って、ルルルフは採取を続ける。
「ニャー!? 初めて見たー! これはニャんだろっ!?」
――次は、どんなレアものニャッチか……?!
「パイセーンさん、たまごが落ちてたニャ!」
「…………ん?」
大はしゃぎで、ルルルフはたまごを持ってきた。
たまごはルルルフの半分より、ちょっと大きめくらいの大きさ。殻は光に当たると色が変わる、実に不思議なたまごだ。
「中身の見えないシャボン玉みたいなたまごで、かわいいニャー」
――オイはそんな卵、知らないニャッチ……。
おそらくモンスターの卵であろうものだが、このあたりにいるモンスターの卵くらいはきちんと把握しているパイセーンは、見たことのない卵に混乱してしまうものの、オトナとして動揺しないよう冷静に振る舞う。
「ふむ、近くに巣のようなものも見えないし、そのたまごからは温度が感じられるニャッチね。中身は生きているようニャッチ。ちょっと、こいつの巣がないか見てくるニャッチ」
「はーいですニャ」
特に何か言われなくても、付近で待機するルルルフ。
たまごを採取かごに入れて、布をかけておく。
「今のうちに、採取した物、整頓しちゃおうニャ!」
見たことのない物、馴染みのあるものを種類ごとに分ける。
仕分けが終わった頃、パイセーンが戻ってくる。
「その卵はおそらく、親モンスターが運んでいる最中に落として気づかなかったニャッチな」
この辺りのモンスターの卵ではないこと、それらしき巣もなく、このまま孵ればこのモンスターは、自然の摂理に則り淘汰されてしまうだろう。
しかし、見たこともない卵で、ひとつ嫌な予感がするパイセーンは、たまごを持ち帰ることにした。
「採取した素材はどうするニャッチか?」
「あっ……」
いつもなら村のみんなに渡せばいいが、今は街にいて渡せる知り合いが居ない。
久しぶりの採取を楽しんだが、元の場所に戻しきれない物もあるので、どうしようかとうんうん唸る。
「それじゃ、買取屋に持っていくニャッチよ」
「わかりましたニャ。あ、このはちみつ色の石はパイセーンさんが学者さんにお渡しできますかニャ?」
「発見者はルルルフだから、ギルドに渡して名前を書かないとダメニャッチ」
いろんな振り分けを再度パイセーンとして、一息ついたところで、ルルルフはお弁当を取り出した。
「はい、パイセーンさんの分ですニャ」
「ニャッチ?! オイの分……!?」
寮のお弁当を渡すと、パイセーンは目を輝かせる。
「オイは、カーチェギルドの寮に入れなかったから、美味しいと評判の、寮のご飯が未食ニャッチ……まさかこんな形で食べられるとは……」
しかし、お弁当は給料天引きのはずだ。
「街に戻ったら、お金を払うニャッチ」
「今日、お休みの日なのに、ルルルフに付き合ってくれたお礼ですニャ」
ルルルフは採取をしたかったが、パイセーンはもしかしたら、お家でゆっくり過ごしたかったかもしれないのに。そう思うと、ルルルフにできるお礼はこのくらいである。
こどもからご飯を奢ってもらうかたちではあるものの、ルルルフなりの精一杯を考えてくれた気持ちを、断るわけにもいかない。パイセーンはありがたく受け取った。




