きのこ ▶︎エプロン
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――翌朝
寝坊がちなナナヤを引っ掻いて起こしたルルルフは、朝ごはんの支度をする。
昨晩キノコをたくさん食べたので、朝は違うものを作ろうと、パンをブレッドケースから出して炙る。
「んミャ……こっ、この、においはっ!」
「こないだ見つけた、プラチナハニーのトーストだニャ」
顔を洗って朝の支度をしていると、漂ってくる匂いに気づいたナナヤは、瞳孔がぐりんと丸くなりビックリ顔を出す。
「昨日のメキマツタケといい、今日のプラチナハニーといい、レア食材が食えるなんて、ナナヤ幸運だミャ」
ルルルフは、自分では一切気づいていないが、通常の物より上等な品――レアアイテム遭遇率が、群を抜いて高い。
学校の授業では、頻繁に採取へ行く事がないので、先生も偶然見つけた、と思う程度だった。
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普段の食料は、採取に出かけるカーチェや、作物を育てているカーチェたちからのお裾分けで、あげたりもらったりで成り立っている。
一応、お店もあるが、おとなたちは何かしらおまけしたりと、定価通りで売ることはない。
そして、基本物々交換である。
カーチェは、みんなで分け合う・助け合う精神が強いので、誰かが損をしないよう、気を配り合っている。
食料を作れない畑仕事が苦手なカーチェや、採取が苦手なカーチェは、狩猫――ハンターカーチェとして村に近づくモンスターを追い払ったり、山に入り肉になる獣を狩ったりして、村の安全と食料調達に貢献している。
皆、得意なもの・できるものを、惜しみなく行なう。
そして、カーチェはとても優しい種族だと、人間にも伝わっている。
人間がそういう習性を利用する可能性があるので、人間とカーチェで構成された総合カーチェギルドは、そういったことから警戒する組織がある。
なかでも、カーチェギルドが持っている家政カーチェギルドは、カーチェにとって人気の職場である。
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「はい、ネココアだニャ」
「さんきゅーミャ」
ネコーヒーが苦手なナナヤには、ネココアを淹れて渡す。
ルルルフはネコーヒーとトースト、という朝の定番を楽しむ。
「今日の授業は、お裁縫だミャー……苦手だミャ」
「でも授業で、苦手・得意がわかるから、伸ばすことも、克服だって、できるようになるニャ」
「ルルルフは真面目だミャ」
ナナヤは狩りが得意で、この村で1番の凄腕狩猫だ。
まだ、子供なので学校に通っているが、修了したらハンターギルドに登録して、人間のハンターのお連れカーチェになる予定らしい。
それが無理ならソロハンターにでも、と考えているようだ。
狩り以外の生活面が壊滅的なので、学校には家事を学びに行っているようなものである。
汚部屋製造猫とルルルフに思われるくらい、生活力はそれなりに低いのだ。
学んだことが活かされているのか、生活面の酷さは改善されているかは、ナナヤしかしらない。
「ルルルフは、真面目にコツコツ以外……要領良くシュバババーってのが、イマイチできニャーから」
タスクで表すと、シングルタスクだ。
マルチタスクを実行すると、どこかしらで失敗してしまうので、ひとつひとつ丁寧に行うことにしたようだ。
「ナナヤは狩り以外、からっきしミャ! お掃除が出来るルルルフはすごいミャ!」
カーチェは、よく気がつくし、褒め合う。相手のいいところを、みんなで引き出し合う種族である。
「ありがとうニャ。ナナヤはおっかニャいモンスターを狩れる凄腕ハンターニャ! ルルルフには出来ニャーよ!」
朝食を終えて、食器を片付けて、お裁縫道具を持って家を出る。
ナナヤの家に行き、お裁縫道具を持ってくるように言って、ルルルフは玄関の前で待つ。
ドンガラ ガラガラ ガッシャン チリーン パリーン
よくわからない、わかりたくない音が聞こえたが、5分後くらいにナナヤは出てきたので、音の正体は知らないふりをして、学校へ向かった。
「おはようニャー」
「おはミャー」
教室に入り、みんなに挨拶をする。他の生徒のカーチェたちも挨拶を返してくれる。
「キノコ、おいしかったニャン。ありがとうニャン」
「いえいえですニャ」
メキマツタケをお裾分けしたご家庭の中に、クラスメイトのコがいて、お礼を言われる。
彼女は溢れんばかりの笑顔でお礼を言ってくれたので、とても美味しかったのだろう。ルルルフも笑顔になる。
それから少しして、教員が教室に入ってくる。授業開始だ。
「今日の授業は、お裁縫です。さ、お道具を出してくださいニャニャ。前に作っていたエプロンの続きニャニャよ」
お裁縫が得意なカーチェは、課題のエプロンをサクサク作り上げて、刺繍などの飾り付けに入る。
ルルルフは、一針一針、丁寧に通し、慎重に縫い上げるため、得意な生徒に比べると進捗は遅めである。
「いたいミャー!」
時折、派手に針を刺すナナヤの悲鳴が聞こえる。
「あミャー!」
「ミャギャッ!!」
「ミャアアァアァン!!」
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午前中で授業は終わりだ。出来上がったものは友達と交換したり、家で使ったり様々だ。
ルルルフは家で使う用のエプロンと考えていたので、ほつれが出ないよう、丁寧に縫っていた為、午前中いっぱい掛かかりつつ完成したものの、飾りのないシンプルな仕上がりになった。
家で使うから、シンプルなもので構わないし、しっかり縫えている事を確認したルルルフは、自分にしては上出来だ! と鼻息をフスンと吐き出した。
「時間内に終わってよかったニャあ……」
「いっぱい刺さったミャ」
本当は綺麗な刺繍なども入れてみたいところだが、ルルルフは刺繍を刺した事がないため、いつかの授業で習う時に覚えたかった。
「ルルルフ。エプロンあげるニャン」
きのこをお裾分けして、お礼を言ってくれたカーチェがトテトテと近づいて、ルルルフにエプロンを差し出した。
エプロンのすそには、ナナヤとルルルフがハイタッチしている刺繍が刺されていた。
「んニャ! こんニャ素敵なエプロンを貰っていいのかニャ?!」
ルルルフの毛並みの柄が、綺麗な刺繍で再現されていた。
授業中に刺し終えているのにも驚きだが、デフォルメされたルルルフとナナヤがとても可愛らしい。
「もちろんニャン! エプロンひとつでも、家事のやる気上がるニャン!」
「ありがとうニャ、ありがとうニャ」
メキマツタケのお礼と言われ、エプロンを受け取ったルルルフは丁寧に畳んで、カバンにしまった。




