ヒトネコ族 ▶︎カーチェのルルルフ
――とある世界の、とある森の奥にある村
そこの村には、ヒトネコ族とも呼ばれる種族の『カーチェ』が暮らしている。
ここだけではなく、他の地域にもカーチェがいたり、ヒトキツネ族がいたりと、ニンゲンとは違う風貌ながらも、人語を使い生活を営む種族がたくさんいる世界である。
カーチェは基本、働き者で、心優しく、穏やかな種族。
村に住む、カーチェであるルルルフ。
灰色ベースのアメリカンショートヘア柄。
模様は濃い灰色をしているルルルフは仔猫……ではなく仔カーチェ――こどもに分類される年齢で、今は村にあるカーチェたちが営む学校へ通っている。
お裁縫、採取、狩り、料理、他それらに付随する座学などなど、将来働くための勉強を、ルルルフや他の仔カーチェらはしており、今日もいつも通り学校へ通っていた。
今日の授業も平和に終わり、帰路へつく。
トテトテと歩いて、家を目指すルルルフ。
「今日の授業はちょっと難しかったニャ……後でしっかり復習して、わからニャかったとこ、明日せんせーに聞こうニャ」
勉強を頑張るのは、学校を卒業するためと、大人になったらきちんと働くため。
先生から認められると学校を卒業し、村の外に出ることができる。
覚えられることをたくさん覚えようと、勤勉なルルルフは、帰り道も頭の中で勉強をしようとした。
しかし後ろの方から、シュタタタタと足音が聞こえてくる。
その足音は、ルルルフの隣でピタッと止まり、隣には仔カーチェが1匹現れた。
シュッと手を上げて、ややドヤ顔である。
「ミャ! 追いつけたミャ!」
「あ、ナナヤ。先に帰ってたんじゃニャかったの?」
「トイレ行ってたミャ!」
長毛で暗めな灰色の毛をした、カーチェであるナナヤ。
この村では、親がいないカーチェである。
ルルルフも両親はいないが、過去にはお互い両親はいた。
ルルルフとナナヤの両親は、病気でこの世を去ってしまった。遺された家で、1匹暮らしをしているもの同士である。
村のおとなたちは、引き取ろうとしてくれたが、気持ちだけ受け取り、両親の思い出がある家で、それぞれ暮らし続けている。
周りのおとなカーチェたちは、何かと世話を焼いてくれるので、それらに甘えつつ、村での仕事もして過ごしている。
「ブツブツ言ってたけど、何かいたのかミャ?」
ナナヤの問いかけに、ルルルフは今日の復習をしてたことを告げる。
「まだ将来何がしたいか、わからニャいけど、しっかり勉強しておかニャいとと思って、授業の内容思い出してたニャ。ルルルフは特技って言える何かを、持ってニャいから……」
お裁縫が得意なカーチェは、ニンゲンの町でお針子として働くし、お料理や掃除が得意なカーチェは、家政カーチェギルドに登録して、ハウスキーパーやコックになったりする。
ルルルフはしっかりハッキリと「これが得意だ」と声を大にして言えるものがわからない。とため息が漏れた。
ルルルフの顔を覗き込んで、ナナヤが更に問いかける。
「ルルルフは、したい事がないなら、村で暮らしていくのかミャ?」
「ニンゲンの所で働いてみたいって、思ってるニャ。でも特技って胸を張って言えるのがニャいから、先生だってきっと困ってるニャ……。ルルルフを紹介しづらいんだと思うんだニャ……」
狩りも、採取も、お裁縫も、お料理も、お掃除も、大工仕事も、釣りも、何もかも平均的に出来るけれど、「このコは○○が得意です!」と紹介しづらいと思われる自分。
ルルルフ自身が先生だったとしたら、そんな風に思うため、耳がペタンと折れてしまう。
「んじゃ、人間の町へお試しに行ってみようミャ! 家政カーチェギルドにお願いして、お仕事体験ミャ!」
「そんニャ制度あったかニャ??」
「ないミャ。先生に『お試しをお願い』するんだミャ!」
もし、職業体験をできるようになれば、カーチェたちもお仕事を決めやすいし、色々体験する事で、やりたい事の幅が広がる可能性もあるはずだ。とナナヤは鼻息荒く告げる。
「そんな事を思いつくニャんて、ナナヤはすごいニャ!」
ルルルフは折れた耳をピンと立てて、拍手を送る。
「よーし、さっそくセンセーのところに、行くミャー!」
もう、学校の授業は終わっていて、夕方な現在。
お家に帰ったら、夕飯の支度をする時間になってるけれど、ルルルフとナナヤは1人……ではなく、1匹暮らし同士なので、夕飯の時間は自分次第。
2匹は踵を返して、トタタタと学校への道に戻っていった。
「センセー、たのもーミャ!」
先生たちが仕事をしている部屋に、ナナヤは突撃した。
ノックなくバーンと扉を開けるナナヤに、ルルルフは後ろでワタワタしてしまう。
「おや、ナナヤ。ノックくらいしなさいにゃ〜」
おっとりした声が返ってくる。
ルルルフとナナヤにお勉強を教えてくれている先生は、白くて長い毛を持つカーチェで、フサ猫センセーと呼ばれている。
先生に、「ごめんミャ!」と軽い調子で謝ったナナヤは、早速さっきの事を先生に話した。
=・ω・=・ω・=・ω・=
「ふむ、見習いカーチェとして、さまざまなお仕事体験かにゃ〜……面白い事を思いつくもんだにゃ〜」
「そうミャ! 1番得意なことが、1番やりたい事ではないカーチェもきっといるミャ! ヤル気と能力がバランスとれてミャいと、お仕事長く続かミャーと思うんだミャ!」
先生は、目を細めて、ニンマリ笑って頷いた。
「そうだにゃ〜、総合カーチェギルドへ手紙を書いてみようにゃ〜。結果は後日教室でみんにゃ〜に言うから、今日はもう帰れにゃ〜」
「はいですニャ。よろしくお願いしますニャ」
「お願いするミャ!」
ルルルフとナナヤは頭をペコリと下げて、学校をあとにし、再び帰路へ着く。
「上手く♪ いくと♪ いいミャッ♪ ミャッ♪ ミャー」
スキップしながら、わくわくが止まらないナナヤは、口から漏れ出る言葉が歌のようにリズミカルだ。
ルルルフも楽しみなので、しっぽがふりふり揺れていた。
「あ、ナナヤ! 昨日キノコをいっぱい採れたから、ゴハン食べていって欲しいニャ」
「ミャ! いいのかミャ?!」
昨日、学校が終わって、山に採取へ行ったら、群生地を運良く見つけたので、キノコをモリモリ採取できた。
ご近所さんにもお裾分けしたけども、まだ沢山あるそうだ。
ルルルフは採取に行くと、たま〜に群生地を見つけるラッキーが起きる。
こういう時に、ご近所さんたちに面倒見てもらっている恩返しをしている。
ありがとうを返せるって嬉しい事ニャ。ナナヤにもありがとうを返せるニャ。と、ルルルフの心は弾んでいた。
「何のキノコ見つけたミャ?」
「メキマツタケにゃ!」
「んミャー! すごいミャ! ってかあの山にメキマツタケ生えてたのが驚きミャ!」
メキマツタケは、大きくて美味しいキノコで、ニンゲンの町に売りに行ったら、いいお金になるキノコだ。
形と大きさがいいキノコは、おとなたちに見てもらい、すでに渡し済みだ。
ルルルフの手元に残った物は、きれいな形はしていないし、小さめなキノコたち。しかし高級食材には変わりなく、とても美味しいキノコなのだ。
食卓に上がれば、テンション鰻登りな食材である。
=・ω・=・ω・=・ω・=
「ん〜ミャ〜〜い! 最高ミャ!」
「おいしいキノコでよかったニャ!」
キノコ汁とキノコステーキに舌鼓を打って、幸せいっぱいな2匹。
「ふミャー、お腹いっぱいだと気持ちよく寝れそうミャ」
「それはダメニャ!!」
ナナヤはソファに丸まって、そのまんま寝ようとしたから、慌ててお風呂に連れていくルルルフ。
2匹でお風呂に入った後は、湯冷めしないようにしっかり拭いて、お布団へ入った。
こうしてナナヤは泊まっていく事もある。
「おやすみニャさい」
「んミャー、んミャー」
一足早く、ナナヤは夢の中。
ルルルフも大きなあくびをしたあと、コテンと頭を枕に預け、夢の中へ旅立った。




