アネイゴ ▶アネゴ
挿絵があります
「あにゃにゃー? ルルとナナか?」
後ろから聞こえる聞いたことのある声に、ルルルフとナナヤの耳がにゅっと伸びた。
「あ、アネゴミャ?」
「アネゴさんだニャ!」
「アネゴいうにゃーや、アネイゴにゃーよ!」
2年くらい前に村を出たカーチェのアネイゴ。
村の仔カーチェからは、アネゴの愛称で親しまれていた。その愛称通り、姉御肌なカーチェだ。
「アネゴさん、聞いてニャ!」
ルルルフは村から出てきて今までの流れを話すと、アネイゴはルルルフとナナヤを撫でた。
「そんじゃ、あたいがご馳走するにゃーら、不安はにゃーいね?」
「ごちそーになるミャ!」
顔見知りなら不安はないので、ナナヤは遠慮なく言い放つ。
「ったく……お金について教えておきにゃーって、何度も言ったのに、まーだやってにゃーのな……」
お金について知らないカーチェは、人間の街に出てくると最初にぶつかる試練である。
「ってわけで、あたいが案内役を変わるにゃーよ」
「わかりました。アネイゴさんよろしくお願いします」
受付嬢のカーチェはペコリと頭を下げて、食堂から出て行った。
「アネゴ! ご飯どうやって食べるミャ?」
「ここにメニューがあるだろ、書いてある物の中から食べたいご飯を決めるのにゃー」
「ふミャふミャ。定食ってなんぞミャ」
「ネコメ、お味噌汁、お漬物がセットでついてくるメシにゃー。焼き魚とかお肉とか、ナントカ定食って名前で、ナントカ部分には、おかずが書いてあるにゃーよ」
見知った顔になり安心したのか、ナナヤの口数は増える。
食堂は街にもたくさんあるので、お気に入りの場所を見つけるのもありだが、ここは安いのとカーチェギルド所属の間は、給料天引きにしてくれるので、最初のうちはお世話になる方がいいとか、色々街での暮らし方を教えてくれた。
「アネゴのお話、異次元の高等会話すぎて、ナナヤにはわからんミャ……」
「すごくわかりやすかったニャよ……?」
3ヶ月〜半年目安で、総合カーチェギルドに所属して、依頼人の仕事を1日のうち決まった時間だけこなす。
基本泊まり仕事はしない。
家政系は3件以上依頼をこなした上で、本契約をしていい。
狩猫系は、討伐と採取と配達依頼を受注経験すること。
そして、お給料はお金で支払われて、カーチェギルドの寮に住まう間、お給料からお部屋を借りているお金と、カーチェギルド併設の食堂での料金が引かれる。
これらを説明すると、ルルルフはしっかり納得し、ナナヤは半分理解した。
「んじゃ、カーチェギルドの職員証をあとで発行するにゃー」
「おねがいしますニャ」
「カーチェギルドで、お仕事体験してるって証ミャね」
「そうにゃー」
そして、やってきたご飯。
いただきます、と手を合わせてペコリと頭を下げる。
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「……ネコメの味、違うミャ……」
「ニャんか、違うニャよね」
村のお米と比べて、甘みがなく、ちょっとモソモソしているので、ナナヤとルルルフは耳がペタリと倒れる。
「そりゃうちの村のネコメは、高級品だからにゃー」
「アネゴ、こーきゅーひんって、ナナヤが知ってる言葉だと、村のネコメは高級品じゃミャーと思うミャ」
村で作っているお米は、食べ慣れた美味しいお米。
外に出る商猫カーチェが売ってくれて、別の物資になる。
よそでどう扱われているかは、わからないのもあり、村のほとんどの者が高級品だと知ることはない。
「毎日食ってるから、そう思うんだよにゃー。あたいも最初そうだったにゃー。今食べているそのネコメが庶民の食べるモノにゃーよ」
「ま、まさか、村のネコムギパンも、お高級かミャ?!」
「うちの村のは高級まで行かにゃーい、プチ贅沢のパンで使われる事が多いにゃーよ」
故郷は色々作物にとっていい環境のようで、良質な物が多い事も教えてもらう。
「慣れないうちは、ごはんに不満出ると思うにゃーよ」
「……それは、フサ猫せんせースペシャルより不味いのミャーか?」
「……アレを超える不味さにゃー、出会った事にゃーね」
「なら、大丈夫だニャ!」
村での隠れ名物『フサ猫スペシャル』
お祭りなど村のみんなでご飯を食べる時に、大鍋で作られるフサ猫せんせー特製のミルクがゆだ。
変な材料は一切入れてないのに、激マズなミルクがゆになる、村1番の不思議ごはんである。
「アレと比べたら、全てのご飯が激ウマメシだにゃーよ……とはいえ、あたいもアレがあったから乗り切れたんだけどにゃー」
「ナナヤも、あれで自分のご飯スキルは大丈夫って思ったミャ」
そして、当のフサ猫せんせーは、凹まずに開き直っている。みんなの心を強くするご飯と言っているのだ。
そして、食事を終えてカーチェギルドで、職員証を発行してもらった。
「今日はあたいが、カーチェギルドについての説明と職業体験の細かい説明をするにゃー。明日はルルルフはあたいが、ナナヤは別の職員がスキルを見るにゃー」
職業体験は、ほかのカーチェがいる村でも、多く行なわれているので、制度が整っているようだ。
「ニャんと……! うちの村にはそんな情報入ってニャいのに……」
せっかくナナヤが思いついた、画期的なお仕事探しの方法は、すでに他の村では実践されていた。
それでもルルルフは、そんな事を思いついたナナヤがすごいなぁと感心してしまう。
「村に帰るカーチェも、最初に受けた衝撃を忘れて、いつの間にか、こっちの常識やルールに馴染んじゃうにゃーよ」
なので、違和感が消える頃には、村に教えてあげようという記憶すら吹き飛んでいる。
自分が仕事を探す・覚えるのに必死すぎて、余裕がなくなっているという。
ルルルフは今日の事を日記に書いて、落ち着いたら村に知らせようと心の中で誓う。




