愛知県警のケイドロ 2
山坂順二はもっともな言い分に
「確かにそうですね。いらぬことを言いました」
と応えた。
確かに警察庁にこれ以上目を付けられては警視庁や大阪府警の二の舞を演じることになるかもしれない。
苛立ちを感じたもののこれ以上の抵抗は諦めた。
赤川昇は心で安堵の息を吐き出し
「では指示通り受け入れると返答しておく」
と告げた。
山坂順二は一礼すると
「はっ」
と答えて執務室を後に一歩廊下に出ると
「あと一息……赤川がいなくなれば愛知県警本部長の椅子が待っているのに」
と呟いた。
組織から今は目立った動きを控えるように言われている。
東と西の中枢である警視庁と大阪府警に楔を打たれ、下手に異変を見せると不審な存在として更迭される心配があるからだ。
今はまだ鹿児島県警以外の県警本部長は純粋な警察職員が勤めている。
赤川昇も純粋な警察官だ。組織の人間ではない。
もし警察庁が組織のことを嗅ぎつけていて県警本部長に手を伸ばし同時に立ち上がれば自らしてきたこともバレて更迭どころでは済まないだろう。
山坂順二は目を細めると
「俺は絶対に県警本部長の椅子まで上り詰めてやる」
と呟き、足早に自らの執務室へと向かった。
警察庁と大阪府警の更迭騒ぎによってJNRの工作員も桐谷世羅の想像通りに警戒を強めていたのである。