【番外編】結婚式の朝
春の陽気に包まれ、晴天に恵まれた今日。アイリスは花嫁となるべく、早朝から入念に仕度を整えられていた。
レースをふんだんに使った豪奢なウェディングドレス、そんなウェディングドレスに映えるようにと作られた、洗練されたデザインの宝飾品。
それらを身につけるアイリス自身も、今日の為にと1カ月以上も前からメイドさん総出のエステによって磨きをかけられており…素晴らしいドレスや宝飾品に着られることなく、しっかりと着こなしていた。
仕度が終わったと報告を受けた両親は、アイリスの姿を見て、式の前から涙を浮かべ…それにつられてアイリスも泣きそうになっていたのだけれど…。涙を零してメイクが崩れてしまっては、メイドさん達がせっかく時間をかけたメイクが台無しになってしまうと……涙を堪えていた。
視界の端に『あぁ…メイクがっ…!』とアワアワしていたメイドさんたちの姿が映ったからには、泣けなくなるのが生真面目なアイリスである。
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両親に連れ添われたアイリスは、今日の為に白馬をあてがわれた馬車に乗り込み、教会へと向かっていた。
新郎は先に到着している予定になっていて、アイリスが教会へ到着したら、すぐにでも式の開始だ。リハーサルというのも無い。
父のエスコートで教会へ入り、新郎の元へ。そこで神父様より祝福が与えられ、晴れて婚姻が成立する。特に難しい段取りはないのだけれど…どうしても緊張してしまうアイリスなのだった。
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アイリスは緊張を紛らわせるためにと、これまでの日々を思い返していた。
両親から恋愛結婚を勧められ、婚活のため皇太后メアリー様の元へ向かい、行儀見習いの侍女となったこと。
騎士様や官僚の方との出会いを考えていたのに、騎士様は騎士様でも国王陛下の甥にあたられるアルバート様に見初められてしまったこと。
メアリー様や周囲の方々からのプレッシャーもあったけれど、婚活は続けようと思い、研究者の方々との出会いを求めたこと。
研究者の方々は思った以上にくせ者揃いで…中々うまくいかなかったこと。
そんな時に隣国から第3王子殿下とご学友の方々が留学にいらしたこと。
何故かご学友の1人で、隣国の侯爵令息のリュート様に気に入られてしまい?! リュート様とアルバート様の間に目に見えない火花が飛んでいたこと。
リュート様のストレートなアプローチに戸惑いつつも、隣国のお話を面白おかしく語られる姿に好感を抱いたこと。
リュート様の存在に焦った(侍女仲間談)アルバート様から、今まで直接的には告げられたことの無かった想いを告げられたこと。
……本当に色々あったけれど、最後は自分の想いに気づき、自分の意思で今日の結婚式へと至ったこと。
婚活…長かったし大変なこともあったけれど、家同士で決められた結婚をするよりも良かったと心から思う。緊張感には包まれているけれど、何よりとても幸せなのだから。
さぁ、行こう! 新郎の元へ!
さて、アイリスはどちらを選んだのでしょうか。アイリスの結婚は皆から祝福され、幸せな花嫁さんになれたはずです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!!




