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閑話1 イトナ(星間世界)

 わけが分からなかった。


 あの作戦の最後。

 リオが撃たれてそのまま宇宙に吸い出されていくのを見ているしかなかった。


 それでも宇宙船を出発させたのは、あるいはリオを収容できるかもしれないと思ったから。

 けど、それは叶わなかった。


 泣いた。

 ひたすらに喚き散らした。


 行きは一緒にいた人間が、帰り道にはいなくなっている。

 そんなことが受け入れられなかった。


 あたしたちは政府という巨大な組織に立ち向かう小規模な組織だ。

 だから敗ければ死ぬ。

 それは分かっていたはずなのに。


 彼を失うことが、こんなにも辛いなんて思いもよらなかった。

 彼を失うことが、起こりえる日が来るなんて思いもよらなかった。


 だからひたすら泣いていた。


 宇宙船は、最初に入力していたアジトへの航路を自動操縦で進んでいく。


 リオを失ったあたしは、ボスたちになんて説明しようとか、これからどうしようとか色々考えた。


 ――けど、それは杞憂に終わった。


 杞憂というか、その報告する相手がいなくなっていた。

 政府軍がアジトを襲撃。

 生き残った人間はいなかった。


 それがリオの裏切りだと知り、すべてを失ったあたしは、失意のうちに近くの惑星に逃げ込んだ。

 けど逃げたからといってどうなるものでもない。


 リオも、みんなも、帰る場所もなくなったあたしに、生きる目標もあるわけなかった。


 だからどうとでもなれと思いながら、ふらふらと惑星の繁華街を浮浪した。

 あるいは誰かが殺してくれるかもしれない。

 そう思って喧嘩を売って歩いた。


 その行為が、繁華街のボスの逆鱗に触れたらしく、多くの刺客に狙われることになった。

 ようやく死ねる。

 けどただ死ぬ気にはなれなくて、襲って来る刺客を返り討ちにしているうちに追い詰められた。


 暗い路地。

 四方八方から刺客が距離を詰めてくるのを感じた。


 ここまでか。

 もう終わりでいい。


 そう思い、だけどどこかやりきれない思いがあり、それでもどうしようもない現実があって。


 そんなごちゃごちゃで滅茶苦茶な状況。

 ついに敵の刺客が視界に登場した――その瞬間。


 景色が変わった。


 はじめは青だった。

 それから茶色。

 そして衝撃。


 それからは大変だった。

 死んだと思ったリオに再会したのは、嬉しくもあり、同時に激しく怒りを覚えた。

 皆を売ったんだ。当然だ。


 殺してやろうと思ったけど、よく分からないとぼけ方をされた。

 正直ふざけんなと思う。


 だからせめて、自分の犯した罪を認めさせて懺悔させてから殺してやろうと思ったら、体が動かなくなった。

 この星はどうやら重力が高く設定されているらしい。

 宇宙空間や低重力の惑星で生きてきたあたしにとっては、耐えられないほどの重さだった。


 それからいきなり変な機械が襲って来て、レイレイを無断使用されて、正直混乱した中でもリオに対する怒りは収まらない。


 けど、どこか違和感も感じた。

 そして頼もしさも。


 自分では違うと言っているものの、その行動力、決断力はかつてのリオを彷彿させるものだ。

 そして『為せば成る』という言葉。

 彼が父親から受け継いだという、その魂の言葉を彼は口にした。


 だからあるいは、けどどこか違うという想いもあり、よく分からずとりあえず保留した。

 彼を殺すことを。


 彼がしっかりと罪を認めた場合はどうなるか分からない。

 それを見極めるためについていこうと思う。


 ……って思ったんだけど。


「だーかーらー! こっちで本当にいいわけ!? 地図もなにもないでしょ!?」


「だからあるんだよ! ほら見ろ! これがここの地図だよ!」


「なにこの端末? どこからこんなの持ってきたのよ。てかしょぼ。こんなオモチャで何ができるってのよ! そもそもその地図が信用できるって証拠はあるの!?」


「そ、それは……けど、この感じ。この名前。きっとこの世界の地図だよ!」


「あ、言った。きっとって言った。やっぱり確信ないんじゃない! そんな中途半端な決断に、身を任せられるわけないでしょ!」


「ごちゃごちゃうるさいな! だったら代案出せよ! 文句バッカいってないでさ!」


「文句を言わせる余地があるのがいけないんでしょ!」


 あーもう!

 なんなの、こいつ。


 下手に理屈をこねまわしたり、訳の分かんない地図とか出したり、それを信じたり。

 どんだけお気楽なのよ。


 やっぱこいつ、リオとは違うんじゃない?

 よく見れば顔も少し……うん、あっちのリオの方が全然イケメンだし。

 それに年齢もちょっと低い? 20歳にはいってなさそう。


 ……いや、でもやっぱりリオよ。

 なんらかの方法で記憶をなくして整形してここにいるに決まってる。


 だから絶対どこかでボロを出す。

 その時に改めて処刑の方法は考えておけばいい。


 でも……。


『イトナ、逃げるぞ!』


 そう言って、背負ってくれた彼は、守ってくれた彼は…………ううん、間違い。幻想。ありえない。


 こいつは裏切り者で盗人で貧弱で馬鹿!

 それで決まりなの!

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