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第26話 雪中行軍

「メリナ外の様子はどうだ?」


「全くダメ、止む気配もない……こんなことは始めて、もう2ヶ月も吹雪が収まらないなんて……」


「食料はどうだ? あと暖房用の燃料、あ、それに換気も徹底しているな?」


「ミケル様とカイル様が周知徹底しているので一酸化炭素中毒患者はその後出てないけど……

 この吹雪が更に続くと2週間くらいで燃料が、一月で食料が危険域になるわ」


「凍傷も減ってきているし、準備不足だったけどなんとかなってきているけど。

 食料は限界があるな、流石にこの吹雪の中狩りにも出られないし……まずいな」


「地下蔵を作っていなかったらと思うとゾッとしますね」


 会議にはホブホビの代表者とメリナ、それにバリアントが参加している。

 人手が増えて食糧生産も頑張っていたのが功を奏して蓄えが出来ていたことは不幸中の幸いだったが、それでも人手が増えれば消費量も増える。

 そしてこの異常気象がトドメを刺そうとしている。

 溜め込んだ燃料や食料が湯水のように消費されていく。

 会議であっても洋服を着込んで最低限の暖房にして燃料消費を抑えていく。

 日中は皆が必死に雪かきを行い、出来る限り人は一箇所に集まることで食料の浪費を防ぎ、燃料の節約のために協力している。

 

「水耕栽培はどうだ?」


「イモ類が多少採取できそうですが、とてもまかなえる量じゃ……」


「とりあえず形になっているなら色々と試していこう……仕方ないな、カイルとミケルを連れて俺が食料を確保するしか無いな」


「無茶よ! いくらワタリが馬鹿みたいに強くてもこの気候で外に出るのは無謀よ!」


「俺一人ならどんな環境でも踏破できる装備がある。

 こればっかりは他の奴らには任せられないからな……」


「本当に大丈夫なの?」


「カイルとミケルもいる。それに、もっときつい任務だってあったさ。

 カイル、ミケルやっぱり俺が出る。悪いけど本部に戻ってきてくれ」


 2人に通信を入れて俺は極限環境下行軍の準備に入る。

 装備確認、食料を運ぶ車の最終整備などを行い、翌早朝には出立する。


 久しぶりの軍服に袖を通す。

 この星に来て変化した体型にも即座にフィットする。

 危険な環境にもこの服だけで挑めるテクノロジーの塊だ。

 

「ワタリ、準備できたよ」「私も、久しぶりねこの格好も」


 カイルとミケルもそれぞれ軍服を身に着けている。

 コンパクトでありながらどんな環境でも生活できる便利な道具が詰め込まれた装備だ。

 カイルの見た目と装備が揃うと雪国で救助に当たる救助犬のようで凛々しくも可愛らしい。

 携帯食料は特製のレーションだ。カチカチに乾燥させており小さいながらも栄養価は高い。


「さて、行こうか。皆、留守を頼んだよ! メリナの指示に従ってくれ」


「気をつけてね」


「ああ、一週間ほどで戻る。出来る限り食料を集めておく」


「頼んだわ……」


 扉を開けると強い風と雪が吹き込んでくる。素早く外に出て扉を閉める。

 数m先も確認できないほどの吹雪が村を覆っている。

 皆の努力で村の中の雪は一生懸命に排除しているが、一晩でうず高く積み上がってしまっている。

 屋根などの雪を放置しておけば建物が潰れてしまうので、皆命がけで頑張っている。

 俺もその働きに報いなければいけない。

 

「間伐されていないところは少しマシだね……」


 森の奥に入ると足元の雪が少しマシになる。

 軍服に身を包んだ体には吹雪の突き刺すような強風も苦にならない、一歩一歩地面を踏みしめながら進んでいく。俺の前にはカイルとミケルが先行してくれているので随分と楽に進むことが出来る。

 周囲を探っているカイルとミケルが細かな食料も探し出してくれるので、逃さず集めていく。

 もちろんこの天候で得られるものは少ないが、それでも貴重な食料だ。

 小さな樹の実や木々の隙間に必死に生えいているキノコなんかを回収していく。


「すまんね、こっちも生きていくのに必死なんだ……」


 巣穴で冬眠する動物も根刈りしないように狩っていく。その場で血抜きをしたら引いている車に積んでいく。天然の冷凍庫なので食材が痛むことはない。

 この車もきちんと動力を有しており悪路にも対応できる。

 限界まで物資を乗せればかなりの容量を確保できる。


「それにしても、この異常気象はいつまで続くんだ……」


 久しぶりに厳しい環境を丸一日進んだ疲労感を休めるために木陰に組んだテントで体を休める。

 テントと言っても人がひとり入れるくらいの布で囲まれた空間といったほうがいい。

 もちろんコレでも雨風を完全に防げるのだから外の環境からすれば天国のようだ。

 食事はレーションと水分。体に染み渡るように栄養が広がっていく。

 流石に夜間進むことは危険すぎるし、まだ先は長い。

 きっちりと体を休めて明日からも進まなければいけない。

 

「カイル、ミケル周囲の警戒を頼んだ。何か有ればすぐに起こしてくれ」


 戦場ではないのでそこまで心配はしていないが、カイルとミケルが周囲を警戒してくれているので安心して眠れる。疲れからか、俺はすぐに意識を手放すのであった……

 


 



 

少しづつでも頑張ります!

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