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第24話 無謀

 室内にはずらりと並んだ魔物たち、よくよく見れば装備のいまいちさも気がつくが、全体として統一した装備というものは威圧感を与えるのには良い効果を発揮している。

 黒を貴重とした鎧で統一しており、剣や槍を掲げている。

 

「凄い数だな……それに、これだけの装備を準備できるのは驚きだな」


「そうか? 質的にはウチラのものとは比較にならないだろ」


 俺は小声で軽口を叩いたメンバーを叱っておく。しかし、その発言は一部の魔物の機嫌を悪くさせたらしく、かなり敵意を持って睨みつけられてしまった。

 せっかく温厚に行きたかったのに……


「よく来たな客人、あまりの我らの姿に恐れを抱くのも仕方がないが、とりあえず前に進め」


 奥から声がする。俺らが入り口で止まっていたことでそういう印象を与えたらしい。

 俺はそのまま兵たちの間を歩いていく。

 眼の前に座るのが魔王様、そしてその隣に立っている……鳥人間? がさっきの発言主だ。


「ワタリたちを連れてきた」


 ゴブリンさんが一歩前に出てそう伝えると、左右の列に並んだ。

 

「ご苦労」


 想像よりも高い声が王の間に響く。漆黒のローブに身を包んだ魔王が……王座の上に……立ち上がり、ローブを外すと……そこには、どう見ても高校生ぐらいの可愛らしい女の子が立っていた。


「お前がワタリか、我らの国と交友を結びたいという話だが……

 何を腹に貯めているかわからんが、我が国と事を構えるなら、この勇敢な戦士たちが相手となることをしかと知るが良い」


 ダンっとその場にいる皆が武器を地面に叩きつける。なるほどなかなかの練度だ。


「とりあえず、俺たちにそんな意図はありませんが、少々威嚇がすぎるのではないですか?

 これでは我々にあなた達を警戒しろと言っているようなものではないですか」


「無礼者! 魔王様に向かって何という口の聞き方だ!」


 鳥人間が口を挟む。コブリンさんがやれやれとため息を付いている。

 うーん、なんというか、流石に少し頭に来るよなぁ……


「一応、友好関係を取りたいので、うちの村で作った物などを持ってきたのですが……

 どうやら魔王様の国は我らの国を下に扱うつもりのようですから、まるで貢物を捧げるような形になってしまいますね。事前に通達したと思うのですが、正直不快ですね」


「黙れ! 魔王様、もう我慢ができません! 此奴等の口を塞ぐことをお許しください!」


「貴様が黙れバリアント! ワタリだったな、この兵を前になかなかの気概のある男だな。

 しかし、無謀だとは思わないのか? 今ここでこの兵たちに襲われたら命を落とすぞ?」


「いえ、そうはなりません。もし我らを襲うなら、この場にいる敵対する全ての命の火が消えることになるだけです」


 つい苛ついて言ってしまった。もちろん場の空気は最悪だ。

 俺の背後に並ぶ仲間たちも、さんざん注意してきた俺の暴走にやれやれとため息をつきながらも戦いの覚悟をしてくれている。

 俺も持っていた鉄杖で地面を打ち付ける。ガンっと言う音と同時に地面に敷かれた岩にひびが走る。


「もう許せん! 魔王様!」


「ヤバイヤバイヤバイヤバイ……」


「魔王様?」


「も、申し訳ないワタリ殿! ご、誤解があったようだ!!

 い、嫌だなー、敵対なんてしませんよー! ほんと、ね、ほら、バリアントもちゃんと謝ろ? ね?」


「なっ!? どうしたと言うんですか魔王様!

 くっ、やはり女子供などに魔王など務まらんか!

 皆のもの、その思い上がった馬鹿どもに地獄を見せてやれ!!」


「な、なんでー!!? や、やめて~!!」


 ゴブリンさんに目配せをすると、魔王様を抱えて下がってくれる。

 同時に周囲の兵たちが俺たちに襲いかかって来た。


「場合によるが、殺すなよ!」


 襲いかかってくる魔物の剣と槍を鉄杖で粉砕しながら皆に命令するが、俺たちの命のほうが大事だ。

 それでも皆はきちんと俺の命令を守ってくれた。

 ほんのまばたきをする時間ぐらいが経つと、俺たちの足元には大量の兵士たちが気絶して眠ることになる。


「全然大したことないな……」


「そりゃそうだろ」


「準備運動にもならなかったな」


 やめて差し上げろ、魔王様がゴブリンに抑えられながらも涙目になっている。それ以上の追い打ちはやめて差し上げるんだ。


「この通り、俺たちが倒されることは無いので」


「だ、だからやめろ言ったのだ……ああ、ど、どうか命だけは……」


「魔王様、だから言ったじゃないですか……俺はワタリたちと一緒に行きますからね。

 もうわかったでしょ、ワタリたちは魔王様がいる周りには手を出さないと言ってくれています。

 ……こうなった以上どうなるかはワタリしだいですが……」


「ヒッ……」


「あんまり脅かさないでくれ、一応もうわかっただろうから、お互いにそっとしておいてくれればそれで良い」


「ほ、本当か?」


「ああ、無駄な殺生をしてもなんの意味もない。骨ぐらいは折れてるだろうけど、皆生きてくるから。

 バリアントだっけ? 喧嘩を売る時は相手をよく見ろって教えておいたほうが良いぞ」


「そ、そうじゃ、ワシは悪くないんじゃ。その床を破壊した時点で私達が束になったってかなわないことなんてすぐに分かるのに……わかるのにーーーーーー止めたのにーーーーーーーーーうえーーーーん!!」


「ちょ、ちょっと魔王様!?」


「魔王じゃないも~~~ーん、ただの吸血鬼だもーーーーーん……もーーーーーやだーーーーーーー!」


 何ということでしょう、魔王様、いや吸血鬼の少女は泣き出してしまった……

 


 

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