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「そんなメガネしてるから視野が狭くなるのよ」


失礼な決め付けをしたアズサさんの勧めでコンタクトデビューしました。

目も口も開いたイケメンが、これ以上なくクリアに見えます。


「……やっぱり出席するの止めましょうか?」

「え? やっぱり変ですか?」


アズサさんは大丈夫だと言ってくれたけど、かなり剥き出しなのだ、肩も背中も。

やっぱり私にはハードル高過ぎたんだ、こんなドレス。


「違います。綺麗過ぎて、誰にも見せたくない……」


吐息混じりに言われて、そっちの方が色っぽ過ぎるんですけど。


改めて正装した成田さんを見つめる。

昔と変わらず、気品溢れる王子様。私と言えば、今も昔も一般庶民。その上、年齢にも問題がある。

いくら着飾っても、自信なんてやっぱり持てなかった。


「成田さんは、本当に私で良いんですか?」


私の言葉に、照れて中々こちらを見なかった彼が真っ直ぐ見つめてくる。


「あなたが良いんです。あなただけしか見えません。今度は必ず守りますから、どうかオレの隣に立ってください。山田美里さん」


差し出された手に手を乗せる。

迷いが消えたとは言えない。これからもきっと迷い続けるだろう。


その度に彼に確かめよう。彼の言葉が私に勇気をくれる限り戦い続けられるから。


「とりあえず、今日のあなたの隣に立つ為に戦います」

「戦う、って……そんな無理しなくてもオレが……」

「何言ってるんですか。こういう場所は女の戦場って相場が決まっているんです。今世では、ただで死んでなんてやりませんよ?」


山田美里は、仕事ができる女と評判なんです。

いざ行かん、戦場へ。真っ直ぐ前を見つめたら、ほう、と溜息のようなものが隣から聞こえてくる。


「どこまでオレを惚れされせるつもりですか? もう、本当にヤバい……」


ちらりと横を見れば、耳まで赤くさせた王子様がいる。


「行きましょうか、王子様?」

「仰せのままに、オレだけのお姫様」


幸せか、不幸せか。

そんなの誰にも分かるはずない。

だって、それはいつだって私の気持ち一つなんだから。


さあ、私はイバラの道を歩み出す。

今世は戦う一般庶民、山田美里です。





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