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悪役令嬢に転生したけれど、とりあえず放置していいですか?  作者: シエル


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閑話〜クロードside






「殿下、お疲れ様でした」


「ああ。……だが、まさかあんなことになるとはな…………」



母上の私室から王太子の執務室へ戻ると、フィリップが労いの言葉を掛けてきた。



────今日は母上主催のお茶会だった。


王妃主催のお茶会は、基本的に高位貴族しか招待されない────。



しかし、今回は『特例』があった。



『シュプリーム子爵夫人』、そして────『シュプリーム子爵令嬢』だ。




今回は教会への友好的な姿勢を見せる為に、『聖女』を招待する手筈になっていた。



…………正直、私は難しいのではないか? と思っていた。



貴族教育を受けているにも拘わらず、彼女の態度はどう見ても貴族として相応しい振る舞いが出来ている──とは言えない。



母上もそれは承知の上だったが、それでも『聖女』と認定された者を一度も招かないわけにはいかなかったのだ。


席次はベアトリスも共に決めており、かなり頭を悩ませていた。



身分的に言えば、『伯爵家』辺りと同じ席にすべきだろう。


だが下位貴族である子爵家が関係のある伯爵家は、そう多くはない…………。



しかも今回は『聖女』を『王妃』が招待したという体を周囲へ見せなければならず、そうすると母上と同じ席を用意するしかなかった。


王妃と席を共にすることが出来るのは、王太子の婚約者であるベアトリスと、その母であり筆頭公爵家のアッシュローズ公爵夫人。



後は他に誰を座らせるか──そこが問題となった。



その中でも特に面倒な家門は、『シュバルト公爵家』だ。


三代前の王女が降嫁しているシュバルト家を王妃の席から外してしまうと、『軽んじられている』と受け取られる恐れがある。



特に夫人はその降嫁した王女の娘であり、ナタリア嬢は元王女の孫なのだ。


それ故、『血が近すぎる』という理由で婚約者候補から外すことが出来たという経緯もあるのだが……。まあ、それは今はどうでもいい。



とにかく元王女の娘である夫人はプライドが高く、王妃と同じ席から外されると高確率で噛み付いてくるだろう。


……しかも、自分の代わりにその席に座った者に何を言うか分かったものではない。



それ故、同じ席に着いたシュプリーム子爵家以外の者たちは全て『公爵家』となってしまったというわけだ────。



それでも王家が決めた席次だ。表立って文句を言うことはない上、最高位である公爵夫人なのだ。


仮令、予想外のことがあっても一(・)応(・)無難な対応はするだろう。




…………だが、どうやらシュプリーム子爵令嬢はそれを上回る言動をしてしまったらしい。



その場にいたわけではない為、後で母上から聞いた話ではあるが──始めは場の空気に緊張して黙っていたそうだ。


それを気遣ったアッシュローズ公爵夫人が声を掛けたところ、何を勘違いしたのか、ペラペラと夫人に話し掛け始めたらしい…………。



基本的にお茶会の場に於いて、下位の者から率先して話し掛けることはマナー違反となる。


質問に対して答える分には問題はないが、上位貴族へ話し掛ける際は発言の許可を貰ってからにしなければならない。



それを当人は知らなかったのか、話し掛けられたことで『許された』と勘違いしたのかは不明だが、一人で話し始め、『シュプリーム子爵が迎えに来てくれた』とその場で言った。




貴族で愛人を持っている者は、残念ながらいることにはいる。


ただ、正妻に子が出来なかったなどの理由で第二夫人や愛妾を迎えた者以外は、表立って『愛人』の存在を大っぴらにしないのが貴族たちの中での『暗黙のルール』である。



決して皆シュプリーム子爵家の内情を知らないわけではない。


だが醜聞には違いない為、家門の者も率先して口にすることはないし、他者からあえて問い掛けるような真似もしない────。



それを彼女は、社交の場で嬉々として家の内情を暴露したことになる。



更に、今回この茶会に出席出来たのも『シュプリーム子爵のおかげ』だと発言したらしい…………。



──彼女への招待状には『聖女』だ(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)の招待だという意味で、宛名は『シュプリーム子爵令嬢』ではなく『聖女 アイリス・シュプリーム子爵令嬢』となっていた。


シュプリーム子爵夫人は、彼女の振る舞いが心配で『付き添い』という形で同伴したに過ぎない。




「はあ…………」



母上の話を思い出すと、どっと疲れが押し寄せてくる。



せっかく茶会前に義兄上が贈ったドレスを身に纏い、私が用意した宝飾品を着けた美しいベアトリスの姿で癒やされたというのに…………。




「……私も少し耳にしましたが……。シュプリーム子爵令嬢は、子爵家の中で『虐げられている』と聞こえるような発言をしたとか……」


「……ああ。領地の特産品を知らなかったことを、シュプリーム子爵夫人があえて教えなかったかのように話したようだ」



フィリップも、どうやら母であるゴルトライヒ公爵夫人から少し話を聞いたらしい。



席は違っていても、話の内容があまりにも非常識過ぎて注目を集めてしまったのだろう。


只でさえ、子爵令嬢が『聖女』として出席しているのだから、周囲からの注目度が高くても仕方がない。




領地のことは、領地を持っている貴族子女であれば知っていて当然の話だ。


幼子でもあるまいし、『教えて貰えなかった』と主張するには無理がある。



自らの生活を支えてくれている領地で、領民たちは何をしているか?


領主の役目は領民を守ることだ。自領のことを知らずに守ることなど出来るはずもない。



「シュプリーム子爵夫人に『領地のことは自分で調べられるはずだ』と指摘され、彼女は何も言えず泣いていたようだ」




貴族令嬢が人前で泣き出す──しかも、自分の非を指摘されて…………。



あまりの醜態にシュプリーム子爵夫人がその場を退席する許可を母上から貰い、会場を出ようとしていた時───運悪く、そこに私が現れてしまった……。


転びそうになっていたところを咄嗟に助けてしまっただけなのだが、何故か彼女は『自分の味方』が現れたかのように私から離れないまま、自分を『可哀想な者』に仕立て上げようとした。



シュプリーム子爵夫人が『場を辞そうとしていた』ことを告げてくれたおかげで、さっさと追い出すことが出来たのだ。


さすがに事情も知らない私が無闇に辛く当たってしまったら、周囲にいる夫人や令嬢たちからの印象が悪くなる。




その時──ベアトリスに視線を向けると、何故か目を見開いて驚いているように見えた。



…………何故だ? もしかして、私が彼女に靡くとでも思っていたのか?




そんなことを考えていると、フィリップが焦ったように「殿下!!」と叫ぶ声が聞こえ、意識を引き戻された。


フィリップの顔は少し青ざめていて、どうやら漏れ出た魔力に中てられたらしい。




「…………すまない。少し考えごとをしていた……」


「ベアトリス嬢のことですか?」



…………『考えごとをしていた』と言っただけなのに、何故すぐにベアトリスに直結したのか少し納得いかないが、それでも事実の為に頷いた。




「…………あの時……ベアトリスは、私がシュプリーム子爵令嬢を帰るように促したら、驚いていたんだ……すごくね」


「何故でしょう? 殿下がシュプリーム子爵令嬢を警戒していることはご存知のはずですが……」


「ああ……。一体…………」




一体、何故…………?



「とにかく、今後もシュプリーム子爵令嬢への警戒を続けよう」




理由は分からないが、ベアトリスは未だ私が『誰か他の者に心を奪われる』と思っている。



もしかしたら、それがシュプリーム子爵令嬢なのかもしれない。




────残念だが、ベアトリスのその予想は外れることになる。



私の『唯一』はもう決まっているのだから────。







誤字報告ありがとうございます┏○ペコッ

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― 新着の感想 ―
この王子、そもそも婚約者が大好きなら他の女助けるなよ。日本の皇太子の目の前でこけたら普通に逮捕されるやろ
なんかこう、子爵令嬢は自分がたまたま持っている唯一(←唯一ではない)の特徴のおかげで自分は努力もしないでもてはやされると思っている節があるよね。今回の件で一番かわいそうなのは何なら教会側ですらあるのか…
当たり前の事も教わってなければわからないものなんだけど、自分にとって当たり前の事をそうでない奴に教えるって難しいんだよなあ……。 そこは双方に同情するけど、それとは別に聖女の人間性はなんかちょっと………
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