表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/90

恋に落ちた勇者 2

「急にどうした」


「いや、何もないんですけど……つい」


 何もないのに、ついでに取る行動ではない。


「腹でも痛いのか……」


 クラウディオが身を屈め、レオノールの顔を覗き込む。


 そう言って、自然に手が伸びた。


 額に触れれば、熱があるかどうかは分かる。


 だが、その手は届く前に払われた。


 ――ぱしん、と乾いた音。


「えっ」


 動揺の声を上げたのは、レオノールだった。


 手を払ったのもレオノールだ。


 レオノールが、息を詰めたようにクラウディオを見上げた。


 まるで、自分のしたことに一番驚いているのが彼女自身のようだった。


「……ご、ごめんなさい! 反射的に……!」


 慌てて立ち上がると、椅子の脚が音を立てて倒れる。


 レオノールはブーツを片手に掴んだまま、ガラス扉へ駆け出した。


「待て!」


 クラウディオも即座に立ち上がる。


 呼び止めるがレオノールは振り返らない。


 ホールにいる他の客や給仕の間を器用にすり抜け、そのまま建物の外へ出た。


「おい! 何故、逃げる?」


「えっと、なんて言うか……用事を? 思い出して!」


 足は早いはずだが、クラウディオはブーツを履いている。


 厩舎で馬を返却してもらうつもりだと分かって、裏道から回り込んだ。


「用事などないだろう。君は今日を楽しみにしていた。本当は何が原因だ」


「本当はって、嘘じゃ……私の、家……いや。王宮のーー」


 口では必死に抵抗しながらも、レオノールの目が泳いでいる。


「責めてるんじゃない。俺が何か、気に障ることをしたか」


 掴んだら、また振りほどかれる気がして、躊躇う。


 だが、簡単にはすり抜けられないように、事務室の扉との間に位置を取る。


「そうじゃ、ないです。あの、クラウディオ様じゃなくて」


「君が帰りたいと言うなら止めないし、具合が悪いのなら馬車を用意する。だから、理由を聞かせてくれ」


 珍しく、歯切れの悪い口調でもごもごと尻すぼみになって、レオノールは視線を落とした。


 長い睫毛の隙間から覗く瞳は潤んでいるようで、やはり平常ではない。


「……ごめんなさい、どっちかというと私の問題っていうか」


 レオノールは目を伏せ、迷うように口を開閉させた。


 そしてとうとう、耐えきれなくなったようにしゃがみ込んだ。


「なんか私、ヘンなんです。クラウディオ様と一緒にいると」


 クラウディオの息が止まった。


 意味を汲み損ねて、しばし言葉を探す。


「……俺と一緒にいると? 不愉快ということか」


「違う。嫌な感じじゃないんですけど、なんか……その」


 レオノールは自分の両手を握りしめたまま、唇を尖らせる。


「顔を見たら胸を引き絞られるというか……」


 唐突にクラウディオを拒絶した理由。


 どんな事実がもたらされても真摯に受け止めて対処するしかない。


 この外見をレオノールは好んでいるとばかり思っていたが、気に入らなくなったのか。


 理由の冒頭がこれでは、続きを聞くのが怖い。


 だが逃げられるよりはマシだと、緊張の面持ちで次の言葉を待つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ