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「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


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レオノールの本音 1

 クラウディオはどれだけ嫌っていたとしても、他人の手でレオノールを追い出そうとするほど姑息な男ではない。


「ごめんなさい。そんな誤解を受けるとは、思いもよらず……」


 レオノールはしゅーんと肩を落とし、素直に謝罪した。


 クラウディオは、レオノールに対する態度こそ冷たいが、他者に対しては礼儀や節度を持って接する紳士的な人物だ。


「分かってくだされば結構。このままではクラウディオ様の名誉にも関わりますので」


 リュシエンナは鼻から大きく息を吐くと、呼吸を整え、毅然とした態度に戻る。


 怒りの大きさから、どれだけクラウディオに愛情を注いでいたのか、推し量れた。


(しかし、この人もすんごい真面目というか。クラウディオ様の乳母なら母親がわりだもんね)


 クラウディオの厳格さは、リュシエンナによって育てられたに違いない。


 密かにそんな思いを抱いていると、リュシエンナは口元に手を当ててコホンと咳払いをする。


 改まった様子で切り出した。


「時に、レオノール様。レオノール様は何故、褒賞にクラウディオ殿下を望まれたのですか」


 鋭い眼光を伴う切り込みに、レオノールの胸はどきりと音を立てる。


 今まで幾度となく、同じ質問を投げかけられてきた。


 敢えて答えるなら、一つしかない。


 クラウディオを欲しいと願った気持ちに理由をつけるなら、それは”一目惚れ”だ。


 けれど、月並みすぎるし、まるで乙女のような発言だ。


 冒険に明け暮れ、花の盛りをとうに過ぎ、色恋にはとんと縁も興味もなかった自分には似合わない。


 同郷の女友達はほとんど、家庭を持っていると聞いた。


 安心して嫁に行けるのも、レオノールたちのお陰だと、散々礼を言われた。


 ……それらのエピソードはさておいて、大した理由などない。


 単に恥ずかしいだけだ。


 極めて単純な理由で、レオノールはこれまで決まった同じ回答の繰り返しでゴリ押していた。


 ”大きな功績には、大きな褒賞を。この国でもっとも大きな褒賞は、最高の美を誇るクラウディオ王子でしょう”と。


 国の重鎮やら、セレスやら家族やら。

 

 回答を聞いた人々は分かったような分からないような怪訝な顔をし、それでもレオノールの独特の感性なのかと薄い笑顔と共に無理に納得していた。


「それは、もちろん、クラウディオ様があんまりにも美しいから、ですね」


 今回もそれで乗り切ろうと言葉を絞り出したが、リュシエンナは僅かな動揺を逃さなかった。


「確かに殿下は大層お美しい殿方です。しかし、それだけではないでしょう。権力をお望みなのですか。それとも高貴な男性を我が物とし、跪かせ、自尊心を満たしたいのですか」


 眼鏡の奥、どころか眼鏡すら光らせて、リュシエンナは更に畳み掛ける。


「跪かせるなんて! 殿下が望むなら私が跪いて参じますって。権力も、別に。そんなものなくたって今や割とチヤホヤしてもらえますし……」


 答えながらふと、クラウディオがレオノール自身の足元に跪く姿を思い浮かべた。


 熱のこもった眼差しでレオノールを見上げ、情けを乞うクラウディオの姿を。


(やだ、案外悪くないかも)


 なんて、うっかり不埒な感想を抱いてしまう。


 あの美しい男性(ひと)に愛を囁かれたら、どんな気持ちになるんだろう。


 ニンマリと崩しそうになった相好を、手で押さえて慌てて取り繕う。


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