妻の行動 4
どの道まもなく昼の休憩時間となる。
休憩時間を自身の感情で束縛するほど狭量ではない。
どのように使おうとも、彼らの自由だ。
「はーい、きっちり、片付けておきますね」
「はいっ」と生真面目に敬礼する3人の後ろで、ひらひらと手を振ってレオノールは答えた。
どうにも呑気な声色で、やっぱり癪に障る。
(本当に理解できたのか怪しいが、これ以上時間を費やすのも無駄だ……)
去り際、横目で見た彼女は、大仰な身振りを添えて、何か楽しげな会話を交わしていた。
兵たちも顔を見合わせ、屈託なく笑っている。
元々、レオノールは片田舎の出身で、男女が混在するパーティを組んで旅をしていた。
ああして男と臆面もなく喋る生活を送っていたのだろう。
きちんと淑女としての教育を受けた令嬢なら、決してあんな対応はすまい。
ーーいいや、アイツが無作法だろうと構わない。
あの女はやむなく娶った形だけの妻だ。
俺は、あの女とは極力関わらないと決めた。
目に余る行いが続けば、王太子妃の座は自然と危なくなる。
重臣たちの判断は間違っていたと、批判の声も高まるだろう。
自らの首を自ら絞める行いで、それこそ、クラウディオの望むところだ。
しかし、形だけといえど、自分の妻だ。あまり醜聞が広まるのは望ましくない……
火災と目された現場から、足だけは遠ざかっているのに、気づくとあの赤髪の女に対する感情ばかりを巡らせていた。
クラウディオは胸騒ぎにも似た苛立ちを抱え、舌打ちした。
どうしてあれほどまでに腹立たしく感じるのか。
理由を探せば探すほど、堂々巡りになってしまう。
執務室に戻った後もクラウディオは、文書に目を通すどころではなかった。
椅子に腰掛けて筆を執るが、どうしても先ほどの、珍妙な姿が脳裏にちらつく。
どうしてあんな、紐で縛り上げたピンクのハムみたいな格好で、のほほんと城内をうろついていられるのか。
(あの兵士たちと笑い合っていた顔……。無知で、野暮ったくて、粗野で――)
無駄に人の心を掴む才だけはある。
あのまま好き放題にさせておけば、兵たちの間に妙な親近感を育てかねない。
(このまま放っておけば、どこでどんな面倒を起こすか分かったものではない)
しばし悶々と思考を巡らせていたが、妙案を閃いて、側仕えの一人に命じた。
「……リュシエンナ夫人を呼べ。できる限り早く手配しろ」
あの女には、きちんとした教育が必要だ――それも、容赦のない指導ができる者が。
クラウディオは深く椅子の背にもたれる。
一つの解決策に辿り着いて、ようやく落ち着きを取り戻した。
夫人の教育を受ければ、今現在抱える厄介ごとの大体は、程なくして解決するだろう、と。




