勇者パーティ再集結 2
「……そっちはどう? フィオ、上手く行きそう?」
「ええ、調節はバッチリよ。いつでも行けるわ」
それに、鏡の前で腰を上げた黒髪の女性は、フィオことフィオレンティーナ。
彼女もレオノールの窮状を聞いて駆けつけてくれた勇者パーティの一員だ。
ふっくらと膨らんだ腹部を優しく撫で、フィオレンティーナは気の強そうな瞳で微笑んだ。
「身重の女性に無理をさせて申し訳ない。この礼は、必ず」
「いいんです、お礼ならこの間たんまり頂いたし、他ならぬレオのピンチですもの。それに私こそレオに借りがあるから、返す時を待ってたくらいです」
コールヴァンはパーティの全員とコンタクトを試みていた。
フィオレンティーナは故郷で幼馴染と結婚し、妊娠9ヶ月目に入ったところだ。
ブルネンは、こちらも故郷の村で鍛治職人に復職していた。
筋骨隆々としてがっしりとした見た目は、いかにも鍛治士らしい。
もう一人だけ、賢者と呼ばれるモスリンは諸国を漫遊中で連絡が取れなかった。
「借りっていやあ、このメンバーはみんなレオに借りがあるよ。だから、気にしないでください。クラウディオサマ」
コールヴァンは一昨日、駆け付けてくれた時から親しげな口調だ。
レオノールからの前情報通りで、随分と気安い性格らしい。
「僕は借りっていうよか、貸してるほうが多い気がするけどね~」
ぼやいたのはセレスだ。
馴染みの仲間の前では、気も緩むのだろう。随分と砕けたセリフだった。
ブルネンは元からなのか、ほとんど喋らない。
「んじゃ、借りじゃなくて、惚れた弱みってことで。俺らはみんな王子サマにレオをかっ攫われた仲間だもんな。惚れた女は守らなきゃだろ」
コールヴァンはヘラヘラと笑いながら、セレスとブルネンの脇をつつく。
その瞬間、セレスの顔がぶわっと真っ赤に染まる。
「はあっ? 誰が誰に惚れてるって!?」
「セレスだよ。お前レオに惚れてんだろ。俺はお前がレオを追って騎士団に入るって聞いて、尊敬したんだぜ。コイツはガチだ。俺らにはできねぇって、諦めた。なあ、ブルネン」
「俺は、レオノールが幸せになるならそれで……。彼女は俺の大切な人だ、助けがいるならいつでも駆けつける」
ブルネンは口数は少ないが、感情が希薄なわけではなさそうだ。
薄く微笑んで、重みのある言葉を紡ぐ。
「僕が騎士団に入ったのは別に、レオを追ってとかそういう意味じゃないよ!」
不自然なほどの反応を示しておきながら、セレスは必死で反論した。
しかし、必死になればなるほど墓穴を掘っていると、本人は分かっていない。
実はクラウディオも、そうなのではないかと薄々は感じていた。
クラウディオがレオノールを遠ざけていた間のセレスの心情を思うと、申し訳なく、いたたまれない。
だからこそ余計に、クラウディオもレオノールのために力を尽くしたいと考えている。
……ともあれ、セレスは今や、クラウディオにとっても大切な仲間だ。
「皆の気遣いはありがたく頂戴する。この話は……」
あまり酷く揶揄われないうちに助けようと間に割って入ろうとする。
「さっきの鏡を見て、俺は泣きそうになったんだ。2人がいちゃついてる姿を近くで見せつけられて暮らすなんて、並の精神じゃ無理だぜ」
この話はここで、と打ち切ろうとしたのに、聞き捨てならない言葉が飛び込んできて、クラウディオはその場で固まった。
――鏡、と聞いて嫌な予感がする。




