吾輩、出張中
我々は魔王である。人間ぶっ殺し我慢大会中である。
魔王は強い。なんか似た様なセリフを昨日言ったような気がするが、まぁ良い。
魔王が警戒する相手など勇者か古代竜、吸血鬼と特異種、あとは邪神ダシテム様を除く神性ぐらいか。・・・結構おるな。
だが、単体で魔王を超える可能性があるのは古代竜のみである。奴等は有限を生きる他の生命とは違い、魔王と同じく永劫の時を生きる。そして、魔王とは違い成長という概念を持つ。つまり、無限に強くなれる。
その最たる例が我々の前に平伏する母竜ユグレミアである。
母竜ユグレミア。
一万を超える年月を生き、魂の操作という魔王にすら不可能な、ダシテム様を彷彿とさせる力を操り、自らが溜め込んだ魂を他者に分け与えるという契約を結んだ事によって魔王の討伐対象から逃れた古代竜である。
その実力は魔王を凌駕する。実際、彼女が魔王の支配下に入るまで、十を超える魔王が討ち取られている。
そんな存在が何故吾輩の眼前に怯えた表情で平伏しておるかというと、
《いえ、はい。僕もできる事なら魂を分け与えたいのですが、いえ!契約に不満があるとかではなく!与えるに足る人間があまり居ないというかぁ、うちの国に魔王様方のお眼鏡に叶う様な人間があまり居ないせいで、ああ!魔王様方のせいにしてる訳ではないんですよ!?僕の教育不足です!緩い環境では自己的な人間しか育たないというか何というかぁ・・・、ああ!魔王様方の御威光のお陰で!魂を蓄えようと言う愚かな考えをする人間が減ってましてぇ!!・・・・へへへへ》
「そうか。私はてっきり我々魔王に反旗を翻そうと力を蓄えてるのかと思ってしまったよ。人が、いや竜が悪いな。君は」
大魔王ルシフェルに完全に心を折られておるな。ニブルヘイムを置いてきて良かった、母のこんな姿を見たら奴は泣いてしまうぞ。
とはいえ、だ。ユグレミアが世界最強に名を連ねる一匹である事には違いない。
実際大魔王ルシフェルとユグレミアが一対一で争えば、ほぼほぼユグレミアが勝つであろう。それぐらい彼女は強い。どれ位強いかと言うと、
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名前: ユグレミア
種族: 星竜
Lv: 518
HP: 37928
MP: 20814/22985
STR: 14019
DEF: 27144
INT: 15391
AGI: 13992
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化け物である。
一対一の戦闘であれば魔王の中でも最強クラスである吾輩ですら、優っている能力は体力と膂力のみ。知略謀略で戦う大魔王ルシフェルなど。最悪の相性と言えよう。
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名前: ルシフェル
種族: 魔王
Lv:
HP: 11000
MP: 38512/39000
STR: 3200
DEF: 4100
INT: 38000
AGI: 4700
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だからこそ、彼がこの地を任されているのであろうな。自らの強さに絶対の自信を持つ魔王ではユグレミアは討ち果たせぬ。しかし知略に長ける彼には自分以外を使うという選択肢がある。
ここに居るのは我々だけでは無い。
全魔王百十八柱中、八柱。それも大魔王ルシフェルを除けば全員単体戦力としての強さを持ち合わせている。例え古代竜が二十、三十揃おうが歯牙にも掛けぬ戦力である。
「それで?どういう意図があって古代竜を集めているんだい?」
《実はここ百年程、周囲の魔物が減ってましてぇ、それも名持ちの強力な魔物がごっそりと。なので小さめの古代竜に調査をさせてたんですが、何匹か殺されてしまったらしいんですよぉ。これはマズイと追加の子達を送ったら、やけに強い上位魔族や吸血鬼の目撃情報が出ましてぇ、念のため強めの子達を集めてたんです。あと私も少しレベル上げとこうかなぁ・・・って。へへへへ》
「へぇ、初めて聞く情報だ。でも不思議だね。私の信者達からも聞いてないし、君が私に直接伝えない理由がわからない」
《違います!隠して無いです!僕悪く無い!子供達呼ぶ関係上、人間達に伝えたらパニックになりそうだしぃ!アスモデウス様にはちゃんと伝えてました!!そしたら・・・、そんなくだらない事で俺に連絡するな。殺すぞ・・・。って言われてぇ!魔王様方頼っちゃいけないのかなぁ・・・。ってなったんですぅ!!!!》
何だか見ていて可哀想になってきた。これが世界最強の竜の姿であるか?数千年前迄は神すら恐れていた筈なのであるが・・・。
しかし、アスモデウスであるか、彼女は大魔王ルシフェルと同じく原初の魔王の生き残り。ルシフェルとは大分毛色が違う・・・、と言うか真逆であるが、偉大な大魔王の片割れである。・・・少し性格に難はあるが。
「はぁ、彼女か・・・。事情は分かった。君に落ち度は無いね。・・・だけどこれからは私に優先的に情報を回す様に」
《はい!かしこまりましたぁ!》
ふーむ。しかし上位魔族に吸血鬼であるか・・・、余り仲が良いイメージは無いのであるが・・・。
竜王国、王城地下。
其処は人間共に悟られず魔王が活動出来る様にと作られた、もう一つの王城である。
龍脈は勿論、仮に存在が露呈し何らかの存在に攻め込まれても大丈夫な様、軽い迷宮の様になっている他、様々な逃走ルートも用意された安全地帯である。
「それで、被害は出ていないのであるな?」
《はい。一号が少しダメージを負いましたが、すぐに護衛の上位竜が殺した様で。その怪我も既に私が治しております。》
「であれば良かろう。・・・しかし思っていたより人間共の進行が早いな。配下共のレベル上げは当分控えるべきか・・・」
《・・・恐れながら陛下。ここは一度、竜種を引き連れ砦を襲撃するべきかと。我々が竜種を従えたと知れば人間達も容易には動けないのでは?》
「しかし、それをすれば勇者が動くであろう。確か魔王ゴラムの討伐には、勇者が十人以上投入された筈である」
魔王ゴラム。三十年程前に生み出された新参の魔王である。
ティノール連峰と同じ様な竜種の巣窟に生まれ、それを支配した偉大な魔王である。吾輩と同じ様にな。
しかし、強大な戦力で暴れ回り、ダシテム様にやり過ぎと判断された様であるな、国を二つ滅ぼした所で人間側に神託が下り、勇者や聖騎士の様な存在が大量に投入され打ち滅ぼされた。吾輩と違ってな。
そこに竜種を支配した魔王の存在を匂わせれば人間共は過敏に反応するであろう。なりふり構わず勇者を使う筈だ。
「迷宮の方はどうなっておる?其方が完成すれば吾輩が居なくとも勇者を警戒する必要はあるまい」
《三階層まで完成しております。唯、今は竜種が活動出来る様、山頂付近から迷宮への出入り口の作成を行っているので四階層に手を付けるのは当分先になるかと。》
「うーむ。やはり未だ竜種という手札を見せるのは早いか・・・。ニブルヘイムの様子は?」
《渓谷の川の中で門番をしております。陛下の言い付けも順守しており、食事も自らでは取らず、ブルーブラッドアイデクスに献上させている様です。》
生存の為で有れば殺生も許すと言ったのに律儀な奴である。やはり少なくとも現状は裏切るつもりは無いのであろうな。
やはり竜種を配下に出来たのは大きい。勇者と同程度の力を持つニブルヘイムに、多対一で有れば勇者も狩れる上位竜種。奴らが居れば例え迷宮が見つかったとしても、勇者の一人二人で有れば当分持つ。でなければ今回の様に吾輩がティノール連峰から離れることなど出来なかったであろうな。
「あいわかった。吾輩は未だ帰れそうに無い。迷宮の事は任せたぞ、側近よ」
《お任せください。陛下もどうかお気を付けて。》
念話を終え、部屋を出る。
側近とニブルヘイムに任せておけば迷宮は大丈夫であろう。
これで安心してこちらの問題に対処できる。
「あぁ、終わったかい?」
「うむ、待たせてすまなかったな」
「気にしなくて良いよ。此方も丁度情報が上がって来た所だ」
竜王国に来て三日目。思っていたより大分早いな。流石大魔王ルシフェルである。
「北部に私も把握していない未確認の迷宮が発見された。出入りしているのは上位魔族と吸血鬼、竜人に聖教国の勇者の姿まであった」
「それはまたなりふり構わず集めた様であるな。であれば」
「ああ、これで逸れ魔王の線は無いだろうね。我々の敵は恐らく・・・神性だ」
なんだ、大した事ないでは無いか。
無駄に勿体振りおって。




