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蒼穹が希いを繋ぐ星空譚  作者: 真田遼一朗
蒼穹の来訪
11/12

第三回星空会議

 目を開けるとそこは見渡す限りの青空、つまり俺の心の中の世界だった。


「何で、ここに……」


「オレが、いやオレ達が呼んだんだ」


「レオン、それにみんなが?」


 蒼穹の只中で見えない地面に足をつけ、俺を囲むように十二星座龍のみんなは集まっていた。


「俺は負けたのか……」


「まだ可能性はある。今すぐにオレ達の誰かに代われば簡単に勝てる」


「…………」


「やっぱりオレ達の力を借りるつもりは無いようだな」


「……ああ」


 レオン達の言う通りあんな奴みんななら瞬殺だ。


 けど、それじゃダメなんだ。


 ただの我が儘じゃない。


 そして、さっき敵にやられた時の衝撃で少し思い出したことがある。


 死ぬ間際の事だ。少ししか思い出せていないが、この記憶が確かなら兄さんが死んだのは何も出来ない俺を守ったせいだった。


 その記憶を思い出した事で俺が何でここまで自分だけでやり遂げようとする事にこだわるのかが自分でも分かった。


 魔力を借りるだけでも申し訳ないのに、全てを任せて俺は何もしないなんて耐えられないんだ。


 つまり俺は……。


「ごめん、みんな。俺は何も出来ずにただ守られるのは嫌なんだ。自分の力の無さのせいでまた大切な存在を失うのは絶対に嫌なんだ。だから……」


「そうか、シエル。お前も俺達と一緒だったんだな」


 レオン達が優しい表情で俺を見つめてくる。


 どうやらみんなも俺の気持ちと同じだったようだ。


「でも、シエル。だからこそオレ達は互いに助け合わなくてはならない。一緒にこの先を歩んでいく事で過去の遺恨を払拭する為に」


 レオンが未だ座り込む俺の前に手を差し出す。


「お前がオレ達に心を開けていないのは知っている。だが、オレ達は二度とあんな気持ちにはなりたく無いんだ。だから、オレ達に背中を預けてくれないか?」


 確かに俺の心にいくつかのわだかまりはあった。


 会って一週間のレオン達と話しても完全に信じる事も出来なかった。


 でもそれはみんなに問題があったと言うより、違う世界に転生した事に色々と心が追いついていなかったからだ。


 俺はただの平凡な人間なんだ。


 何を信じて何をすれば良いのかだって簡単に判断つかない。


 一応創世者とやらが提示した目的に沿って行動はしているが、分からないことの方が多い。


 よくある転生ものと違って無双もハーレムも無い戦いの日々。


 俺には少し難しい。


 しかし、現実とはこんなものだ。にも関わらず、こんな俺に手を差し出してくれる仲間がいる。


 人間が異世界に転生して本当に必要なものは、凄い力や可愛いヒロインじゃなく共に歩む仲間だった。


 実に単純で、実に良い。


 俺は心の底からそう思った。


 心を決めた俺は自分でも分かるくらい今までで一番良い表情でレオンの手を取った。


「ありがとう。俺と一緒にこれからも戦ってくれ」


「もちろんだ。オレを含め十二星座龍一同、お前について行くぜ」


「あいつも?」


「ああ、クアリは協力こそしないが反対もしないからな。だから、全会一致だ!」


 俺の思っていた通りクアリは悪い奴じゃ無さそうだ。


 いつか仲良くなれる日を楽しみにしておこう。


「そういえば外はどうなっているんだ?」


「時間は経っていないな。この中では時間の流れが違うからな。話す時間はまだ全然あるぞ」


「なるほど、じゃあ座ってゆっくり話そうか」


 俺は以前出した円卓と椅子を取り出しみんなを座らせた。


「よし、みんな座ったな。じゃあこれから俺がどうやってあの状態から勝利を収めるのかを話していく」


「第三回星空会議だな」


「ああ」


 ちなみに第二回は一週間前の夜、エトワールになった後に細かい方針を色々と決めた。


 それから毎日一人ずつ代わりばんこで

俺の体を貸して十二星座龍神教のアジトを潰していたのだ。


 まだ全員には体を貸せていないが、その中で話せる奴とはある程度親交を深めた。


 実力や人となりも分かったし、俺の事も知ってもらえたはずだ。


 だから、これからの作戦に最適な人材を選ぶことが出来るだろう。


「まず、ジルについてはこのまま俺一人で大丈夫だ」


「…………!」


 ザワッと、俺の発言に十二人の星座龍がどよめく。


「君の意思は尊重するが、今の君の実力では無理筋じゃないか」


 十二星座龍の一人、サジリがみんなも思っているであろう真っ当な意見を丁寧な口調で言ってきた。


 相変わらず冷静な指摘だ。


 だが、みんなの心配は杞憂である。


「大丈夫。実は奥の手があるんだ。それも二つもね」


 とっておきの奥の手、一つは言わば必殺技、もう一つは勝負ではなくこの戦いに勝つ為の戦略だ。


「そうか。レオン、君はどう思う?」


 俺の秘策にまだ不安のあるサジリはまとめ役のレオンに話を振った。


「ん、オレか? オレはシエルが大丈夫って言うなら信じるだけだぜ。それに奥の手の一つは大体想像つくしな。だってフォルと似た戦闘スタイルだし」


 妙なことを言うレオンにみんなどこか遠い目をしていた。


 英雄を思い出しているのだろうか。


 百年経った今でも忘れられない程、魅力的な人だったんだなと思う。


「確かにな。分かった、それならオレもシエルを信じてみるさ」


 そう言って納得したサジリに続くように他のみんなもジルとの決着に異論は無いようだった。


「じゃあ次に、みんなも気付いていると思うけど外にいる奴らの対処についてだ」


「やっぱりシエルも気付いていたのか」


「まあな」


 魔力感知によってこのエトワール邸から離れた市街地にこちらを探る魔法騎士の存在を捕捉していた。


「数は五、全員が心騎武器(クーリエアルム)を出してこちらを探っている」


 状況とこちらへの探り的に奴らはジルと同じくフォルの使徒に違いない。


 大方ジルの逃走の手助けをする為に待機している協力者なのだろう。


 少しでもジルに何かあればここに来るかもしれないし、逃げるかもしれない。


 それはダメだ。逃すわけにはいかない。

 よって俺は考えた。俺の顔や素性を知らない奴らに対し、十二星座龍の力を借り、無駄なく完璧に倒す作戦を。


「だから、ジルを倒し次第サジリに代わり接近し、レオンに代わり強力な一撃を喰らわせる。討ち漏らした場合はピスケに代わり拘束をし、ジルとまとめて明日騎士団に引き渡す手筈で行く」


「待て、いくらオレの魔力による移動が速いと言っても、魔力の使用を感知され先に気付かれてしまうぞ」


 サジリの指摘通り魔力感知している奴らは魔力の使用にすぐ気付くだろう。


 おまけに十二星座龍の膨大な魔力だ。気付かない方が難しい。


 しかし、俺が何の考えもなしに提案する訳がない。


「大丈夫だ。魔力による加速は途中からにすればいい。高度を上げ、一定の速度に達してからブーストすれば奴らが気付く頃には攻撃圏内に入っているはずだ」


「なるほど、魔力を使わない飛行なら奴らに感知されない。しかも、肉眼で見える距離に入る前に魔力で速度を上げれば逃げる暇も与えないか」


 サジリが納得したように他の十二星座龍のみんなも肯定の意を示している。


 魔力を使わない飛行、普通に考えてあり得ないこの力に気付いたのは例に漏れず一週間前の事だ。


 じゃんけんで勝ったサジリに体を貸し、エトワール邸からどうにかして外に出ようとしていた時、俺のちょっとした思い付きで体を宙に浮かせられる事が判明したのだ。


 思い付きと言うのはドラゴンなら空飛んでなんぼだろうと言う偏見によるものだ。


 かくして理由は分からないが飛行能力を獲得した。


 みんなが言うには生前ならまだしも肉体を失った今の状態での飛行は不可能らしい。だから、俺の力ってみんなは言ってくるんだ。


 そんなこと言っても信じられないけどな。


 ちなみに魔力を一切使わない為、俺だけでも飛行は可能だ。戦闘には直接使えないから便利なだけの能力だな。


「と、言う訳で他に意見は無さそうだからこの作戦に決まりって事でよろしく」


「ああ、オレ達も頑張るぜ」


 レオンを含めみんなもやる気満々らしい。頼もしい限りだ。


 これで明確な方針は決まった。後は実行するだけだ。


 そして俺は席から立ち上がり閉会を宣言する。


「これで第三回星空会議を閉会する」


 さあ、決着の時だ。

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