移動する
前話「洋風な扉」で「移動する」を選んだ方は、こちらの話へどうぞ。
「移動しない」を選んだ方は、この話を飛ばして「移動しない」へ進んでください。
では、どうぞ。
しかし、この場にとどまり続けることも怖いので移動することになった。
「ほら、いくわよ」
小鳥遊さんと共に次の扉に手を掛ける。
扉越しになにかの音が聞こえる。
「なんか、聞こえる……」
「え?なにが?」
二人で顔を見合わせて、扉に耳をくっつける。
ピチョン、ピチョン
「水?」
ピチョン、ピチョン、ピチョン
「台所かしら?」
ピチョン、ピチョン、ピチョン、ピチョン
「お風呂場とか?」
ピチョン、ピチョン、ピチョン、ピチョン、ピチョンピチョンピチョンピチョンピチョン
遠くに聞こえていたはずの水音がすぐ近くまで迫っていることに気がついた。
「あれ?」
なんかおかしい、と扉から耳を離そうとしたが、それより先に扉が開かれた。
小鳥遊さんと俺は、突然扉がなくなったことで二人揃って次の部屋に倒れ込む。
ベシャッとまるで水溜まりに倒れ込んだような音が耳元で再生された。
「いった……なによもう!」
小鳥遊さんの声にそちらに懐中電灯を向けると。
「!!!」
小鳥遊さんの着ていた白い服には、べっとりと赤いものがついていた。
小鳥遊さんもすぐに俺の視線に気がつき、驚愕する。
「な、なによこれ!!」
ピチョン。
パニクる俺らのすぐ横で、さっきまで聞こえていた水音がする。
だだだ、誰が隣にたってる!!
二人揃って悲鳴をあげるところだったのだが、小鳥遊さんが先に何かに気がついた。
「あら?花田さん?」
「ふぇ?」
そこにいたのは、カメラマンの花田さんだった。
「移動しない」を飛ばして、「一人はさみしい」へ進んでください。