かくれんぼ
「なぁなぁ、かくれんぼしよーぜ!!」
もうあと一時間もすれば、最終下校時刻になるというところで突然、仲よしのあっくんがそんなことを言い出した。
僕ともうひとりの仲よしのてっちゃんもびっくりしてあっくんの顔をみる。
「今から?もう暗くなってきてんじゃん。それに今から外に出てやるってなったらそんなに遊べなくない?」
「実はさ、ネットで面白いの見つけたんだよね~」
あっくんは、ランドセルの中から一冊のノートを取り出してパラパラと捲った。
「あった!これこれ」
見せられたページには、「かくれんぼのやり方」とあっくんのちょっと乱雑な字でかかれていた。
「? いつものやつとなんか違うの?」
「おんなじの遊んだっておもしろくないだろ?そうだ。人数多いほうが面白いだろーし、みんなもやんねぇ?」
ぐるっと教室の中を見回しながら、問いかける。
教室にはお喋りをしていた女子二人と宿題をしていた濱名くん、それに僕たちと同じようにゲームの話をして残っていたやーさんとみつがいた。
「なになに?何の話?」
やーさんが興味津々に近寄ってきたので、それに釣られてみつと女子たちも寄ってきた。
「これこれ。みんなでやろーよ!」
「都市伝説的なやつ?」
「えー、こわいー」
「そんなん、マジでなんか起こるわけないじゃん」
「違うバージョン?やったってお姉ちゃんの友達が言ってたよ。特になにもなかったって~」
「マジで?じゃあ尚更やってみようよ」
盛り上がるみんなを余所に濱名くんが帰り支度をして、教室を出ていく。
「そんな子どもみたいなこと、僕はやらないよ」
さっさと帰ってしまった濱名くんに呆気にとられ、一瞬の静寂が訪れる。
「「ぷっ」」
「はははー。素直に怖いって言やーいいのに!」
「なにあれ。『子どもみたいなこと、やらない』って!!」
てっちゃんが濱名くんの物真似をして、また笑いが起こる。
「あんなのほっといて、さっさと始めようよ」
「早くしないと下校時刻になっちゃうよ」
「それもそうだな」
ひとしきり笑ったあっくんがノートに目を落とす。
「えー、まずは準備だ。手足があるぬいぐるみ、刃物(包丁、カッターナイフ)、コップ一杯程度の水、塩だな」
またもやあっくんのランドセルの中から、カッターと歯磨きに使うプラスチックのコップ、食卓塩がでてきた。
「あれ?塩に『家庭科室』って書いてあるよ」
「あぁ、パクってきた」
「あとは人形?」
「あっ、私の鞄についてるやつでいい?」
女子1が手提げについていたぬいぐるみを持ってくる。
最近人気のゆるキャラ?の熊だった。
「いい感じ。じゃあコップに水汲んで……」
それらを教卓に並べる。
「よし!」
「なんか、ドキドキしてきたっ」
キャイキャイと騒ぎながら、やり方の書かれたノートのページを捲った。
※『ひとりかくれんぼ』の用意するもの、やり方から少しずつ省いて書いています。