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第07話 ♨ 放課後 ♨

二週間ぶりの投稿となりました。

――放課後――



朝に碧に心霊研究部を見学してみないか、と誘われていた勇とひなのであったが、現在は近くの喫茶店にいる。

神ヶ崎高校の近くは温泉街の近くでもあるので、喫茶店の一つや二つくらいはある。



だが、勇は今なぜここにいるのかを飲み込めていないようだった。

プラコップに入ったジュースを飲みながら勇が碧に当然の質問をぶつける。



「兎本、さっき心霊研究部を見学してみないか、みたいなこと言ってなかったけ?」

「あ、うん。言ったよ。それがどうしたの?」

「いや、部室とかは……」

「ないよ。 確か2年くらいほぼ廃部に近い感じの部活だったから。」



普通の顔をして言わないでほしい。しかも部活の内容もよくわからない。

さらには2年間くらいは廃部みたいな感じ、それは明らかに先ほど碧に教えてもらった部活の内容とは違う。



「2年間廃部? だって兎本、人気の部活だ、って教えてくれた気が……」

「あー教えたね。そうだよ、昔は人気だったんだけど、ここ最近は幽霊とか神にまつわる事件が極端に少なくなって、やることが無くなったんだ。」



それだから、2年間廃部。なぜそうなったのかは聞かなくてもわかる。幽霊や神にまつわることは探すだけでも難しい、さらにそれを解決できるかもわからない。

この部活はそれを専門にやる部活。だから廃部状態になるしかない。



「えーとだから、またこの部活を人気にしたいんだ。先生に言われたことは、自分含めて3人部員を見つけること。」

「三人、それは俺と宮日と兎本? 確か兎本の中学生時代からの友達がいたはずだよね?」


確かに、さっき知り合ったばかりの勇たちより中学生時代からの友達を誘った方がいい気がする。しかしその理由は自然と推測できた。


「断られた。運動部に行きたいって。だから二人に頼んでいるんだ。先輩とかは全く興味がないみたい。」



その後、同級生を誘うしかないという説明を受けた。

碧が、手を重ねてお願い! と勇とひなのに入部を促している。



だが、勇の結論はすでに決まっていた。ひなのも同じ気持ちだと思っている。

しかも、先輩や先生に話をしている時点で碧のこの部活に対する気持ちは本気だとわかっていた。



「いいよ。何の部活に入るか迷ってたし。宮日は?」

「みゃーもいいよ。けど週に何回か気になる。」

「あーそれは……」



少々長い説明を受けた。学校に目安箱みたいなものを設置し、依頼者からの事件を解決する。それが幽霊などに関係しているのであれば。

してなくても、時間があれば解決する。ということのようだ。したがって活動は不定期。時間帯も決まってない。夜の可能性だってある。

ひなのはこの部活に熱心なのかスマホでメモをとっていた。


ふと、碧が腕時計を見る。すると少し目を開いた。



「あ、ヤバい。今日ちょっと用事があるから、これで帰るね。バイバイ! 今日はありがと! 詳しいことはまた今度!!」



3分の1くらい残っているジュースを置いて走り去っていく。



「おーい兎本、ジュース忘れてるぞ。」

「それあげる!」



色々とツッコミどころがあるが、忙しそうだったので余計なことは口に出さない。渡そうとしたジュースが勇の手にある。



「これどうする?」



ひなのに聞くがすぐに答えが返ってくるわけがない。人が飲んだジュースなんてあまり飲みたくはない。

どんな人にも抵抗は少しくらいはある。



「ん~、たぶん兎本さんが渡したのは、勇だから、飲んじゃえば? まあ、間接キスって奴?」

「いや、それは……」



何を普通に言っているのだろう。勇は間接キスなんてものをしたことがない。もちろん普通のキスも。

この状況でひなのが飲べば? なんて言えない。もしそんなこと言ったら余計ややこしくなりそうだ。



「まあ、できないよねー、私も冗談で言ったから気にしないでね。でも、勇かなり焦ってた!」



ひなのは勇の表情を見て腹を抱えて笑っていた。

結局勇はそのジュースを店員さんに渡し、片づけてもらったのであった。



「あ、そうだ! 勇、ちょっと寄りたい所があるんだけどいい?」




************



――神ヶ崎中学校付近――




「今日は始業式だけだけど、楽しかった!」

「そうですね、私もです。でも、中学最高学年としてちゃんとしなくては!」


勇たちがドタバタしている頃、玲奈とミナは中学から下校していた。

今日、玲奈はミナと中学に登校し、中学生ライフを少し満喫していたのだった。



「勇さん、ひなのさん、夏鈴さんは初めての高校生活楽しかったでしょうか。なんだか羨ましいです。」



ミナは高校生活がどんなだったのかを想像している。



「1年しか違わないけど、高校って羨ましいものなの? まあ、勉強の内容とかは違うと思うけど……」

「確かに1年しか違いませんが、中学3年生と高校1年生の間の1年はとても大きいと思うんです。特に体や心の変化が。」



玲奈がなんとなくぶつけた質問はミナにとっては大切なものであった。

ミナはこの1年をただ過ごすだけではなく、1日、1日を、何かを学んでいく日にしようと考えている。そう感じられた。



「私は幽霊だからあんまりわからないけど、高校に進学するって時点ですごい大人な感じがするなー」

「だから、私はその一年を過ごして高校に入学した勇さんたちを羨ましく思っているんです。」



玲奈は言葉を選んで慎重に話している。さらに今のミナの言葉を聞いて玲奈も何か成長したいと思っていた。



「私も何かできるようになろうかなー。」

「急にどうしたんですか?」



ミナが疑問の眼差しを向ける。



「えっと、ミナちゃんがこの1年間を大切に使いたいって感じだったから私も大切にしていきたいなって。」

「もしかして、勇さんのためにですか?」

「まあ、そうかな。でも、ひなのさん、夏鈴さん、ミナちゃんのためにも。優しく接してくれているし。」

「なるほど。では感謝の気持ちを込めて料理を作ってみますか?」



確かに1日を大切にしていくとしたら日々の感謝が大事だと思う。ミナからの提案はとてもいいものだ。

しかし、玲奈には不安があった。



「私料理できるかなー」


そう玲奈は料理をしたことがない。ミナに迷惑をかけてしまうと考えたのだ。



「一緒に作りましょう、私だって、すぐに料理が得意になったわけではないので。」



すると玲奈の腹の辺りからぐぅ~という音がする。



「お腹が空いてきましたね。」

「どうする?」

「お昼ご飯なら大丈夫ですよ。玲奈さんが好きな温泉まんじゅう、旅館から持ってきました。」



玲奈が気に入った温泉まんじゅうをミナは持ってきてくれていた。こうなることがわかっていたのだろうか。

それから玲奈はパクパクと温泉まんじゅうを食べた。


「料理するとしたら、まずは簡単なカレーからにしてみましょう。」

「カレー、私も好き。 勇にぃも好きだった気がする。」

「じゃあ、具材買いに行きましょうか。妹が作ってくれたカレーならきっと喜びますよ。」



こうして玲奈たちは買い物に出かけたのであった。



************



しばらく何も話さずひなのと歩いていた勇であったが、寄りたい場所とはどこなのかが気になっていた。



「そういや、寄りたい所ってどこ?」

「え? ここだよー」


ひなのが指をさした先は大型スーパーであった。きっと何かを買いたいのであろう。

このスーパーにはスポーツ用品、食料品、玩具など様々なものが売っている。



4階までエレベーターで上がる。途中で神ヶ崎高校の生徒とすれ違い、カップルだと勘違いされた。



「私たちカップルなんかに見えるかなー」

「まぁ何も事情を知らない人からしたらそう見えるんじゃね?」

「事情?」



勇が言った事情とは神田旅館という場所で一緒に暮らしているということであったが、あいにく、ひなのには伝わらなかったようだ。



「じ、事情って神田旅館で一緒に暮らしていることだよ。」



勇の表情を見てまた、ひなのが『あはは』と笑った。



「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃん、私もそうかなーとは思ったけどね。あ、今日用事があったのはここ。」


目の前に広がっていた光景は、季節外れのもの。水着であった。



「え?なんで水着なんか買うの?今春だぞ。」

「勇、神ヶ崎高校では毎週水泳の授業があるんだよ。それの準備。」

「学校指定の奴がなかったっけ?」

「男子はそうだけど、女子は自由。たぶん全員華やかな水着を持ってくると思う。」



確かに神ヶ崎高校の水泳の授業はプール塔、すなわち屋内で行われるため、水着は必要だ。

ここまで会話してもなぜ、勇が必要なのかがわからない。買うのはスポーツ用の水着のため、そんなに華やかさはいらない。



「なんで俺は必要なの? ちょっとここにいるの恥ずかしい気が……」



恥ずかしいのも無理はない。なぜなら、今いる場所は女子の水着コーナーだったのだから。



「だってそりゃ男子に見られるわけじゃん。だから勇の意見を取り入れようと思って。みゃーも女子高校生なんだから人からの視線は気にするよ。」



ひなのは一番身近にいる男子、すなわち、勇に水着の意見を求めようとしていた。

だが正直、水着の意見を素直に述べられるほど、女子経験が少ない。さらに意見を求めるということは、ひなのの水着姿を見る、ということだ。

想像をするだけで頭がパンクしてしまいそう。



そんなことを考えているうちにひなのは水着の候補を決めて、試着室へと入っていった。

少したった後、試着室のカーテンが開いた。



「まず候補1! こんなのどう?」


正直、まじまじと見ることはできない。ひなのは小さい体で胸も小さいほうだが、水着を着るとそのラインなどがくっきり見えてしまう。

ひなのが選んだのは、全体が紺色で、ラインがピンク色の水着。これなら華やかさもあり、そんなに目立ちもしない。



「いいんじゃないかな。す、すごい似合ってると思う。」



勇の言葉を聞いたひなのは、



「やっぱそう思う? せっかく勇に選んでもらったんだし、これにしよ!」



嬉しそうに笑っていた。ひなのはまた、試着室へ戻る。と同時に勇からは、ため息が出る。



「はぁ~、女子の水着を見るのは結構抵抗あるし、恥ずかしいな。って水泳の授業どうすれば……」


そんなことを考えていると、ドタッと鈍い音がした。たぶん試着室からだ。試着室は全部は 3つある。うかつに開けるわけにはいかない。

だが、音がしたのはどこなのかがすぐにわかった。



「勇、ちょっと来てー、みゃー大変なことになっている。」



何か大変なことになっていると報告されたのでとりあえず試着室のカーテンを開ける。



「宮日、どうかしたのか……、って、おい! どんな格好してんだ!」



たぶんこれを見た人はほとんどの確率で勇と同じことを言うだろう。

ひなのは制服を着る途中で体勢を崩してしまっていたのだ。ズボンをはいていたが、ワイシャツは着ている真っ最中。



さらにはひなのの、ブラジャーがちらっと見えてしまっている。



「え、急に入ってきちゃう? 勇にしては行動早かったねー。でも、そんなまじまじ見ないで……」

「いや、見てない!」



まじまじ見ないでと、ひなのは言っていたが、実際は見られていなかった。勇の反応を楽しんでいたのだ。

朝の学校ではひなのも予期せぬ事態になって恥ずかしがっていたが、これは想定内だった。



しばらくして、ひなのが試着室から戻ってきたが、勇はぐったり。

そんなひなのは、勇の反応が気になり、追い打ちをかける。


「さっきのこと、玲奈ちゃんに行っちゃおうかなー?」

「いや、それは!」

「嘘だよ。さっきも見られてなかったから。」

「え? 今のも全部俺の反応を見るための……」



全部計算されていたのだとすると、簡単に引っかかってしまった自分がなんだか情けない。



「え、そしたら水着の件も……」

「あれは本当だよ。この水着は勇がいいって言ってくれたものだから。」



そういうと、ひなのはレジに持って行って水着を購入した。



「なんか、今日は勇をからかいたくなっちゃった。」



ひなのが、今度は笑みを浮かべて、勇の顔を覗く。

ちょっとは勇も反応したが、顔が少し赤くなっただけだった。



「いや、からかいって……」

「また今度買い物したい時があるかもしれないから、また一緒に行って! それと……」

「一緒に行くけど、からかいは無しで…… それと?」



二人は立ち止まって、ひなのは勇の顔を見る。



「水泳の時、みゃーの水着姿そんなに見ないでね。」

「は!?」



高校生最初の放課後は何やら騒がしい勇とひなのであった。


今回は、初めての放課後ということもあって、短い話が複数重なってできている感じにしました。

次話にも、玲奈とミナのことは続いていきますので、応援よろしくお願いします。


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