第十一話
「ガーゴイル?それは種族の名前じゃない」
「でも、僕の名前はそれしかないよ?」
「じゃあ私が考えてあげる!」
目が覚めたニーラはいつの間に自分がベットで寝ているのか疑問に思いつつも聞きなれない声に些か驚いた。しかし、直ぐに昨晩ネビロスがつれてきたガーゴイルの子供の声だと分かった。上半身を起こし、既に仲良くなったリュイとガーゴイルを見る。2人ともネビロスの魔術で人間の子供に見える。肝心のネビロスはまだ夢の中。
「えーとね、えーとね……」
必死に名前を考えているリュイ。ワクワクを隠せないガーゴイル。しばらく間を空けてひらめいたように大きな声を出した。
「ガール!」
「…それ、女の子って意味だよ?」
嫌だ、とその表情が語っている。
「あ、そっか。じゃあ……」
「スイレン」
低い声が響いた。この名前には2人とも気に入ったらしく決定した。むくりとネビロスが起き上がる。ニーラは聞いた事のあるその言葉に首をかしげた。
「スイレンって花じゃないか」
「花には言葉がある。辛い境遇に置かれたがリュイと共にいるあいだはせめて、普通の子供のように純粋な心を持って欲しい」
ベットから降りて、目覚ましの為に冷たい水を飲んだ。なんだかんだと子供には優しいネビロスにニーラはクスリと笑った。心の篭った名前にガーゴイル…スイレンはキラキラとした尊敬の眼差しをネビロスに向けた。
「僕、僕、一生この名前を大切にします!」
「あぁ。…それと、俺に敬語は使わなくて良い。そうだな、俺とリュイは基本的に兄妹という事にしている。お前も今日から兄弟だ」
心なしか嬉しそうなネビロス。感極まったように目にいっぱいの涙を留めるスイレン。
「……はいっ!…あ、うん!!兄さん!!!」
「わーい!家族が増えたーー!」
スイレンに抱きつき、2人で喜びを露にしている。微笑ましいその光景に保護者的な存在である2人も微笑んだ。と、何かを思い出したようにスイレンが真顔に戻ってニーラを見た。
「そういえば、ネビ…兄さん。その人は勇者じゃないの……?」
少しニーラを睨みつけた。子供といえども魔物。その目つきは魔術で人間の姿になっても凶悪だ。ネビロスは自身から言え、とニーラに目配せをした。
「そうだ。だが、今はネビロスを倒す気は無い。安心しろ。俺のことはニーラと呼んでくれ」
「……うん」
いまいち納得のいっていない様子だったがネビロスが許可している事は安全という事なので渋々頷いた。
ネビロスは何故、子供を守るのか。その子達に家族を作ってやるのか。魔王とはかけ離れたその行動にニーラは違和感を感じている。元々魔王らしくないところが多々あるとは思っていたが疑問は増えるばかりだった。
男であるはずの勇者は女。【世の理】から外れたニーラが何故聖剣を扱えるのか。外れたからこそ今までの勇者と違う考えを持っているのだろうか。彼女にしか出来ないことがあるんじゃないのか。ネビロスは密かに期待している部分もある。
はてさて、4人に増えた種族がバラバラのこのパーティは次に何と出会うのか。理に近づけるのか。




