終
「男前だな、ほんとに雪音さんは」
笑いながら言っている不破はまるでそのために屋上に来たかのように、わたしが作ってきた弁当を口に運んでいる。そして、堂々とそれを要求できるようになった司は、購買で足りない分の補給をしてわたしの分を勝手につまんでいる。
「あのさぁ……二人共自覚がないよ。わたしが言うならいいけどさ。あそこで二人がああやって否定しちゃったら、あの子達気持ちの行き場なくしちゃう」
「何で?気にすることないじゃん。関係ない」
平然と言ってのける不破をまじまじと見つめるわたしの横で、司が妙に感心したような顔で不破を見ている。
「とりあえず、あそこで雪音を見捨てる奴じゃなかったから、合格な、不破」
「何であんたに合格もらわないといけないんだ」
「オレは酷く疎外感に苛まれていたんだ、ここんとこ。家ではオレ以外がみんな雪音の弁当食ってるし。妹にいたってはおやつ付。学校に来ればお前がいつの間にか作ってもらってるし。かといって付き合っているわけでもないわけ分からん状態。まあこれで公然と言いたいこと言えるわけだ。雪音、こいつはやめとけ。さっきは確かに誠実でいい奴だった。でも他の奴には不誠実でだらしないぞ。だからああなる」
「なるほど、覚えておくよ、司」
自分も原因の一つだと忘れているらしい司に笑ってしまいながら頷く。二人はわたしを外見で思い込んだりしない。ちゃんと知っていて向き合ってくれているから。小さい頃みたいに真っ黒に日焼けして、体中傷だらけで泥だらけでも、きっと同じような態度しか取らない。
司はそんな昔から知っている親友で、不破は何となく人に興味がないだけのような気がするけど。
「で、わたしは結局二人の餌係なわけね」
笑いながら言ったわたしの言葉に司と不破はふと顔を見合わせる。その顔を見てなおさら笑ってしまった。理由なんてどうでもいい。とにかく笑いがこみ上げてきて仕方ない。
「何だよ」
「ん?わたしもつまらなかったみたい。司と遊べなくて。でもその分、不破と仲良くなれたけどね」
「隙をついたんだけど……独り占めはかなわずか」
悔しげに言う不破を見て司が複雑そうな顔をしている。
最後の一個になったサンドイッチを取ろうと伺い合っている司と不破の間から手を伸ばし、それを取ると三つに割った。
「とりあえず、分けっこしようか」
「ここのところは、な。でも雪音は分けられんだろう」
「分けてどうする、分けて。司も変なこと言うね」
「……不破、分かったか? こいつに浮いた話がないわけ」
「自業自得だな……まあ、女の親友ってのも、かなりオレは嬉しいけど。女とは友達にはなれなかったから」
「へぇへぇ」
男二人のやりとりを眺めながら、それならとりあえず、餌係として腕にさらに磨きをかけようかと思う。喜んでくれる人が、増えたのだし。




