ノイズだらけの自己紹介
ご覧いただきありがとうございます。
放送部を舞台にした、少し静かな青春ストーリーです。
俺はこの春から高校生になった、佐伯 柊斗。
趣味は機械いじり。それだけで、俺がクラスのどの層に属する人間か察してもらえると思う。いわゆる「陰キャ」ってやつだ。
派手なカーストの争いに加わるつもりも、中心人物になる気もない。ただ静かに、平穏な高校生活を送るはずだった。……あの場所へ足を踏み入れるまでは。
俺は、機械の中でも特にラジオが好きだ。だから、吸い寄せられるように放送部を選んだ。だけど、その選択がまさかあんな結果を招くなんて、当時の俺は微塵も思っていなかったんだ。
小野寺 美華。
クラスの中心にいて、誰もが憧れる、文字通りの才色兼備。放送室という狭い箱の中で、俺の平穏をかき乱すことになる、太陽みたいな存在。
なぜ、こうなってしまったのか。
仮入部のときはまだ良かった。他に部員もおらず、俺は理想通りの「静かな聖域」を手に入れたと確信していた。異変が起きたのは、本入部当日だ。扉を開けた先にいたのは、仮入部期間には影も形もなかった、あの小野寺美華だった。
絶句した。
なぜ彼女のような人間が、旧校舎の奥深く、カビ臭い廃部寸前の部室にいるのか。想像すらしていなかったその光景が、俺の平穏な高校生活の終わりを告げる「ノイズ」だった。
先輩たちからは聞いていた。「仮入部には来なかったけど、もう一人、一年生が入る予定だから」と。
正直、誰が来ようと興味はなかった。俺の目的は機材であって、人間関係じゃない。……だが、まさかその「もう一人」が彼女だなんて、誰が想像できるだろうか。
ガチャリ、と重い音を立ててドアを開ける。
埃っぽい部室の真ん中、西日に照らされたパイプ椅子に、場違いなほど綺麗な少女が座っていた。
思考が完全に停止した。
驚きや感動よりも先に、脳が「異常事態」を検知して、口から漏れた第一声はこれだった。
「……は?」
それが、俺たちの本当の意味での「出会い」だった。
間抜けな声が、西日の差し込む静かな部室に空虚に響く。
対する小野寺美華は、驚いた風でもなく、ゆっくりとこちらを向いた。膝の上には、読みかけの文庫本。クラスで見せる弾けるような笑顔ではなく、どこかひっそりとした表情で。
「……あ。えっと、同じクラスの……佐伯くん、だっけ?」
「……っ。なんで、小野寺がここにいるんだよ。部屋、間違いだろ」
俺の困惑をよそに、彼女はふふっ、と小さく笑った。その笑い方は、いつも男子たちに振りまいているサービス用のそれとは、明らかに違っていた。
「間違いじゃないよ。私も今日から放送部。……驚かせちゃった?」
「驚いたなんてレベルじゃない。……お前みたいなやつが来る場所じゃないだろ、ここは」
「お前みたいなやつ、か」
彼女は少しだけ目を伏せて、窓の外に広がる、部活動に励む生徒たちの喧騒を眺めた。
「……あっちにいるのが、たまに疲れちゃうこともあるんだよ。ここ、すごく静かだって聞いたから」
その横顔を見て、俺は何も言えなくなった。
クラスの太陽だと思っていた彼女の影が、ほんの一瞬、俺の孤独と重なった気がしたからだ。
俺は無言のまま、彼女から少し離れたパイプ椅子を引き、機材の前に座った。
「……勝手にしろ。俺は機械が触りたいだけだ」
「うん。邪魔しないから」
メインアンプのスイッチを入れると、スピーカーから「ブーン」と低いハムノイズが漏れ出した。
いつもなら心地よいはずのその音が、今はなぜか、彼女の吐息が混じって聞こえるようで落ち着かない。
俺の平穏だったはずの放課後に、消えないノイズが混じり始めた。
でも、それはそれほど、不快な音じゃなかった。
ご愛読ありがとうございます
自分自身この作品が初めてなので不器用なりに頑張りました、とりあえずゆるくどんどん投稿していこうと思ってます




