04:昼ご飯と火魔法
初のグルメ回です。
ぐぅぅぅぅ~
昼も過ぎていたせいか、俺のお腹が空腹を訴える。前世の習慣のせいか、昼にはお腹が空く。
ここらの貧しい村人たちは、お昼を食べる習慣はないという。朝夕の食事が一般的なようだ。
だがお腹が空くものはしょうがない。ゴブリンが攻めてこようが何だろうが、お腹は空くのだ。
「クマさん。俺小腹が空いたから、何か作って食べようと思います」
「料理をするのか? 幼い嬢ちゃんが?」
「まあ見ていてくださいよ」
「そんなことより魔法を早く覚えた方が、いいと思うがな」
「まあ、腹が減っては何とやらと云いますし・・・」
「仕方ねえなあ。ちょこっとだけ休憩にすっか・・・」
俺はまず土魔法で、作業台とコンロと鍋を作成した。
コンロは薪を使うタイプだ。
「おめえいきなり器用に土魔法を使うな? 普通はもっと訓練が必要なんだがな」
「そんなものなんですか?」
土壁をさんざん造らされたせいか、俺は土魔法でイメージが出来れば、結構簡単に欲しいものが作れるようになっていた。
今では粘土細工と、あまり変わらないと感じるくらいだ。
作業の前に、そこらの井戸で手を洗う。
そして以前ウエストウッド村で拾った、収納ポーチから小麦を取り出して作業台にのせる。
作業台に小麦をのせたら、小麦に水を混ぜる。
身体強化で腕力を上げて、小麦をこねる、またこねる。
うどんはこのこねる作業が重要だ。
こねることで、麺にコシが生まれるのだ。
「オイラ薪を集めて来てやるよ。必要だろ?」
「それじゃあお願いします」
俺が小麦をこねている間、クマさんは薪を集めてくるようだ。
俺はこねた小麦を、土魔法で作った麺棒でのばす。
そして土魔法で作った包丁で、一定間隔に細く切る。
「何してるの?」
村の娘が俺たちの様子を見て、話しかけてきた。
娘は若干パーマがかかっている、肩まである茶い髪だ。
つぎはぎのあるエプロンドレスを着ており、目の色は青い。この村の人は大概青い目だ。
背は俺よりも頭半分くらい高い。
8~10歳くらいの子供かな?
「うどんを作っているんですよ」
「ウドン?」
「うどんは食べ物です。お腹が空いたので作っています」
「ふーん・・・」
そう、俺の作っているのはうどんだ。
小麦は持っていたし、小麦だけで、今思いつくのがこれくらいだったからだ。
でもそういえば俺は塩を持っていない。塩がないとうどんを茹でても味がないぞ。
「ねえ。君もお腹空かない? 塩を分けてくれたらご馳走するけど」
そう言うと少女は、途端に笑顔になった。
食べる習慣がないとはいえ、やはり皆この時間には、お腹が空くのかもしれないな。
「お母さんに聞いて来る!」
そう言うと娘は、どこかに駆け出して行った。
気づくと何人もの村人が、俺の周囲に集まってこちらを見ていた。
そんな人数に配る量はないので、他の人には諦めてもらう。世話になっている村長くらいには、ご馳走してもいいかもしれない。
しばらくするとクマさんは、薪と小さな果物数個と、見慣れない葉っぱを持ってきた。
「薪はこの中に入れればいいな?」
そういうとクマさんは、コンロの中に薪を入れた。
「それからこれはついでに見つけて来た食材だ。酸っぱい果物数個と、香りのする葉だ」
「ありがとうございますクマさん」
そう言うと俺はクマさんから、果物と葉を受け取った。
果物はミカンのような感じがする。むいて食べると酸っぱい。葉はバジルのような香りがする。
俺は他に土魔法で小鍋を作ると、果物の汁を絞って入れた。
次に土魔法でおろし器を作り、果物の残りかすをすりつぶして小鍋に入れる。
「お前、次から次へと思いつくな・・・」
クマさんはおろし器を見て、やや呆れ顔だ。でもおろし器ぐらいはどこにでもあるだろう?
そして俺は、小鍋をコンロにのせる前に思い出す。大事なことを・・・・
「クマさん、火のつけ方がわかりません」
この異世界にはライターもマッチもないのだ。
前世で火があって当たり前だった俺は、そのことを失念していた。
「何だ、お前火もつけられないのに料理しようとしていたのか?
これも修行の一環だ。火の魔法を教えてやるぜ」
火魔法といえば、某有名RPGの攻撃魔法・・・メ〇だ。
クマさんの言葉を聞いて、俺のテンションと、厨二心はマックスへと跳ね上がる。
「ふぉぉ! 火魔法! 俺もメ〇を使えるようになるのか!?」
「メ〇が何か知らねえが、火魔法も適性がないと使えないぜ。どれ、嬢ちゃんの適性を見てやろう」
クマさんはそう言うと、俺の手を取った。そして厨二くさい呪文を唱え始めた。
「アクセス アプロト フレイア」
クマさんの握る俺の手が、青く輝くと、赤い文様が浮かび上がって消えた。
「ほう。結構な火の適性があるみたいだぜ。適性がでかいほど、この文様が大きく出るんだぜ。」
「やった! メ〇! 早く撃ちましょう」
「撃つとか怖いこと言うな! まずは小さい火からに決まってるだろぅ!」
クマさんは人差し指を上に掲げた。
「まずは自分の指先に魔力を集中し、燃える空気が放出するイメージから始めな」
なるほど、燃える空気は、可燃性のガスか何かか?
ならプロパンガスあたりをイメージするか。
俺は指先に魔力を集めると、プロパンガスを放出するイメージをした。
しゅぅぅぅぅ~
「ん? 何の音だ。 それに何かくさい臭いがするな」
「プロパンガスはこんな感じですよね」
「お前何言ってんだ? 何か危険な感じがするな・・・。
その指を人のいない場所に向けて、火をイメージしてみ。絶対人には向けるなよ!」
そう言うとクマさんは、後ずさりし始めた。
周囲で見ていた村人たちも、危険を察したのか、俺の指先の向かっている方向から逃げていく。
「こうですか?」
俺は指を人のいない方向に向けて、火をイメージした。
どぼぉぉぉぉぉぉう!!! ぐぉ!!
「ひぃぃぃ!」
「きょてぇー!」
すると青い炎が、指先からすごい勢いで放出した。
格ゲーのキャラが使いそうな感じの炎だ。
村人たちもそれを見て怯えている。
「うぉ! 危ねえ! もうちっと加減しろい嬢ちゃん! 青い炎ってやばすぎだろ! もうちっとこー。ちょろちょろ出る感じにしろぉこぅら!」
クマさんに怒られた。
俺はクマさんの言う通り、細く針みたいに、ちょろちょろガスを出して、火をイメージした。
すると指先には、青いライトセイバーが出現していた。
「ふぉ! すげぇ! ライトセイバーだ! ぶぉん! ぶぉん!」
俺のテンションは再びマックスとなり、青いライトセイバーはぶんぶん振り回された。
「くぉら!! そんな危険物振り回すな! あと青い炎は禁止だ! 何か危険な感じがする!」
「そんなこと言われましても、俺青い炎しか出せませんよ。多分・・・」
イメージ的に俺の知ってる炎は、前世の自宅にあったガスコンロの火だ。焚火の火とか、あまり見たことないからイメージしにくい。
「ちっ! しょうがねえ。その青い火の先っちょを薪につけてみ」
俺が薪に青い炎をつけると、そこから赤い炎が上がった。
「それじゃあ火がでかいから、その火に魔力を流して支配して、そのまま小さくするんだ」
俺はクマさんに言われるがままに、火に魔力を流して、小さくなるイメージをした。
しばらく火を大きくしたり小さくしたりして、ちょうどいい大きさに調整出来たら、コンロに小鍋をのせた。ちょっとずつ火を調整できるのはとても便利だ。
このまま果物のソースを作っていこう。塩だけのうどんも味気ないので。
「塩もらってきた!」
丁度少女が塩をもらって来てくれた。
今度はお兄ちゃんも一緒らしい。
お兄ちゃんの方も、少しパーマがかかった短い茶髪だ。服装はほぼ茶色一色。地味でところどころにつぎはぎがある。青い目は変わらないな。
「妹がごめんな」
「いえいえ、こちらこそ貴重な塩をわけていただいて。
せっかくですからお兄さんも、妹さんと食べていきませんか」
「お前、お貴族様みたいな喋り方するな。もらえるならご馳走になるけど」
この世界に貴族はいたのか。まあ雰囲気的に、そうでないかとは思っていたが。
ソースの仕上げに片栗粉は無いから、代わりに小麦を少し入れてかき混ぜて、もらった塩を入れて味を調整したら、火からのけて少し放置だ。
味見をすると、ちょっと酸っぱくて独特な感じはするが、ソースとしては悪くないかな。
後でバジルみたいな葉っぱも入れてみよう。
「ほう、果物の汁が何かトローとして、美味そうなものになったな」
「それは、うどんのソースなので食べないでくださいよ」
兄妹とクマさんが小鍋を覗き込んで、今にも食べそうだ。
次にうどんを入れた鍋を火にかける。
これは茹ですぎると、コシが無くなるので注意が必要だ。
その間に4人分の皿と、カトラリーを土魔法で作る。俺のは箸だ。俺は箸の方がうどんは食べやすい。
ある程度うどんを茹でたら、少しつまんで食べてみる。
「うん、これくらいのコシならいいかな」
うどんが茹で上がったら、土魔法でざるを作って、うどんの水を切る。
うどんをそれぞれの皿にもって、ソースをかける。最後に小さく切った、バジルをかけて完成だ。
ほぐし打ち粉が小麦粉なせいか、上手くいかず、麺は結構くっついてしまっている。
でもそれが逆に良かったのか、フォークで引っかけやすく、食べやすくなっているみたいだな。
クマさんも、兄妹も、上手くフォークで刺したり引っかけたりしながら、口に運んでいる。
「酸っぱいが癖になるな。このうどんはもっとがっつきたくなるな」
「え~。甘いよ」
「うめ~」
村の少女は、あまり甘いものを食べたことがないのか、これくらいでも甘く感じるらしい。
俺の肥えた舌は、すでにこのレベルの甘味は感じないが・・・・。
クマさん、君はなぜ酸っぱく感じるんだ?
蜂蜜ばかり食べてるのか?
お兄ちゃんは、無言でうどんをかき込んでいる様子。
そして俺は思った。
うん。これはうどんじゃなくて、太麺パスタだな。
ドレッシングのかかった太麺パスタだ。
少量だが幼女のお腹には十分なようで、すぐに空腹は満たされた。
あとで村長にも持っていこう。
その前に今回の成長を見ておくことにする。
「ステータスオープン」
名前 リンネ(女)
体力 弱
魔力 やっと3分の1減ったところ。あまり変化はない。
物理攻撃 弱
魔法威力 ?
適性魔法
土魔法
習得魔法:土剣、土壁、土小物
火魔法
習得魔法:青い炎、青いライトセイバー
特技 身体強化
今回は俺の魔法に、火属性が加わった。
【★クマさん重大事件です!】↓
お読みいただきありがとうございます!
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「続きが読みたい!」
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