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41:行商人との取引

 現在私はホウライ王国の行商人と、取引をしている。


 そこには港に停泊する魔道船があり、リンデルとアイリンが魔道船を眺めながら、何やら会話しているのが見える。

 まああの2人は楽しく遊んでいるようだし、しばらく放っておいても大丈夫だろう。


 クマさんは腕を組みながら、私と行商人のカクタニさんのやり取りを見ているようだ。


 私は露店に並べられている、ホウライ王国の品々に目を向けた。


 商品を見ると、醤油やお酢、お酒やお米などが並べられているようだ。


 同じく取引をしているクリフォード侯爵とエリザベート夫人も、真剣な眼差しで商品を見ている。



「リンネ様との取引でしたら、物々交換でもよろしいですよ」



 20年も前になるが、その時ホウライ王国の行商人と取引した時も、物々交換だったことを思い出す。


 確か蜂蜜フルーツ飴が20個と、ビッグハニービーの蜂蜜の小瓶2瓶ほどで、並べられている全ての商品を、いただいた記憶がある。



「ちなみにビッグハニービーの蜂蜜フルーツ飴の価値は、以前と変わりないですか?」


「もしかして蜂蜜の丸薬のことでございますか? それならホワイトチョコレートなるお店から最近出回っておりますので、20年前と比べて2分の1に価値が下がっております。」



 ホワイトチョコレートではビッグハニービーの養蜂をしており、一部の魔術師がすでに、蜂蜜フルーツ飴の製法を習得しているのだ。

 そのホワイトチョコレートのお店で、蜂蜜フルーツ飴が販売されているのだ。

 出回る量が多くなれば、価値が下がるのは当然のことだ。


 あの養蜂場を造ったのは私だし、蜂蜜フルーツ飴の製法を学園で広めたのも私だ。

 どうやら自ら首を絞めてしまっていたようだ。


 まあ蜂蜜を皆が手軽に使えるようにするためだったし、仕方ないことだとは思う。



「ではこのチョコレートはどれくらいの価値がつきますか?」



 私は白と黒のチョコレートの入った箱を開けて、行商人のカクタニさんに見せた。



「それはチョコレートでございますか!? チョコレートはその原料が少ないために、イーテルニル王国の貴族か王族の間でしか、出回っていないと聞いております。それにジュラ大陸南部の竜の巣窟にある、大変希少な果物から作られるとも聞いております。しかもその白いチョコレートは、見たことも聞いたこともない珍品・・・。そのチョコ棒2つで、白金貨1枚ほどの価値はあるのではないでしょうか?」



 ホワイトチョコレートは最近王宮で試食会が行われたばかりで、ほとんど出回っていないのが現状だ。

 ならば行商人のカクタニさんが、知らないのも無理はないだろう。



「え? それじゃあこのチョコ棒2つで、目の前のホウライの商品が、ほぼ全部いただけるということですか?」


「まあ・・・そういうことになりますな・・・」



 今回は魔道船も入港したばかりと見えて、醤油もお米も、その他の調味料も、まだ大量にあるのが見て取れた。


 醤油だけでも50本、米俵が10俵、その他調味料が50本。

 まさに宝の山である。



「ちょっ! ちょっと待ってくれ! それでは当家がホウライの商品を取引できなくなってしまう!」



 話を聞いていたクリフォード侯爵が、慌てて私達の話に割り込んできた。



「それではこうしてはいかがでしょうか? そのチョコレートと、さらに何か追加で物品を一品こちらが頂き、商品を全てリンネ様にお譲りしましょう。クリフォード様はリンネ様のお買いになった商品から、欲しい物を買い取る形にされてはいかがでしょうか?」


「なるほど・・・そうであれば我々でも商品が手にできるな!」



 どうやらクリフォード侯爵は、それで納得したようだ。



「ではチョコレートを冷やすために、ミスリル冷凍庫を用意しましょう。これで全ての商品をいただけないでしょうか?」



 私はそう言うと収納魔法で、ミスリル冷凍庫を取り出した。



「それはもしや、聖獣印のミスリル冷蔵庫ですかな?」



 聖獣印のミスリル冷凍庫とは、クマさんの紋章のついた冷凍庫のことである。

 私の作ったミスリル冷凍庫に、さらにクマさんが作った空間の魔道具をとり付けることで、中に入れられている氷が、さらに溶けにくくなるという優れものなのだ。



「それでしたら、白金貨2枚の価値がありますね・・・。しかしそれでは取引のつり合いが取れませんので、超過分の金額を、こちらがお支払いさせていただく形になりますが、それでもよろしいですか?」


「もちろんそれでかまいませんよ」



 これでようやく行商人のカクタニさんとの取引が成立したようだ。

 その後はクリフォード侯爵、エリザベート夫人、料理担当のメイアちゃんを交えて、物品のやり取りを行っていく。


 3人には他にもチョコやら蜂蜜やらミスリル冷蔵庫やら、色々と強請られて、かなりの金額をもらうことになったよ。



「リンネ様は魔道船にお乗りしたいそうで、いったいどちらまで行かれる予定ですかな?」



 クリフォード侯爵との取引が終わると、次に行商人のカクタニさんと、船に乗船するための交渉を始める。


 カクタニさんによると、この魔道船はカクタニ屋が国から借り受けた形になっているようで、管理は全てカクタニ屋で行っているようだ。


 なので船の運賃などの管理も、カクタニ屋の管轄なのだそうだ。



「そうですね・・・とりあえず1周して、この港街まで帰ってこられればいいと思っています」



 以前セイリュウ坊やにもらった世界地図通りであれば、ホウライ王国から南側に進み、右周りの経路で進んできたであろうこの船は、次は帝国方向へ進んで、ホウライ王国へ帰っていくのではないだろうか?

 


「残念ながらこの魔道船であっても、帝国から先の氷海を渡ることは出来ないのです」



 想像とは違い、ハイテクな魔道船であっても、帝国から先にある氷海は超えられないほどの場所のようだ。

 どんな場所かはわからないが、おそらく極寒の海であることは予想できる。



「この船はこのノースポーで折り返し、次は左回りの航路をとり、ホウライ王国を目指します。今回は特別にインディアナ大陸へも調査団を派遣するために、よることになっております」


 

 どうやら今回は、インディアナ大陸にも行くようだ。

 インディアナ大陸は未踏の地と言われているので、今から行くのが楽しみだ。


 するとホウライに到着してから、イーテルニル王国に帰還するためには、再びホウライ王国で、魔道船に乗る必要があるのだろう。


 まあ私達には魔道航空機ジャイロさんもあるし、空路で帰る手段もあるのだ。

 それはホウライ王国に着いた時にでも、ゆっくり考えることにする。

 


「費用ですと、この船でホウライまでですと、お1人様白金貨2枚ほどです。また魔道船への魔力補給をしていただけるのでしたら、費用はさらにお安くできますよ。あと聖獣様からは運賃を頂かないことになっておりますので・・・」


 するとこの船の運賃は3人分なので、白金貨6枚ということになる。

 前世の金額で言えばだいたい600万円ということになるのかな?


 ぶっちゃけお金なら収納魔法に、白金貨が300枚以上あるし、商業ギルドに預けている、今も膨らみ続けている膨大な個人資産もある。



「運賃を上乗せして、良い部屋に泊まることは出来ますか?」



 600万円ほどの費用であれば、さらに金額を上乗せして、良い部屋を借りるというのもありかもしれない。



「さきほど提示した金額が、1番良い部屋の金額になります」



 どうやらカクタニさんは、いきなり1番良い部屋の金額を提示していたようだ。

 そこはさすがは商人と言わざるを得ない。



「あ、せっかくですから船の運賃も、物品で支払いましょうか?」


「ほう? それはこちらも願ってもないお話です。それでは先ほどのチョコレートをあと六箱ほど頂けると、丁度いいと思いますが・・・」



 チョコ六箱か・・・。でもそれだけだと面白くないので、他の商品も提示してみるのもいいかもしれない。



「チョコレートもいいですが、この器なんかいかがです?」



 私が無造作に収納魔法から出したのは、グリーンサファイヤの器だ。

 もちろん聖獣の紋章が金箔によって描かれている。



「ちょっ・・! ちょっと待つのだリンネ殿! その器で私の父は、一度死にかけているのだぞ。不用意にそのような器を出さぬ方がよいと思うのだが?」


「呆れたわリンネ・・・貴女まだこりていないのね・・・」


 

 クリフォード侯爵とエリザベート夫人が、呆れた様子でそう口にした。


 確かクリフォード侯爵の父であるチャールズのおじさんは、この器を利用されて、セイクリカ正教国の悪い枢機卿に、危うく殺されかけたのだったかな?


 まああんな悪事を働く人もまずいないとは思うのだが、用心にこしたことはないのだろうか?



「た、確かにその器は取引きには向きませんな・・・。売ろうとしたが最後、他国で罪人に仕立て上げられて、まっさきに取り上げられるでしょうな・・・」



 聞けば聞くほど恐ろしい器だ。

 売ろうとするだけでそこまでのトラブルに巻き込まれるとは・・・。

 いつもアイスを食べる時に使っている器なのだが、仕方ないのでしまっておくことにする。

 

 他にもサファイヤのナイフやグラスなどもあるが、これも出さない方がいいだろう。



「じゃあこの双眼鏡なんていかがですか?」



 次に私が取り出したのは、不要となった双眼鏡だ。

 なぜ双眼鏡が不要になったかというと、水魔法でレンズを作れば、同じようなことが出来てしまうためである。



「こ・・・これは!? 遠見の眼鏡ですかな!?」



 行商人のカクタニさんは、双眼鏡を覗き込みながらそう口にした。



「こちら1つ大金貨5枚でいかがですかな?」


「ちょっと待つのだ! 当家ならば大金貨6枚でそれを買い取るが!?」



 行商人のカクタニさんが双眼鏡の買取価格を提示すると、なんとクリフォード侯爵がその買い取りに割り込んできた。

 なぜそんなに双眼鏡が大人気なのだろうか?



「ならば大金貨8枚でいかがでしょう!?」


「ならば当家は大金貨10枚だ!?」


「ま、まあまあ2人とも・・・競売じゃないんだし、まだ沢山あるから? ね?」



 そのあまりに鬼気迫る2人の競売ぶりに、これでは収拾がつかぬと、双眼鏡をさらにもう1つ出して止めに入る。


 まあこの時の双眼鏡には、1つ大金貨7枚の価値ということで話がまとまったよ。


 残りは先ほどのミスリル冷凍庫の分の上乗せと、チョコやお菓子などの物品で、船の運賃も無事に支払うことが出来た。



「はあ~。やっぱりリンネはあのころのままね? 相変わらず商売に向かない性格だわ・・・」



 この取引が終わった後に、エリザベート夫人にため息混じりにそんなことを言われてしまった。

 まあやり方次第で、双眼鏡で大金貨20枚以上は、稼げたかもしれないからね。



「それでは5日後の2の鐘で出航いたしますので、その時再びこちらにおいでください。」



 最後に行商人のカクタニさんと別れの挨拶をすると、次の目的地へと向かうのだ。


 次は貴族の付き合いとして、街長のヨハン・イーテ・ウィルビー男爵のお屋敷に挨拶しにいくのだ。


 私がリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーだと名乗った時に、向こうがどう反応を示すかがちょっと不安だがね。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最上級とはいえ船賃高すぎじゃ?笑 三人分でカクタニ屋の店頭商品を余裕で買い占められるお値段の船賃とか。 船で運んできてるんだから税金や輸送費含めたらカクタニ屋の商品も物価が安いと…
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