05:土銃
昼食後俺は、クマさんにバレット系の魔法を教わるために、村の外に出た。
「バレット系魔法は、遠距離から敵を攻撃できる魔法だ。簡単に言えば魔力で魔法を投げるだけだ。
エルフ族のように弓矢に魔法を乗せたりする奴らもいるが、その方が効率は良いかもしれん。
魔法は狙いをつけるのが難しいからな。まあ、嬢ちゃんの得意な土魔法に関しては、石を投げるだけだからな。火魔法の方が強いかもしれん。
だが火魔法はここらじゃ森林火災の可能性がある。投げるなら今回は石にしてくれ」
つまり土魔法で石を作って、魔力で投げると。
俺は土魔法を使って石を作った。そして魔力でその石を掴むイメージをしてみた。
スカ!
ところがまったくその石を、掴むことが出来なかったのである。
「クマさん。石は作ったんですけど、魔力で石が掴めないんですが」
「嬢ちゃんが巨大な土剣を難なく持ち上げるだろ。
あれは土剣に魔力を流して支配して、無意識に浮遊させてるんだぜ。つまり石も魔力を流せば支配できて、イメージどおりに浮遊するぜ」
俺は石に魔力を流して、浮遊するイメージをしてみた。
すると石はふわっと浮いた。
そして俺のテンションと厨二心は再びマックスとなった。
「ふぉぉ!! テレキネシスだ! すごい! 」
「てれ・・? 何言ってんだ嬢ちゃんは? 興奮してないで、その石を魔力を使って放り投げてみ」
俺はクマさんに言われるがままに、野球選手がごとく、石を魔力で振りかぶって、剛速球で投げる。
どぴゅぅぅぅぅん!!!
石はすごい勢いでまっすぐ飛んで、カサ!と草むらへと虚しく落ちた。
「さすが魔力だけはあるな。すごい速度だ。じゃあ次はあの木を狙ってやってみな」
クマさんが目標の木を指さすと、俺の目はその木をロックオン。
再び土魔法で石を作り、剛速球で振りぬいた。
そして俺の投げた石は、風切り音とともに飛んでいく。
どぴゅぅぅぅぅぅぅぅぅん・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
カサ!
うん。当たらない。
魔力で投げるのは思ったより難しい。
俺の振りぬいた石は、あえなく目標を外し、草むらへとダイブした。
「残念だったな嬢ちゃん。これは当たるまで練習が必要かな?」
「クマさん。次は俺ゴル〇13に転職してみます」
俺はその時、唐突に昔読んだスナイパー漫画が頭をよぎった。
「嬢ちゃん・・・たまに言葉が支離滅裂だぞ。結局どうしたいんだ?」
「火魔法で石を弾いて、発射したら良いんじゃないかと思います」
銃の弾丸の後部には、火薬が入っていて、それを炸裂させることで銃弾は発射される。
その原理で弾を発射させれば狙いをつけやすく、弾速も上がるのではないかと考えたのだ。
何よりかっこ良い!
「嬢ちゃん。それはやめとけ」
「ふぁ? なぜですか?」
「昔そんな風に石を火魔法で飛ばそうとして、指がお亡くなりになった魔術師がいたのさ」
なんと過去にやった人物がいるらしい。
でも俺の発想はここで終わらない。
ならば土魔法で丈夫な筒を作り、後部に弾丸を入れる穴をあける。
後部は念のため厚く球型に作る。発射時の暴発を防ぐためだ。
筒にフロントサイトとリアサイトをつけるのを忘れない。
この二つがないと狙いがつけにくい。
完成した筒を前方に浮遊させて停止。
次に弾丸を作る。
弾丸が出来たら、弾丸の後部に隙間を作る。
弾丸を筒の奥に装填。
弾丸の後部に作った隙間に、ガスを注入して圧縮。
そこに火魔法を発動すれば、小さな爆発で、弾丸は飛んで行くはずだ。
パン!
乾いた音が響き、弾丸が発射される。
「ほう。相変わらず発想がぶっ飛んでんな。そいつぁあ鉄砲の仕組みによく似ている」
「鉄砲? あるんですか?」
「いや、ない。すでに忘れられた技術だ。博識な者なら知っているかもしれないがな。嬢ちゃんは鉄砲を知っているのか?」
「知りませんね。テッポウなんて」
じとーと、クマさんが俺を見つめるなか、俺は先ほどの木を狙う。
筒のフロントサイトとリアサイトが丁度かさなり、目標の木に狙いを定める。
弾丸を装填。発射!
パン!
弾丸は見事目標の木に命中した。
「ずいぶん深く木にめりこんだな」
クマさんは目標の木に近づき、弾丸であいた穴をしげしげと見つめた。
これは前もって弾丸を複数作っておけば、連射も可能かもしれないな。
ただ前もって弾丸にガスを入れておいた場合、なぜか弾丸が発射することはなかった。
クマさん曰く、魔法で作った気体は、あくまでその現象を肩代わりする魔力であって、術者の意識がそれた途端に、効果のない魔力に成り下がるのだとか。
ならば火魔法の発動を早めることが、より早い連射につながる。
パン! パン! パン! パン! パン!
俺は5つの弾丸を縦に並べて浮遊させ、効率よく筒の穴に装填。順番に発射した。
やはり自動小銃のようにはならないか・・・。
発射ごとに少しラグがあるのは残念だが、実戦使用は可能になった。
この魔法は「土銃」とでも名付けますか。
「嬢ちゃんの魔法は土剣といい、その筒といい、ずいぶんとぶっ飛んでんな。それに教えることがあまりなくて、拍子抜けだぜ。ぶっ飛んだ発想でごり押ししちまうんだもんな」
クマさんは呆れながらそう言うのだった。
そして今回の俺のステータスだが・・・
「ステータスオープン」
名前 リンネ(女)
体力 弱
魔力 あと半分
物理攻撃 弱
魔法威力 クマさんが褒めるくらい
適性魔法
土魔法
習得魔法:土剣、土壁、土小物、ストーンバレット
火魔法
習得魔法:青い炎、青いライトセイバー、爆炎小
特技 身体強化
ストーンバレットと爆炎小が増えていた。
なぜか土銃は追加されていなかった。
分類上合成魔法ではあると思うのだが、筒と弾丸が道具と判定されているのか?
あと魔法威力「クマさんが褒めるくらい」って何だよ?
【★クマさん重大事件です!】↓
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