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10話居候。

翌日早朝。

目を覚ましてリビングに行くと、井戸首がストレッチをしていた。


「リハビリか?精が出るな。」

「3年間も体の無い生活をしていたんだもの。訛った感覚を鍛え直して早く体を馴染ませたいのよ。」


出会って日は浅いが、何となく井戸首葡蘭と言う少女の本質が分かった気がする。


コイツはプライドと向上心が人一倍高いのだ。

でなければこんな早朝にストレッチ何てしない。


その向上心の高さには俺も学ぶ所がありそうだ。


「なあ、お前はこれからどうするんだ?」

「どうって?」

「家出して…家に帰る気もないんだろ?その…家庭事情を少し聞いた感じ複雑そうだったし…。行く宛とかあるのか?」


分かりきった質問だが、そう聞かずにはいられなかった。

理由は井戸首が心配だったから。

それと、井戸首を俺の家に招き入れる口実が欲しかった。


俺には井戸首を見付けて助けた責任がある。

井戸首が安心して生活出来るように今後のコイツの人生をサポートする義務が俺にあるのだ。


「別に宛てとか無いわ。でも、野望はある。」

「野望?」

「ビッグになるの。物理的な意味じゃなくて、地位や名誉、名声、お金、権力、全部手に入れて、この国の…いえ、この世の支配者に成りたいの。いや…絶対になるのよ。」


向上心とプライドが高い奴だとは思っていたが野心もかなりのものらしい。


「野心が大きいのは良いが具体的にどうやって成り上がる気だ?」

「攻略者って言う職業が今世間では話題だそうね?」

「ああ、ダンジョンを攻略する職だからな。正に今の時代を象徴する職業だ。」

「なら、私は攻略者になって、そこから世界の支配者に成り上がるわ。」


…そう来たか。

確かに、ギルドとか大きな組織があるそうだし、出来なくは無さそうか?


ギルドの中には土地ごとダンジョンの使用権を買い取って実質的に攻略の権利を独占している所もあるらしいし、やり方次第では攻略者から井戸首の言うビッグな存在に成り上がる事自体は出来そうだ。


正直、こんな如何にも子供の戯言の様な野望を言われても普通は笑い飛ばすと思う。

しかし、井戸首から放たれる気迫は並大抵のものではなく、本当にその野望を実現してしまうのではないかと思わせる何かがあった。


「あんたは何か野望は無いの?」

「俺はねえな。十分金稼いだし、十分強く成れた。これ以上望む物は…平穏な生活以外ない。」

「…そう。野心が無いのね。少し残念。でも、安心しなさい。私の野望が達成した暁にはこの前の借りを返すために、それなりの待遇で配下に加えて上げる。」


それがお礼ね…。

出世払い成らぬ出世支配。

それは果たして借りを返してることになるのか?


「でもまずはこれから泊まる宿を探さないとよね…。」

「それなら俺の家に来いよ。」


良い感じに俺の家に誘えるタイミングが来たのでここぞとばかりに身を乗り出して井戸首を誘う。


「…一度に二つも借りを作るのは私の美学に反するのだけど…。」

「借り何て考えなくて良い。俺がしたくてしてんだ。俺にはお前を助けた責任がある。その責任を俺なりに果たそうとしてあるだけだ。」

「…そう。ならお言葉に甘えさせて貰うわね。」


こうして井戸首は俺の家に来ることになった。

_

__

___

あの後取り敢えず、狐霧さんの家を出て井戸首を連れて俺んに帰ってきた…のだが…。


「へえ…ここが理守さんの家か…。まあまあ広いね!」


何故か帝も着いてきた。


「何でお前も来てんだよ。」

「良いじゃん!僕は理守さんの弟子だよ。弟子が師匠と一緒に暮らすのは普通じゃない?」


何を言ってるんだコイツは?


今まで普通に女子に囲まれて麻痺しがちだけど、俺中身は男だよ?

女の子二人に囲まれての生活は少し刺激が強いかもな…。


「俺、今は女になってるが元は男だから女子との共同生活はハードル高いわ。正直井戸首一人だけで限界。」


「「え?」」


俺の発言に何故か二人は急に声を合わせて驚く。


「理守さんって元々男だったの?」

「私はてっきり男勝りな性格の人なんだと…。え?元男なの?もしかして…それもバグ?」

「あれ言ってなかったか?」


「「うん、聞いてない…。」」


俺としたことが言った様な気がしたが、全く説明してなかったのか…。


「まあ、だからと言って特別説明することもないな。俺はバグで女になった。因みに性自認は男で恋愛対象は女だ。以上。」

「随分軽く流すのね…。」


それ以上に言うことはなにもないからな。

あと説明してないことは多分無いばす。


「まあ、つう訳で帝、お前は俺のキャパ範囲外だ。何か間違いが起きる前に出てけ。」

「間違いが起きても良いから一緒に住もう!」

「お前マジで通報するぞ。」


コイツ以前俺のおっぱいも吸おうとしたよな?

流石にセクハラで訴えたいんだけど…。


一応女同士でもセクハラは適用されるんだぞ。


「通報されても良いから一緒に住もう!」

「頑な過ぎるだろ。どうしてそんなに俺と住みたがる?」

「…それは…今は家に帰りたくないんだよ…。」


コイツもか…。

井戸首の方は理由は分かるが、帝は何だ?

何で家に帰りたくないんだ?


「…どうして家に帰りたくないのよ?」

「それは…実は最近パパとうまく言ってなくて…。」


何か通じる物を感じたのか井戸首から帝に質問が投げ掛けられる。

帝は表情を曇らせてそれに答えた。


…反抗期か?

まあ、このくらいの年齢の女子には良くあることだよな。


…そもそも考えてみれば親との関係が上手くいってる奴が親の会社のネットワークをハッキングするわけないか。


取りあえず帝にも何か事情があるのだろう。

余計に詮索するのも、無理やり帰られすのも憚られる。


「はあ、仕方ない。暫くの間だけだ。うちに泊めてやる。」

「本当?」

「その代わり俺から提示するルールに従う事。」

「ルール?」


俺は帝と井戸首の前に魔力で作り出したスクリーンを映し出して、プレゼン式でルールを開示する。

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ルールその1、お互いのプライベートを尊重する、

ルールその2、家の物を破壊しないこと。

ルールその3、家事を当番制にする。

ルールその4、ダンジョンに挑む際は必ず俺同伴の元で行くこと。

ルールその5、絶対にこのルールを破らないこと。

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「部屋は余ってる物があるから好きに使え。俺からお前達のプライベートは侵害しないからお前達も俺のプライベートを侵害するな。以上、質問あるか?」

「はい!」


帝が元気良く手をあげた。


「何だ?」

「他のルールは分かったけどルールその4は何で理守さんと一緒じゃないと行けないの?」

「一人でダンジョン攻略は危ないからな。暫くお前達の面倒を見る保護者代わりとしてお前達に大きな怪我を負わせるわけにはいかない。」


これに関しては大人としての責任故だ。

こう見えてこの中では最年長だからな。

責任持ってコイツらの面倒を見る義務がある。


「意外とまともな事言うね!理守さんの癖に!」

「…お前マジで叩き出すぞ。」


そんなにこんなで、俺は二人の居候家出少女を家に泊めるのだった。


今ほど女で良かったと思ったことはない。

何せ男のままだったら事案だったからな…。

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