1話 こうして彼女(彼)は全能になった。
2027年。
突如として地球にダンジョンが現れた。
それと同時にある一人の人間を除いて、全人類にステータスと言うものが発現した。
急に現れたダンジョンとステータスを前に人類の反応は様々であった。
混乱する者、ゲームのようだと楽しむ者、現実を受け止めきれず考えるのを止める者。
正に十人十色。
そんな混乱の最中、他の人とは少し違う意味で困惑している男がいた。
その男の名は全堂理守。
今現在、静岡県のとある街で一人暮らしをしている社会人で…。
この世界で唯一ステータスが発現しなかった悲しき人間であり…。
…何故か女になっていた存在である。
「ふえ?」
理守は洗面所の鏡に映る自分の姿に驚愕する。
鏡に写っているのは見るものを魅了する魅惑の輝きを放つ白銀の瞳とサラサラで太陽のように光を反射して輝くオレンジのショートボブの髪を持つ絶世の美女だった。
「なんだこれ!俺…なのか?もしかして何かの病気か?病院とか行った方が良いのか?」
行ったところで医者になんと説明するつもりだと言うのか…そもそも今の状況を説明したところで誰が信じると言うのか…。
その様な事を気にする余裕は今の理守にはない。
ただ今は兎に角混乱を紛らわす為に何か行動を起こさずにはいられなかった。
故に急いで病院へ向かうために家を飛び出す。
しかし、不運な事に理守が家の扉を開けた先には道を塞ぐように大きなダンジョンへの入り口が聳え立っていた。
「何だ?これ…祠?」
目の前のダンジョンの入り口は石造りの高さ10m程の祠の形をしており、理守の家の玄関を完全に塞いでいた。
「何か良く分からねえけど…入ってみるか。」
よく分からないなら、入るべきではないだろう…。しかし、今の理守は不可解な現象が立て続けに起こりすぎて冷静な判断が出来なかった。
そして理守はそのままダンジョンの中へと潜る。
すると…。
「洞窟?いや、迷宮っぽいな…。」
中には薄暗い地下迷宮のような空間が広がっていた。
その空間では頼りになる光源が少なく、何処までも先が見えない薄暗い道が広がっていた。
「…っ!何だ!息が苦しい…おまけに体も重い…!」
このダンジョンが特殊なのか、それとも他のダンジョンも同様なのか、理守がダンジョンに入った瞬間、突然の息苦しさといつもより重くのし掛かる重力が同時に襲ってきた。
「…なんか嫌な予感がする。早く出たほうが…。」
「ブモォー!!」
理守が一度立ち止まり来た道を引き帰そうと振り向いた瞬間、背後から人間の物とは思えない野太い声が響き渡ってきた。
「え?」
後ろを振り向くとそこには人間の胴体に牛の頭部が着いた異形の怪物 ミノタウロスが今にも襲い掛かりそうな体勢で立っていた。
「うわあああ!」
理守は全力で逃げた。
勝てるような相手ではないと、そう判断して。
幸いなことに、ダンジョンにいるモンスターはダンジョン外へは出られないようで、理守は何とか逃げきることが出来た。
「なっなんだったんだ?…そうだ、ニュース。何か取り上げられてるかも…。」
理守はポケットからスマホを取り出してニュースを見る。
するとニュースには以下の情報が載せられていた。
突然世界中に謎の洞窟または祠の形をした石造りの建造物が現れた事。
政府はそれをダンジョンと命名した事。
そして、全人類にステータスと言うものが発現した事。
ステータスはステータスオープンと念じると表示されるそうだ。
しかし…。
「…ステータスオープン。」
何も起こらなかった…。
「なんでだ!俺ステータスないんだけど!詰んだ!俺もスキルとか魔法とか使いたい!」
理守は駄々をこねる子供のように泣き叫んだ。
当然だろう、他の人はステータスが発現しているのにも関わらず、自分だけステータスが無いのだ。
ステータスがなければスキルが使えない、つまり戦えない。
いくら成人男性…いや、今は女性の理守でも絶望するには十分な出来事だった。
しかし、理守は諦めなかった。
諦められなかった。
目の前にダンジョンがあるのなら、自分にだけステータスが発現していなくとも、魔力の様な不可思議が力はあるのではないかと考えた。
そして魔法の様な力をどうにかして出せないか試行錯誤し、やがて…。
ーーービューンッ!!
「え?」
理守の手からビームのような物が発射された。
「今のは…魔法!ステータス無くても使えるのか!」
ここで一つ補足しておこう。
ステータスやスキルとは魔法を発動するのに必要な複雑なプロセスを省略、簡略化して普通の人間でも魔法が使えるようにするための謂わば自転車の補助輪の様なものである。
よって、魔力さえあればステータスやスキルが無くても魔法を使用することは理論上可能である。
しかし、それは補助輪無しで自転車をこぐのとは比べ物にならない程に難易度が高い。
魔法を発動するのに必要なプロセスは…魔力を練る、使う魔法の術式構築、威力調整、照準調整、射出速度調整、そして発射。
これら全ての工程を手動で行わなければならない。
この道を極めるのは至難の業だろう。
しかし…。
「よし!魔法が使えるならこっちのものだ!俺はステータス無しで魔法を極めて最強になってやる!」
理守は楽観的な思考の持ち主であり、魔法と言う存在そのものに大きなモチベーションを持っていた。
故に、理守がステータス無しで魔法を極める道を諦めることは無かった。
そして3年の月日が流れた。
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「遂にここまで来たぜ!ドラゴン!お前をからっとフライにして食ってやる!」
3年間、理守は自宅の玄関に出現したダンジョンにソロで挑み続けて血の滲む様な努力を重ねて成長していた。
理守本人は気付いてないが、そのダンジョンの攻略難易度はランクEX。
世界最高難易度である。
そんな最恐のダンジョンの最下層に待ち受ける最強のダンジョンボス黒龍を前に理守は不適切な笑みを浮かべている。
そして、数秒間の沈黙の末に遂に理守が動く。
掌を黒龍に向け、極太のビームを放ち一瞬で黒龍の体を消し炭にしてしまった。
「あっ、炭になったら、フライに出来ねえじゃん。リバースリバースっと。」
その瞬間、消し炭になった黒龍の体が元に戻り、生き返る。
「ガウ?!」
「よし魔法だと消し炭になるから拳で行こう!」
こうして世界最強の黒龍は二度も殺され、フライにして食われるのだった。
「これが本当のドラゴンフライなんてな!デュエヘヘヘ!」
ランク
EX 強い
S
A
B 中堅
C
D 弱い




