17 主人公
またもや遅刻・・・・・申し訳ございません。
難産でした
嫌な予感はするけど、それを理由に拒否することはできない。
何度見ても俺のFBOの知識にはない2人の少女、そこに嫌な予感を感じつつも、粛々と臨検は進み。
「臨検異常なし!このまま城門へ誘導します!」
「はい、ご苦労さん。聞いた通りだ!警戒体制は維持!孤児の受け入れ準備にかかってくれ」
一時間ほどで、臨検は完了。
結果は良好だと、臨検に行った御庭番衆の一人が戻って来て報告してくれた。
イングリットとネルはそのまま同行。
城門までの護衛と警戒をかって出てくれた。
「「「「「はっ!!」」」」」
臨検に異常なし、すなわちあれは正式な神殿からの孤児の輸送隊となった。
そうなれば、こっちは受け入れ拒否はできないので、警戒態勢こそ敷くが、そのあとは受け入れ準備になる。
「ジンクさん、先方との書類のやり取りは、まだエスメラルダが戻ってきていないので主導でお願いします」
「わかったよ。しかし、レベルアップっていうのは良いものだね。この歳になって全力で走っても息切れ一つしないよ」
「その分働ける時間が増えましたけどね」
「ハハハハ!引退はまだ先ってことかな?それじゃ、久しぶりにデントの顔でも見ようか」
俺、アミナ、ジンクさんの三人で護衛を引き連れて城門に降るために昇降機を目指す。
この後のことを考えると少々気が重いけど、それでもやらないという選択肢はない。
ジンクさんの笑い声のおかげで今この場の雰囲気はいい。
できればこのまま何事もなくと行きたいところだけど、そうはならないだろうという予感はあった。
昇降機に入って、そのまま一階まで降り、昇降機から出たら当番の御庭番衆たちが整列して待ってくれている。
「さてさて、何が出るかな」
もう間もなく、この巨大な城門が開き、そしてその先にはFBOでは主人公として登場していた人物が現れる。
「商隊つきました!」
「開門!」
「はっ!開門!開門!!」
その出会いに対して、楽しみ三割、不安三割、警戒四割という気持ちで挑み、ゆっくりと開く城門を見る。
その先にいるのは冒険者の集団。
神殿からの依頼ということで、それ相応のランクの護衛が雇われている。
前に来た神殿騎士とは違い、彼らの装備に統一性はない。
けれど、全員がベテランで固められていて、真面目に仕事をこなしてきたのはうかがえる。
「ようこそ、フライハイトへ。自分がこの街の長のリベルタです。孤児たちの護衛ご苦労様です」
「今回の護衛隊の責任者を任せられちまった。デントっていいますわ。冒険者ランクはB」
そしてそんな集団の先頭に立っていたのは顔なじみの冒険者。
俺が一歩前に出て歩き出すのに一歩遅れて、彼も頭を掻きながら歩き出し、互いに握手できる距離まで進むと形式的な挨拶を交わす。
「久しぶりだな」
「お久しぶりです。デントさん。Bランクに昇格おめでとうございます」
「よしてくれ、こんな立派な街の長にまで出世したお前に言われると、俺の昇格なんて大したことじゃねぇよ」
冒険者故に、粗野な口調。
それに目くじらを立てる気はない。
旧知の仲というのもあるし、世間一般的に冒険者に貴族のような礼儀作法を求める方が間違っているという風潮があるくらいだ。
「ほい、これが依頼書だ。そっちの警備にも見せたがここにサインをくれ」
「ジンクさん」
「うん、確認させてもらうよ。久しぶりだねデント」
「ああ、お前が王都から出ていくって言った時以来か。羨ましいくらいに元気そうだな」
そんな冒険者のやり取りは、仕事が終わればそれでさようならというドライな関係だ。
人によっては雇用主と仲良くしようとする輩もいるが、こうやって世間話をする方が珍しい。
右後ろに立っていたジンクさんに依頼書を受け取ってもらうように頼み、旧知の仲ということで依頼書を確認しながら世間話に入る。
「ああ、いい生活を送らせてもらっているよ」
「そうみたいだな。しかもお前・・・・・なんか痩せたな。いや、締まったって言った方がいいか?」
「最近朝のランニングが趣味でね。肉屋の店主を覚えているか?」
「ああ、あの禿げ面の」
「彼とも一緒に走っているよ。おかげでお腹もこの前見たら六つに割れてた」
「ウソだろ!?」
雰囲気を柔らかくして、話しやすい場を作るというのもあるが、お互いの距離感の再確認というのもある。
こっちが冗談を振って、それに乗ってくるか否かで相手がどういうスタンスで来ているかを判断しやすくする。
互いに知っている人物で盛り上がれるというのは、まだデントさんがジンクさんのことを友と認識している証左だ。
「デント、君は少し瘦せたな。そんなに仕事が大変なのか?」
「大変もクソもねぇよ。Bランクに上がった途端に、色々と面倒事が増えてな。それのせいで酒を飲む暇もないんだよ」
だから、ある程度の事情も話してくれる。
ジンクさんがちらっと、背後を流すように見てこっちに注目しているのを確認して、ふっと苦笑を漏らすと。
「今回の仕事も、俺がここの街の長と知り合いだっていうことで責任者に指名されたんだぜ?一回か二回一緒に仕事しただけだっていうのに、覚えている奴は覚えているんだな」
肩をすくめて、今回の護衛隊の責任者になった理由を明かす。
「大変だな。うん、書類の方は問題ないね。皆!こっちの名簿と照らし合わせて孤児の受け入れ準備を頼む!」
「「「「「はっ!!」」」」」
「お前が、警備の人間を使えるってことはそれなりの地位にいるってことか?」
「そうだね、この街の財布の紐をある程度開閉できる程度には信頼をしてもらっているね」
「マジか」
その間にも書類を読み進めて、書式と印に問題が無いことを確認したら、合図を送り御庭番衆に動いてもらい、もう一度孤児の確認を始める。
「あとは、孤児の人数を確認して書類と一致すればデントたちの仕事は完了だ。それで?冒険者ギルドからはどういう用件で来てるのかな?」
そしてそこまで済めば、冒険者の仕事も終わりが見える。
そうなれば、あとはこの城門付近で食料を補給し、休息したら帰るだけになる。
しかし、この護衛任務を神殿から冒険者ギルドが受けて、その責任者にわざわざデントさんを選んだということは、もちろん他の用事もあるということだ。
「昔馴染みの伝手を辿るようで悪いが、冒険者ギルド本部からお手紙だ」
俺もジンクさんもそれを理解しているとわかって、デントさんは苦笑しながら懐から厳重に保管していた手紙を取り出して、ジンクさんに渡した。
「中身に関しては聞いているかい?」
「冒険者ギルドの斡旋とだけ、うちのボスからの予想じゃ。本部のお偉いさんが来てもいいかというお伺いも入ってるんじゃないか?」
「なるほど」
それを受け取ったジンクさんは、俺に視線で開けるかと聞いて来たので俺は頷き、それを促す。
ジンクさんは、腰のポーチからペーパーナイフを取り出し、冒険者ギルドが使える中でも最上位の封蝋、ドラゴンと五本の剣が描かれた封蝋を切り、中身を取り出す。
「・・・・・うん、概ねデントのいう通りの内容だね。リベルタ君。確認してくれ」
「はい」
そして、一読で読み切り、そのまま俺に渡してきたので俺もそれを受け取ると。
確かにデントさんの言っている通りの内容がつらつらと書かれている。
「冒険者ギルドとしては、リベルタたちと仲良くしておきたいってところだ。実際、そうした方がうちとしては儲け話が多くなるだろうってこともあるだろうしな」
「受けるメリットがうちにもないわけじゃない。だが、冒険者には粗野な人間も多い。治安という面で、まだ受け入れることはできないね」
「わかってるよ。俺たちが上品な人間だとは口が裂けても言えねぇ」
最後に、どうぞよろしくと書かれた手紙を読み切り、綺麗に折りたたんでジンクさんに返す。
「内容は了解しました。どちらにしても一度話してみないと何とも言えないので、返事の手紙を書きます。デントさんと冒険者の人たちには宿を用意しますので、二日ほど滞在してもらってから帰るという流れで問題ないですか?」
「ああ、そっちでも話し合う必要があるだろうしな。問題ない」
そのタイミングで2人の会話は止まり、俺を見て来たので手紙の返事を書くための猶予を貰う。
実際、エスメラルダやジンクさん、そしてバミューダと話し合う必要がある。
冒険者ギルドの協力はそれなりに有益だが、不特定多数の冒険者をフライハイトに入れるというデメリットもあるし、ここら周囲の狩場に冒険者が常駐することで、監視網の運用が難しくなるという点も懸念される。
その点を踏まえて、どうするか決定しないといけない。
「あー、このタイミングで聞くのもなんだけどよ」
そんな大人の事情を加味したスケジュールを決定したタイミングで、デントさんが頭を掻き、申し訳なさそうにした。
「この街の住人になる条件てどんなのがあるか教えてもらうことってできるか?」
それは数多のこの街の情報を欲する諜報員が聞きたくても聞けなかった情報だ。
商人ギルドから再三にわたり、商人ギルドの設置を要請されているが、時期じゃないと突っぱね。
移民を送りたいという貴族を突っぱねてきた。
それだけこの街に関心が集まっているいうことだ。
そしてそういう輩はだいたい遠まわしに聞き出そうとしたり、諜報員を使ったりするからこっちも素直に教えたくない。
公爵閣下や国王陛下は直接俺に聞いて来たので、一応条件というか受け入れる人を選ぶ基準に関しては伝えてある。
「だれか、この街に移民したいんですか?」
「いや、まぁ、な。冒険者ギルドの中でも結構噂になっててよ。この街ならもっといい仕事にありつけるんじゃないかって。俺がリベルタの知り合いってことで何が何でも聞いて来いって言われてよ」
そんな状況で、真正面から聞いてくるのは中々新鮮だ。
ほとほと困ったという表情を浮かべるくらいに、この護衛の任務に就く前にどれだけの人に念押しされたのかというのが察せる。
「あとは、今回来た若い奴も気になってるみたいでな」
その苦労に免じて、教えようかなと思ったタイミングで出てきた話題に俺は一瞬だけど、体をピタリと止めてしまった。
「若いやつ、そう言えばベテランで固めているのに珍しいですね。新人みたいな人を連れているなんて」
「ああ、あいつらな。中々腕が良くてな。駆け出しの割にはしっかりしているし、学ぶ姿勢もある。だから今回の護衛の任務にも参加させたんだ」
「へぇ、そんなに優秀なんですね」
護衛の中で若いのは、主人公たちだけ。
そして、神殿からの依頼ということは信頼が大事なはず。
そんなクエストに駆け出しと評されるような冒険者を連れてくることはまずない。
だが、ここにいる。
「まぁな。期待の新人ってやつだ」
それだけ実力があるのか、それとも主人公補正なのか。
デントさんが素直に褒めているところを見る限り、人格面では問題ないということか?
主人公とはプレイヤーの写し鏡だ。
デフォルトネームやデフォルトの姿があっても中身にデフォルトはない。
主人公イコールプレイヤーだ。
内面は全て操作する人が反映されるから、主人公がどんな性格をしているかなんて俺にはわからない。
「なるほど、ちょっと気になりますね。紹介とかってしてもらってもいいですか?」
なので、直接会って確認するほかない。
さてさて、どんな人たちなのかね。




