第二話:彼女は俺を振り回し、俺は周りを振り回す(中)
登場する主要云々
トリス・プラス:三人編成チーム。一章四話初出。全員でファイクルに嫌がらせ。
ダブルヘッド :十人編成チーム。ファイクルは兄貴分のように慕う。
乱舞シュート :六人編成チーム。遠距離攻撃専門。二章七話初出。副リーダーのジャバーがファイクルに絡み、リーダーのポイルが抑える。今回、未登場の四人中二人も依頼受領。
眠り姫たち :五人編成チーム。二章四話にメンバー初出でファイクルに絡む。
セイザー :別名姫。二章八話初出。既出の絡んだメンバーを諫める。
ニール :二章十二話初出。セイザーと共に、絡んだお詫びにミリアを女子会に誘う。
スバータ :今回初出。なのに他二名とともに留守。
そうか……!これなら行ける!
「ミリア、俺を広げて地面に置いてその上に座れ!これなら時間をかけずに助っ人を呼べる!」
「一気に下まで滑り降りる! 速度が落ちる辺りまでここから離れたら雪崩は起きない。音筒使って宿まで戻れ! 助っ人頼んだら音筒で前線まで移動! 音はこっちに来ないはずだからな! これしかねぇ! 説得以外はそんなに時間はかからねぇはずだ!」
「……わかった……乗ればいいのね?」
「乗ったら下まで猛スピードで止まらねーぞ! ミリアが俺から落ちたら全滅必至! 乗ってるだ
けだから楽だと思うな!」
「楽なんて思えるわけないでしょ! スタンこそスピード出せるの? 遅くなっても全滅でしょ!」
「忘れたか? ミスラス言ってたぜ。俺は切れない濡れない破れない。そして撥水処理もされてたはず! 絶対遅くはならないはずだ!」
ドヤ顔も決まった! ツッコミが来る前にいくぜ!
「みんな、待っててね!助け呼んでくるから!」
「頼む!」
「うむ!」
「なるべく早くな!」
「そっちも気を付けて!」
俺に乗った後、ミリアが雪面を蹴る。
思った通り大成功! 一気にトップスピードだ! 山の斜面からとにかく遠ざかれ!
「なっ、なんでこんなに早いの!」
「撥水してるんなら、雪や氷と俺の間に水の膜がいつもある! 氷は乾いてるとくっつくんだよ。だがいつも濡れてるとツルツル滑る。いいか、俺を絶対離すなよ!」
風圧でミリアが苦しい表情。しかしスピードを緩めるわけにはいかない。
二分くらいたったか、あるいはもっとかかったか。時間の長短の判断ができない。目が回る。防寒具なしでは流石に寒い。破れなくても痛みがひどい。だが馬車の停車場が目の前。ここまで来れば雪崩の心配はない!
「ミリア!音筒に戻して宿まで高速で移動する音を出せ!出来れば窓口に届かせろ!」
返事する間も惜しみ、ミリアは俺を振り上げる。
「我を心の安らぐあの地まで、地上に存在するものよりも、天空に存在するものよりも素早く!」
力の限り振り下ろす!
「移 送 し ろ ! 」
びゅうぅぅおおおおぉぉぉぉぉ!!
俺の体から、恐らく史上類を見ないと思われるほどの空気を裂く音!
風圧、重力に耐えかねて目をつぶる。
すぐにその圧力が俺の体から消える。目を開くと目の前に唖然とするヨッカー。
「着いたよ!窓口前!」
「誰に頼む? 敵は五人だ。あと七人くらいほしい! 龍のことは言うな! 眉唾に思われる! 借りを作っても構わん。急げ!」
俺の声がバレても構わん! それほどの緊急事態!
「ミ……ミリア……お前さん……その紙……」
「ごめんヨッカーさん、今それどころじゃないの! 依頼お願い! 腕利きの七……十人くらい助っ人が欲しいの!」
「慌ててどうしたの? ミリアちゃん。顔色悪いわよ?」
「姫だ! こいつに頼もう!」
「う、うん!」
「な、何よ、紙がしゃべった?」
「お願いっ!トウジを、みんなを助けて!」
ミリアの絶叫が、ロビーにいる全員の耳に届く。
「どした? ミリア。姫、なんかあったのか?」
「あ、パイルブ……。わ、わたしはよくわかんないんだけど……」
「ミリア! 俺を広げろ! 映写する!」
「うん!」
「紙がしゃべった?しかも目までついてる?!」
「俺のことはもうバレても構わん!それよりトウジたちの救護が先だ!俺の体にミリアと俺が目にした光景を映せ!」
「なんかいろいろ……ついていけないんだが……。……なんだこれ……冬の映像?」
「これ、遠風山脈の入り口だな。トウジたちか?」
「お、パープル、いたのか」
「何この黒づくめ」
トリスプラスのペイラーだったか? とにかく誰でもいい。頭数多めでもファイクルの財宝がありゃ何とかなるはず!
「パープル、こいつらやべえぞ。息の根止めにきてやがる」
「俺らで何とかなる相手か? カーキー」
「雪山だから俺の本領は発揮できねぇ。雪崩が怖えぇからな……四人かよ。俺ら七人でも相手になるかわかんねぇ」
「パープルとやら! 俺らからの依頼はファイヤー・クラックルのそこからの全員撤退と全員救護だ!奴らの殲滅じゃねぇ! 依頼は引き受け人の言い値だ!」
「紙しゃべった? まさかこれ……術具か?!」
ロビーの雰囲気が緊張と興奮に変わる。だが今は問答してる場合じゃねぇ!
「お願いっ!みんなを助けて!」
「へえぇ、術具かぁ。しかも助っ人は選ばねぇらしいなぁ?」
「乱舞か。お前も一枚噛むか? 余計なトラブルは避けてほしいが、力になることは間違いないな」
「へへ、わかってんじゃーん。さすがスピッツ。報酬はこちらの言い値でいいんだよな?嬢ちゃんよぉ」
「無論だ!ただし条件は全員撤退と完全治癒が絶対!即答できんならこっちから拒否だ」
「……この紙うるせぇなぁ。だがノった!」
「リーダー差し置いて勝手に決めるな! だが乱舞が全員揃うの待ってらんねぇぞ。ここにいるのは?」
「俺ら含めて四人だな、リーダー」
「乱舞シュートはチームに報酬はいらん。この四人でいい」
「報酬のことは後回し。ダブルヘッド全員揃ってるな?! 出るぞ! ミリアからの依頼引き受ける!」
「トリス・プラスの三人もノッていいわよね?」
「すると十七人か?俺たちパレットは邪魔になりそうな戦場だ。黒づくめについて調査してみるわ」
「姫……この戦場で撤退戦なら私と姫だけでも」
「そうね。スバータ、他と一緒にここで待機。救護の準備してくれる?」
「了解です」
「ありがとうございます! スタン! 乱舞四人、ヘッド十人、トリス三人、姫たちは二人の十九人一斉移動!」
「了解だ! 全員外に! そっから現場に移動!」
「十九人って多くねぇ?相手は四人だろ?」
「あの相手じゃ、俺らも全員生還する条件で、ギリギリ何とかできる人数だ。やつら何者だ?」
ロビーにいる全員の視線を浴びているのがわかる。だが気にしている場合ではない。全員玄関の外に出る。
「我と共に移動を望みしこの者を、何よりも早く再びかの地へ」
「移 送 し ろ ! 」
びゅうぅぅおおおおぉぉぉぉぉ!!




