第一話:彼女は俺を振り回し、俺は周りを振り回す(上)
すいません。この話投稿した時点で書き忘れた文章があり、午前1時23分頃付け足しました。
準備をしっかり整えて、遠風山脈へ二度目のアタックをかける日の早朝。
全員体調、装備万全。
「今日もなるべく危険なことは避けたい。だが目的は濁龍を見ることじゃなく、黒装束の確認を目的とする。当然前回よりかなり危険なことになるはずだ」
一同頷く。
「全員生還を第一とする。助けを求めることが必要になることもある。即時依頼を出せるなら出した者にファイクルの財宝を扱う権利を託す。その際には助っ人も全員生還を第一の目的とする」
全員無言で頷く。
「手順を言う。俺らの格好は見るからに討伐、最悪戦争だ。だがそれをさらに上からもこもこで覆って隠している。つまり住民の何かの採集に誤魔化せる格好でもある。黒装束からすれば、鎧姿よりも警戒心は薄らぐだろう。その隙をついて罠を偵察。鳴子があったらその場所とない場所を確認。マイト、頼むぞ」
「了解!」
「当然異様な雰囲気が我々から発するかもしれん。その異変に気づかれたらまずい。そこら辺の警戒をさっちん、頼む」
「わかった」
「鳴子のないところから鳴子の音を出せるように、スタン、ミリア、頼むぞ」
「応!」
「うん、まかせて」
「こちらから黒装束を視認できたら、ランス、警戒頼む」
「了解だ」
「鳴子が鳴ったら黒装束も動くだろう。気配の発生場所がアジトになると思う。出現数と場所のマークもさっちん、頼むぞ」
「うん」
「両方確実に把握したら即時撤退。そのために狭い範囲で集合すること。それから即時撤退だ。これもスタンとミリアのコンビで頼む」
「あぁ、わかった」
「それもまかせて」
「見つかったらどうするか、だが」
考えたくはないが、対策は必要だ。
「ランスの防戦でその後ろに全員守られる形にする。そのままできれば即時撤退」
「奴らの腕前が上回る可能性もあるが?」
「異空間倉庫を使っても構わない。とにかく後退しつつ防戦。これしかない」
緊張感が強くなる。
「肝心なのは、黒装束の存在は俺たちとミスラスにしかわからない。実際に目にしたのは俺たちだけということだ。そして濁龍退治の邪魔になることも確かだ。でなきゃ殺気を漂わすこと自体ないんだからな」
全員の気がさらに引き締まる。
「そろそろ時間だ。いくぞ」
普段の和やかな雰囲気がどこにもない。俺ですら、ミリアのことを気にかける余裕がない。
馬車の外は、前回と同じようにのんびりとした風景。しかし今回は全く目に入らない。
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前回同様、昼前に到着。
「出発前に確認した通り、まずさっちん、頼む」
「……前回と位置は違うけど、人数は同じ五人。でも気配の感じが全員違う。最低十人いるってことだね」
「向こうからはこちらには」
「全く気付いてない。山道を登って……濁龍の全貌が確認できそうな辺りにアジトがありそう。でも遠いところにも出張っているなら、アジトに全員いるとは限らないね」
「マイト、お前の方は?」
「鳴子の仕掛けは確認。ない位置も確認できた」
「これ以上近づけないならここで仕掛けるか?」
「そうだね。ミリア、スタン、頼むね」
「音の出現場所は、ミリアが今見てる方向で……山頂付近なら全体に響く。風も吹いてるようだからさらに紛らわすことができそうだ」
「ミリア、できるか?」
「うん、大丈夫!」
そして唱え始め、情報戦が始まるってわけだ。
「何もなき地よりそにあるかが如く、同じものより発する音ぞ」
「響 き 渡 れ っ 」
ミリアが小さく俺を振る。
カコォーン カラカラ カコォーーーン
俺から発する音は、俺からではなくどこからか出るような音。案の定、さっちんが把握した気配は戸惑っているそうだ。
「山を駆け回る気配が十。アジトから出てくる気配が十四。アジトに滞在する気配・・・・・・隠してる気配も……なしっ。黒装束全員で二十四確定!」
「黒装束二十四。把握。撤退いくぞ」
「やべぇ。近くの一人がこっち確認!」
一気に形勢が変わる。まずい!
「彼らから発するすべての音を、あらゆる自然の理の力にて」
ミリアが一人で動く? 何する気だ?
「打 ち 消 せ!」
ビュブォオオオオオォォオオオオオ
俺の体から強い風の吹く音が出る。
これならあらゆる音声もわからない。狼煙も上手く上がらない。やるじゃねーか!
「ダメだ! 防戦に入る! 接近する数五のうち四! 一つはこちらに全く気付かず! 全員俺の後ろに回れ!」
「ミリア! スタン! 助っ人頼む! 条件は全員生還と完全治癒だ! 報酬はお前らに託す! 行けっ! ランスは防戦しながら撤退! 残りはランスの補助!」
「っしゃあ!」
「了解!」
「そんな、みんな!」
なんてこった! 即時行動が必須なのに、肝心のミリアが動かない。動いてくれない。まずい!
「お前なんざそばにいたって力になれないってこと、あんとき俺にバレちまっただろうが!今更取り繕ってんじゃねぇ!」
「な、何を……」
「お前一人じゃ何にもできねぇ! じゃあお前が力を発揮して、あいつらの役に立てられることは何だ? 俺を振るうことだろうが! 俺を使って何とかすることだろうが! そしてリーダーは助っ人を呼べっつったんだ! それが今の俺たちに最大の力なんだよ!」
「で……でも……」
「急げば五分くらいで戻れる! ランスたちだってそれくらいは粘れる! あいつらは俺らのその働きを信頼してくれてる! お前は恩人しか思えないっつってたけどな! あいつらはお前を仲間だと思ってっから、それを信じて託したんだよ! お前はそれを裏切ることを今してるんだよ!」
「う……」
「お前は! お前が一番欲しかった仲間を! 自分から捨てる気か!」
「みんなだって、大切な仲間だよっ!」
俺を力いっぱい握りしめる。
「まずい!止まれ、ミリア!」
「何よ!助けに行くんでしょ!」
「ここで音筒使って高速移動始めたら……雪崩が起きてファイクル全滅するぞ!」
「え……!」
失念していた。打つ手はもうないのか?!
修羅場をうまく書ききれますように……




