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別世界でも誰かに振り回されている件  作者: 網野ホウ
第二章 幻獣たちは町を、呪いは俺たちを振り回していた
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第三話:龍は呪いで俺たちを振り回していた

「……濁龍の動き始めは地震か何かだと思われたようです。その名の通りまるで龍……。手足

で地面にある物を踏みつぶす。しかしそれ以上に翼を動かすことで起きる風圧での被害が多く、口からの火や咆哮による被害もありました」


「それでよく短い期間で立ち直ったな」


「麓に向かって移動したようですが、その辺りからは動かなかったのです。それと公的ではありませんでしたが、他国からの冒険者たちの援軍もありました。しかし前線に出た者たちのほとんどの命が散ってしまいましたが……」


「だが濁龍とやらもいつまでも活動はできなかったと」

「はい。大勢で攻撃に出るより、特定の者に能力増幅と防御、補助の術を重ねて隙を作り、先ほどの策を実行したのですが……」


「その特定の者ってのがミリアの両親 というわけか」

「はい。ほかにも数名がサポートのために前線に赴きました。この者たちもその一組です。濁龍は最後まで抵抗してきました。苦し紛れの無駄な抵抗のようでしたが、最後一撃はその二人への物理的ダメージばかりでなく、彼らの縁ある者にも影響を及ぼす呪いの効果もあったようです。つまり攻撃目標のミリアの両親を媒体とした、縁というものを伝導してミリアに到達した呪いです。実際ミリア本人は前線よりなるべく遠い、町中の避難場所にいたわけですから」


 ミリアは思い切り驚いた顔をしている。

「わ……わたし……呪いにかかってたの?」

 本人に自覚なしかよ!

「でもお前、この町で自分の居場所がないとか言ってたじゃねーか」

「みんなわたしを毛嫌いしてるだけだと思ってた・・・・・・」

 やれやれ、のん気なものだ。


「知らなかった……」

「マジかよ」

 お前らも知らんかったんか!

 

「呪いをかけた方法は不明ですが、その内容は安住の場を与えない事というのはわかりました。それと、術者が死んでもなお術の効果が残ることはほぼありません。つまり濁龍を殲滅すれば万事解決というわけです」


 安住の地がない、か。確かに言い換えればミリアの実感したことと一致する。そして解呪の件も話を聞けば単純明快だ。余計なことをせず、両親の仇を取る。でもそれが成されていないということがやっかいだ。


「あの質量、そして秘められた魔力の類。眠ったまま殲滅できれば問題ないのですが、絶命するまで時間がかかるなら、そこでも犠牲は出るでしょう。その間も呪いは持続していくはずです。ただ……」


「ただ?」


 若干空気が切り替わる。

「濁龍の活動停止のきっかけはその2人であることは全く知られてないわけではありません。それゆえその効果は穏やかなままで済んでいるのでしょう。なんせこの町の大恩人とそのお嬢さんですから」


「だがミリアにその我慢を強いるつもりか?町の平安と呪いの持続を天秤に量って」

 肯定する答えなら軽蔑すべき世界一の錬金術師ってわけだ。だがその返事は。


「そんな考えは毛頭ありません。ですが討伐する方法が浮かばないのも事実。確実に仕留められる方法が見つかったら即座に動くつもりですが」


 まぁそうだろうな。


「ミリアが受け入れてもらえない原因は濁龍にあることがわかっただけでも収穫だ。ぼちぼち情報を仕入れながらこの町のことも知っていくさ。貴重な時間をありがとな。邪魔したな」


「いえ、他に何かありましたらなんなりと」

「すまなかったなミスラス。俺らじゃ知らないことがあったりするから」

「知りたいことがあったら一々聞きに来るんじゃなく、聞きたいことをまとめてから来るといい。私もいつもここにいるとは限らないしな」


 玄関まで見送ってくれるミスラスが思いついたように声を掛ける。

「足を運んだら不在だった なんてことがあるかもしれん。メモでも残しておいてくれ。私の方から宿に向かおう。お前たちの方で不在なら、宿の者たちが事情を知ってるだろうから伝言を頼んでおく。行き違いも少なくなるだろう」


「じゃあこの件に限らず、俺らが連絡とるときは今後そうさせてもらうわ。気ぃ遣ってくれてありがとな」



「そうだ。一つ依頼を頼みたいことがあったんだ」

「お、ミスラスからの依頼は久しぶりだな。どんなんだ?」

「雪綿、知ってるな?」

「豪雪地帯にしか生息してない小動物だな。それが?」

「その抜け毛を200バレンほど手に入れたい。簡単に手に入るものなら私が採りに行くのだが、レアというほどのものではないが簡単に見つけられるものでもない上量が多いのでな」

 またわかんない言葉が出てきたな。バレン?後で聞かなきゃな。


「ひょっとして、もう防寒具作るの?」

「あぁ、だが改良もしていきたいからかなり多めに欲しくてな。報酬は次の白の季節を楽に過ごせる雪綿毛製の衣類を、スタンの分も含めたメンバー全員分の無償提供でどうだ」


「そりゃ助かる。でもそれってさ……」

「その通り。物資に余裕があったらスタンに濁龍の氷漬けされた姿を見てもらえ。ちなみに依頼の期限は半年くらいでも構わんぞ」


 ミスラスに見送られながら宿に戻る。


 にしても、呪いなんて初めて出てきたな。本人が気にしてなくても何とかしなきゃまずかろうよ。


「呪いがかかってるなんて……信じられない……。体調不良とか全然なかったし」

 そりゃあれだけ食えて普段から元気なら考えられねぇわな。


「でも思ったより単純な話でよかった。話聞いているうちに、濁龍打倒並みの難易度の作戦がほかにも必要なのかって心配もあったからな」


 宿に入る直前、さっちんが立ち止まってミリアに警戒を促す。

「ミリア、至急スタンとホルダーをローブの内側に締め直して。何も聞かずに大至急」


 何かを察知したミリアはその指示に従うのだが、俺が外の様子を伺えなくなる。

「スタンも何も言わずあたしに従って」


 何か切羽詰まった事情があるようだ。ミリアは速やかにホルダーを締め直し、俺は視界を遮られる。全員何事もなかったかのように宿に入った。


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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。
勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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