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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第七章 覚醒者育成学院・青春編

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第57話 魔のドッヂボール

「くっはぁ〜〜……食った食った!」


 昼食を食べ終えた頃には、草原全体がすっかり穏やかな空気に包まれていた。


 ライオスが、満足そうにお腹を擦りながら草原へ寝転がる。


「のどかだなぁ〜」


 俺もシートに座ったまま、午後の風を全身で浴びていた。


 初夏の日差しは暑いものの、高原であるため比較的涼しく心地よい。


「他のクラスも、かなり盛り上がってるね」


 視線の先では、低級クラスや中級クラスの生徒たちが集まって遊んでいたり、談笑していたりしていた。まさに、親睦会といった雰囲気だ。


 そんな中、


「テンにぃ〜!」


 と、聞き慣れた声が遠くから飛んでくる。


 振り返ると、こちらへ手を振りながら歩いてくる集団が見えた。


「お、ミリアじゃないか」


 見ると、ミリアがこっちに向かって走ってきている。その後ろには、マヨ、カタルシア、そして見慣れない少女が2人いた。


 1人は長い桃色の髪を風に揺らす、どこか気品のある少女。もう1人は茶髪の活発そうな少女だった。


「お隣、よろしいですか?」


 カタルシアが笑顔で聞いてくる。


「別にいいぞ」


「ありがとうございます」


 マヨたちはそのまま自然にシートの近くへ腰を下ろした。


「なんだ、知り合いか?」


 ライオスが不思議そうに尋ねる。


「俺の冒険者パーティのメンバーだよ。そこの2人は知らないけど……」


「お前、ハーレムじゃねぇか!」


「いや、そんなんじゃねぇよ」


 そんな会話をしていると、桃色髪の少女が軽く会釈した。


「初めまして。私はアスカです」


 落ち着いた声。育ちの良さが滲み出ている。


「メイだよー! よろしくね!」


 もう1人の少女――メイも明るく笑った。


「お、おう。オレはライオスだ!」


「アルトです」


「カイスです。よろしく」


 それぞれ軽く自己紹介を交わす。


 その流れのまま、自然と雑談が始まった。


「アスカさんって、確か公爵家の令嬢でしたよね? すごい有名人じゃないですか」


 カイスが思い出したように口を開く。


「おぉ! さっきお前が言っていた貴族の御令嬢か!」


「すごい……あまり粗相のないようにしないと。特にライオス」


 みんなの反応に、アスカは微笑むと、


「ふふっ、でも貴方たちの目の前にはもっとすごい人がいるじゃない」


 と言って、視線をマヨに向けた。


「マヨちゃんは、ミルキーウェイ皇国の第一皇女なのよ」


 それからふと、アスカがそんなことを口にする。


「……ん?」


 ライオスたちが同時に固まった。


「え、皇女? ん? ってことは、テンコお前!」


「皇女様の従者なのか!?」


 アルトが目を瞬かせる。


「え、あぁ、うん。そうだよ」


(普通に忘れてたけど、そういやコイツ皇族だったわ)

 

 俺はあっさりとそう答える。一瞬の沈黙。


 そして――


「はぁぁぁ!?!?」


 ライオスの叫び声が草原に響いた。


「マジかよ!? あの大陸一の帝国の皇女とその従者!?」


「そう言えばウワサで聞いたことがある。普段表に出ないで有名な皇女が、従者と共に世界を巡る旅に出たと……まさか、それが君たちなのか!?」


 ライオスとアルトは酷く動揺している。


「うん! テンにぃはすごいんだよ!」


 ミリアは無邪気に答えた。


「ハハハ……」


 カイスは苦笑しながら額を押さえる。


「いや……確かに、雰囲気は普通じゃなかったけど……」

 

 そんな中、ライオスは一息つくと、


「……なるほどな!!」


 と、大きくうなずいた。


「いや、めちゃくちゃ納得した! そりゃ強いわけだぜ!」


「それで納得するのかよ……」


 カイスも小さく笑った。


「ま、まぁ。この学院、貴族や王族も珍しくないからね。にしても、限度があるけど」


「それもそうか……」


 俺は苦笑いしながら肩をすくめた。




 それからしばらく雑談していると、メイが周囲を見回しながら声を上げる。


「あ、なんか向こう騒がしくない?」


 その言葉につられて視線を向けると、草原の中央付近に教師たちが集まっていた。


 そして、そのうちの一人が魔法で声を拡張しながら叫ぶ。


「これより、新入生交流競技を開始する!!」


 その瞬間、周囲が一気にざわめいた。


「競技内容は――ドッヂボールだ!」


「……は?」


 俺は思わず間の抜けた声を漏らした。元世界の競技が、急に出てきたからだ。


「競技大会か! 面白そうだな!」


「スポーツは交流の醍醐味ね」


 みんなは乗り気の様子。


 やがて、草原の中央に作られた特設コートの周囲に、生徒たちが自然と集まり始めていた。


 コートは端から端まで100m近くあり、かなり大きい。


 それから、みんなが集まったところでチーム分けがされた。力の関係か、低級から上級と、超級・天星級同士でランダムにチームを作られる。


 13人1組で計7チームだ。


「それでは、赤チーム対緑チームの第一試合を開始する!」


 やがて、教師の声が響く。


 コートの左右に、それぞれのチームが並ぶ。


 こちら――緑チームは、俺、アルト、メイ、カタルシア、そして他数名。


 対する相手側には――


「よぉぉし!! 絶対勝つぞぉ!!」


 燃え上がるように拳を突き上げるライオス。


「テンにぃ! 本気で行くからねー!」


 元気よく手を振るミリア。


 そんな中、教師が改めてルール確認を始めた。


「能力使用は禁止。使用可能なのは天賦力のみだ。身体強化、属性付与、防御強化までは許可する!」


 教師の言葉に、生徒たちはそれぞれうなずく。


「よし、それでは――始め!!」


 開始の合図。ボールが高く上げられる。その直後。


「うおぉぉぉぉッ!!」


 ライオスが地面を蹴った。


「高っ!?」


 アルトが思わず声を上げる。


 身体強化。しかもかなり高出力。


 ボールは相手コートに転がっていく。


 ライオスはそれを掴むと、そのまま炎属性を纏わせた。


「喰らえぇぇ!! ファイアボール!!」


 ――ドォン!!


 空気を裂くような豪速球。


「うわっ!?」


 こちらの男子生徒の一人が反応しきれず、腹に直撃した。


「ぐぇっ!?」


 そのまま後方へ吹っ飛び、場外へ転がる。


「アウト!」


「っしゃあ!!」


 ライオスがガッツポーズを決めた。


「お前、最初から飛ばしすぎだろ……!」


「遷音速くらいは出てましたね」


 俺は呆れながら前へ出る。


「はっはっは!! こういうのは勢いが大事なんだよ!!」


「いや絶対違うだろ……」


 そんな会話をしている間にも、ボールは次々と飛び交う。


 そんな中、ボールはミリアに渡った。


「いっくよーー!!」


 ミリアが両手でボールを抱えると、そのまま思い切り投げ放った。


「まっずい! みんな、伏せろー!!」


 それを見た俺は、そう叫んだ。


 次の瞬間。


 ――ドォォン!!


 ほぼ砲弾のようなボールが、一直線に飛んできた。


「速ぇぇぇぇ!?」


 アルトが慌てて身を引く。ボールはその横を凄まじい勢いで通過し、そのまま地面へ激突。


 ――ドゴン!!


 土煙が舞い、ボールは外野後方の結界にで跳ね返った。

 

「相変わらず規格外だな……」


 俺は苦笑しながら肩をすくめた。


「あいつ、超級の力じゃねぇ!!」


 アルトは怯えたような声を出す。


「まぁ、アイツは筆記が取れなかったから……」


「ミリアちゃんは獣人だからねぇ」


 メイは特に驚く様子もなく、静かにうなずいていた。


 そんなやり取りをしていると、風を切る音と同時に横からボールが迫っていた。


 外野にいたアスカだ。


 アスカの投げたボールは、空間属性を纏いながら不自然に軌道を曲げている。


「うわっ、曲がった!?」


 生徒の一人が慌てて身を捻る。


 だが、ボールはさらに軌道を変えながらこちらへ迫ってきた。


「任せて!」


 その瞬間、メイが前へ飛び出す。


 神力きんりょくを纏わせた手でボールを弾き、その軌道を強引に逸らした。


 ボールはそのまま高く跳ね上がる。


「ナイス!」


「テンコさん! お願いします!」


 メイの声に合わせ、俺は地面を蹴った。


 身体強化で一気に跳躍し、空中でボールを掴む。


「お返しだ」


 雷属性を軽く纏わせ、そのまま一直線に投げ返した。


 ――バシュッ!!


「うおっ!?」


 ボールは凄まじい速度で飛び、相手側の男子生徒の肩へ直撃する。


「アウト!」


「よしっ!」


 こちら側から歓声が上がった。


「やるじゃねぇかテンコ!!」


 ライオスが笑いながら再びボールを拾う。


 直後、ライオスと俺の視線がぶつかった。


「次はオレの番だぁ!!」


 ライオスは炎を纏わせた豪速球を放つ。


 だが今度は、俺が正面から受け止めた。


 ――ドンッ!!


 衝撃で足元の草が舞う。


「マジかよ!? それ取るのか!?」


「お前の球、真っ直ぐだから読みやすいんだよ」


「言ってくれるじゃねぇか!」


 ライオスが楽しそうに笑う。


「それじゃあ、お返しだ!」


 俺も笑うと、雷のオーラを解放した。


「くらえ! ライトニングアロー!!」


 俺は中央線に向かって駆け出し、そのまま全力で投げ返す。


 ――バリバリッ!!


 青色の雷を纏ったされたボールは、音を置き去りにしながら一直線に突き進み、回避しようとしたライオスの脇腹を掠めた。


「ぐはっ!?」


 ライオスはそのまま転がるように場外へ出る。


「ライオス、アウト!」


「くっそぉぉぉ!! 速すぎるだろ! 直撃したら死ぬぞ!」


 ライオスは、悔しそうな表情をしながら外野へ回った。


 そうして、主力を失った相手側は、一気に崩れ始めた。


 そこへメイとアルトの連携が決まり、最後の一人にもボールが命中する。


「試合終了!! 勝者、緑チーム!!」


 教師の声と共に、周囲から歓声が上がった。




 1回戦の勝利で緑チームが沸く中、すぐに第二試合の組み合わせが発表された。


「第二試合! 緑チーム対青チーム!」


 俺たちは軽く休憩を挟んでコートに戻った。対する青チームには、マヨとカイスがいる。


「容赦はしないわよ、テンコ」


 マヨが涼やかな笑みを浮かべ、カイスは眼鏡を軽く押し上げて会釈した。


「始め!」


 教師の合図で試合開始。


 青チームは動きが素早かった。マヨがボールを拾い、カイスにパスする。カイスは身体強化をかけながら素早く踏み込み、勢いよく投げてきた。


 ――ドンッ!


 見かけによらず、かなりの速度だ。メイが前に出て手を伸ばしたが、ボールは彼女の指先を掠めてアルトの胸に直撃した。


「アウト!」


「くっ……キャッチは苦手なんだよ」


 青チームの連携が光る。


 だが、こちらも負けじと反撃する。


 カタルシアがボールをキャッチし、こちらにパスを寄越した。


「テンコさん!」


「ああ」


 俺は身体強化をかけ、ボールに軽く雷属性を纏わせて投げ返した。ボールは鋭い音を立てて飛ぶが、青チームの後列生徒が反応してキャッチする。


 試合は一進一退だった。


 中盤、メイが神力を纏った強烈な投球で一人をアウトにするも、直後にマヨの正確な返球がメイの肩を捉えた。


「アウト!」


 人数が減る中、俺とマヨの視線が何度かぶつかった。


 終盤、残ったのはこちらが俺とカタルシア、青チームがマヨとカイス含む4人という状況になった。


 カイスが再びボールを拾い、素早いステップで投げてくる。


 俺は身体を捻ってかわし、跳躍してボールを掴んだ。


「お返しだ」


 全身の強化をかけ、雷属性を強く纏わせて全力で投げ返す。ボールは風を切り裂き、青チームの生徒の腕に直撃した。


「いってぇ!」


「体が痺れてキャッチできないなんて、ちょっとズルいわね」


 マヨはそんな軽口を叩きながらも、水のように流動的で滑らかな動きでボールを交わしていく。


 その後、俺たちは人数不利を打開できず、徐々に追い詰められていった。


 カイスのボールがカタルシアを捉える。


「アウト!」


 そして最後、俺一人となったところで、試合終了の合図が響いた。


「試合終了! 勝者、青チーム!!」


 教師の宣言に、青チームから歓声が上がった。


 俺がコートの外へ出ると、マヨとカイスが汗を拭きながら近づいてきた。


「負けちゃったな」


「でもテンコ、手加減してたわよね」


 カイスも眼鏡を直しながら笑った。


「1試合目の技を見せなかったしな」


 それを聞いて、俺は静かに微笑んだ。


「だって、これは親睦会だろ? やっぱりみんなが楽しくできないといけないしな!」


 俺の言葉に、近くにいたアルトたちもうなずく。


「よしっ、3試合目も頑張るぞ!!」


「「おー!」」


 こうして、魔のドッヂボールは、能力を封じられた中でも熱く、笑い声の絶えない交流の場となっていた。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


ライオス:テンコのクラスメイトで、前期選抜首席の実力者。暑苦しいが、見た目に反して魔法使い。


アルト:テンコのクラスメイトで、ライオスの友達。風魔法使いらしい。


カイス:テンコのクラスメイトで、ライオスの友達。スキルの模倣は加護。


アスカ:桃色髪の女の子。マヨと同じ超級クラスで、フォルティス王国公爵家の令嬢。使う魔法は空間魔法。年齢は17歳。


メイ:茶髪の活発な女の子。持っているスキルは加護。一応上位階級の家の娘。13歳。

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