続・修練の間
そんな訳で、いざ水中へダイブ……しかし本当に忙しいエリアだな。飛んだり跳ねたり登ったり、挙げ句の果てには潜水までこなさないといけない始末。
水中の動きを確認したけど、マジで水の抵抗が嘘のように無い。これは水中戦闘が格段に楽になるなと思った矢先、それを確かめてみろと言わんばかりの敵影が。
見通しは良くないが、確認するとサメの集団らしく全部で3匹窺える。呪文の詠唱も、何故か可能な水中戦は本当に地上戦と勝手は変わらない感じ。
これはどっちの効果なのかな、恐らくは『水中適正』の恩恵な気がする。とにかく《スパーク》からの数減らしにと、先手を取って暴れまくる。
なにせこの後、時間内にボタンを回収しないといけないのだ。水中戦闘の感度も確かめたいけど、優先順位的にはそんなに高くは無い。
そんな訳で、この殲滅戦もサクサク進めますよっ!
サメの攻撃は確かに強烈ではあった、尾ひれのビンタとか噛み付きとか体当たりとか。体力もそこそこで、間違いなくゴブリンよりは強敵だ。
ただし所詮はパワーファイター、真っ直ぐ突っ込んで来るしか能が無い。待ち構えてカウンター戦法で、何とでも対処は可能である。
囲まれそうになったら《スパーク》もしくは《Bタッチ》で吹き飛ばし。とどめの《落とし突き》で、早くも敵影は残り1匹に。
ってか、時間が無いので先にボタンを押させて頂きますが宜しくって? ちゃっかりと目的地に移動しながらの戦闘、ボタンは既に目と鼻の先である。
そして残り時間は20秒を切っている、敢えて冒険などしない主義ですので。ポチッと左手でボタン回収、そして鳴り響くレベルアップ報告のファンファーレ。
ビックリしたっ、このタイミングでレベルが18へと上がったっポイ。このボタンで、一気に6400exp貰えたのが大きかったのだろう。
呆然としている内に、海中戦は思わぬ進行を見せた。残ったサメの方はヘロヘロだが、ボタンを押すために降りた水の底に異変が訪れたのだ。
足元が思いっ切り盛り上がって、思わず俺はひっくり返りそうに。どうやらエイが隠れていたようだ、そして同じくファーもエイとウミヘビに追い掛けられている。
おっと不味いな、そう言えばファーは『水中適正』が無いんだった。彼女は彼女で、水中に落ちていたアイテムを拾って廻っていたようだ。
そんな感じで調子に乗っていたら、敵に発見された様子である。
何とか《水中呼吸》が掛かっている内に、そいつ等を倒して地上に戻らないと。そんな訳で襲い掛かって来る敵に、容赦の無い反撃を浴びせ掛ける。
ウミヘビだけは短槍を当て難いので、闇魔法のフルコースで撃沈させてやる。その反撃に、一度だけ噛まれたけどそのスリップダメージはかなり酷かった。
幸い毒消し薬が効いてくれたので、大事にはならなかったけど。エイにも麻痺攻撃があったので、コンボ攻撃がやたらとウザかった。
体力はどちらも低かったので、戦闘自体は短い時間で済んで何より。ただし途中で《水中呼吸》の効果が切れた時は、ちょっとパニくりそうになってしまった。
いや危なかった、溺れずに水面に上がれて良かったよ。
ちなみにここに出現する敵、ドロップはほぼ無いと言うシケた連中ばかり。ただし魔石(微少)をほぼ100%落とすので、その点は有り難かったかも。
そして連続ボタン押しの権利は、完全に途切れてしまう悲しい結果に。まぁ、最後に大きく儲けが出たのでそれで良しとしよう。
レベルも上がってくれたし、気を取り直してもう一度最初から挑戦だ。とは言え、少し奥にこのエリアの出口が見えてるんだけどね?
この調子だと、残りのスイッチは多くて4~5個程度かなぁ。距離と大地代わりのキューブ島の数からみて、恐らくはそんな感じだろう。
水の中までは、さすがにもう面倒見きれません。一足先に水上に戻っていた、ファーの戦利品を確認したらちょっと心が揺れてしまったけど。
さすがファーさん、あの短期間で一体幾つ拾い集めたのやら。
まぁ、大半は水の水晶の欠片みたいなので、当たりはそんなに多くは無いみたい。と言うか、どれが当たりなのかが良く分からない。
何しろ初見のアイテムばかりで、価値が分からないモノが大半を占めている。まずは『星の涙』と言う、手の平サイズの滴型の宝石が1つ。
説明文を読んでも良く分からない、懐に入れておいたらある程度のスキル技を盗んでくれるそうな。それを持ち主が選んだら、役目を終えて壊れてしまうらしい。
そして同じく滴型の、こちらは黄色い宝石『月の滴』と言うアイテム。説明文によると、こっちは何と貴重な蘇生アイテムらしい。
えっ、それって戦闘アリのゲームでは確かに定番の品ではあるけど。この限定イベント空間に限って言えば、凄く貴重なアイテムなんじゃ?
後で琴音に訊いてみようか、ってかこのアイテムもう少し欲しいな……ファーさん、コレと同じようなアイテム、もう少し落ちてなかった?
あっそうか、座布団ボタンの周囲にしか無かったかぁ。って事は、水上の矢印が無い水中を幾ら探しても無駄っポイですな。
残念だが、確かにこんな貴重なモノがホイホイ出て来るのも非常識ではある。1個だけでも大変有り難いし、丁重に使わせて貰おうかな。
そして残りの収集品は、やや当たりの宝石類が少々と紅珊瑚が1つ。小振りなのでそこまで高価では無いとは思うが、これは骨素材なのか観賞法の換金アイテムなのか判断に迷う所。
それでも嬉しい、そしてファーも鼻高々である。
しかし凄いな相棒の身体能力、普通に水の中でも泳げていたし……俺のスキルが波及でもしてるのかな、普通に泳ぐスピードも速かった気がする。
それより鞄の整理とスタミナ回復が終わったら、さっさと次のボタン探しに向かおうか。余り休憩を挟んでいると、ひょっとしたらペナルティ的なモノが課されるかも知れない。
そんな訳で、休憩後に一番近いボタンを探して再び歩き回る事に。その辺は、こっちにはファーがいるから簡単に発見には至るんだけどね?
そして始まる、連続ボタン押し競技……ってか、今回はお金が貰えるらしい。
う~ん、俺としては経験値の方が嬉しかったけど、まぁそれは仕方がない。それでも、始まりの1回目の金額が既に2000モネーとかって凄くない?
4回目で万額超えちゃうじゃん、いやさすがにゴールは間近っぽいけど。取り敢えずリミットを確認、今回も5分以内でのチェーンらしいね。
時間制限付きのアスレチックエリアを、前半と同じ感じで制覇して行く。簡略して報告すると、押したボタンの数は合計で4つ……総額3万モネーの儲けに。
そしてお馴染みとなったお茶の間探索で、ポーションP×2個と苺ケーキ、それから初見の『逆巻きの風呂敷』と言うアイテムをゲットした。
風呂敷は2枚、3回と7回使用可能との表示か記されているがこれはナニ? 説明書を読むに、何とこのアイテムは念願の装備修繕機能を持っているらしい。
これで安全地帯詣では回避出来るが、回数制限付きなんだよね。つまりこれが割と貴重品なら、ホイホイ使ってしまうのも気が引ける。
合計で10回は使用が可能なので、本当に壊れそうな装備品を優先して使うくらいかなぁ? メインの武器とかは、壊れると悲惨なので余裕を持って修繕するのは基本として。
何にしろ、良いアイテムをゲット出来て嬉しい限り。
そして出口のゲートがもう目の前、高台に登って行くルートの頂上にタイマー設置の豪華な扉が窺える。タイマーはもうすぐ1時間で、そんなに過ごしていたとは露知らず。
その中間に、やや広いキューブ平地と道を遮るように置かれた屏風が1枚。最後に何か仕掛けがあるのかなと、後ろを覗き込んだらソイツと目が合った。
立派な体躯の虎だ、ひょっとして屏風から抜け出して来なすった? 取り敢えずこっちの戦闘準備はバッチリだ、何しろ思いっ切り怪しかったからね。
ただし、相手がいきなり放った咆哮技は予想外だった。一瞬身体が竦んで、思い切り先手を取られてしまったのは仕方がない。
敵の“絵画タイガー”の初撃をモロに喰らって、こちらは後手に回る破目に。攻撃力はサメより高いかな、それなら体力はどうだろう?
と言うか、この敵って本当に絵から抜け出して来たのかな? 色々と疑問符が飛び交う中、こちらもようやく短槍での攻撃を返して感触チェック。
うん、強いね……普通に強い、そして動きが割とトリッキーと言うか。近接なのに、フェイント混じりに上下段の攻撃を織り交ぜて来る厄介さ。
しかもスピードが速くて厄介だ、魔法の詠唱を2度も止められてしまった。しかし3度目の正直、完成した《Dタッチ》が虎のHPを吸い取って行く。
うおっ、思ったより効果が高いみたいだけど何故だろう。ひょっとしてコイツ、光属性なのかも……暗闇効果も付随して、いきなりこちらのペースになった。
畳み掛けたい所だが、散々攻撃を喰らっていたのでまずは回復が先かな。
パウダー系は勿体無いから、ポーション瓶で回復しつつ。次なる戦術を脳内で練り込んでいたら、ファーがお手伝いの闇の水晶玉を投下してくれた。
いいぞ、コイツは強敵っぽいからね、弱点属性での横槍は大歓迎だ……ってあれ、今後ろの屏風にもダメージが入らなかったか?
明らかに変だ、ここは作戦変更でまずは《風の茨》で絵画タイガーをガッツリ捕獲。そして使うのも久々な、炎魔法の《キャノンB》を唱え始めた。
詠唱長いなコレ、これでさっきのが幻覚だったらただのMP丸損で終わってしまう。しかし推測は大当たりで、派手に炎の渦に焼かれる屏風型モンスター。
ってか、ガタガタと動き回る屏風ってシュール過ぎるんですけど? どんな技を持ってたのかなとか、色々と興味は尽きないモノの。
虎さんのお代わりとか、無限に呼ばれたらさすがに嫌過ぎる。つまりは、さっさと炎で焼き払うのは正義だったと自認する次第。
既にヨレヨレの屏風を串刺しに、それによって全く良い所無く消滅する成り済ましモンスターであった。その分、残された絵画タイガーには頑張られてしまった。
咆哮技に再度スタンさせられ、その隙に怒涛の攻めには派手にHPを減らされる。噛み付きと鍵爪攻撃のインファイトは、こちらも舌を巻く程の威力。
結局はもう一度ポーション回復の時間を挟まされ、ひょっとしたらレア種より強いんじゃないかとの疑問も。ただやはり、倒した後のスキルP付与は全く無しの結果に。
経験値は凄かったけどね、どちらの値なのかは判然としないけど。
このエリアだけで、一体どれほど経験値を稼いだ事か。お陰でさっき上がったにも関わらず、もう次のレベルアップが見えて来たと言う珍事。
斃した白屏風のドロップも、これまた凄かった……『皆伝の書:武器』と光の術書×1枚、おまけに光の水晶玉と魔石(小)とまるでレア種を倒した時のような報酬だ。
絵画タイガーも負けずに凄い、魔石(小)と『命のロウソク』と、まさか2個目の『月の滴』がドロップ。蘇生アイテム2連続って、まさかこの後死にそうな目に遭うってお告げ?
いやいや、嫌な妄想は取り敢えず仕舞っておくとして。
しかし修練の間は、単なるアスレチックエリアだとばかり思ってたけど。収集もあれば、良ドロップの敵も用意されているとは侮れないな。
もう屏風の置かれた島は無いかな、素直にクリアよりあるなら戻って戦闘回収したいなって正直思う。だって美味し過ぎるもん、レア種並みに強いのがアレだけど。
どうせなら、スキルPも欲しかったと思うのは贅沢過ぎるかな? ファーも出張って確認してくれたけど、どうやらこれ以上めぼしい場所は無い様子。
ついでに取り残しのボタンも無いし、屏風も水上の矢印も無いみたい。それならば、もうこのエリアに滞在する意味は無いって事になるかな。
意外と面白かったアスレチックエリア、知らない内に完全制覇してしまっていた様子。高台からの前もってのルート確保と、相棒の飛行能力の賜物だろう。
てな訳で、これ以上ここに長居する理由も無し!
――何も無いなら、そろそろクリアと参りましょうかね?




