表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/89

第79話

 日差しが気持ちいいお昼。

 俺たちは、港町の大通りをのんびりと歩いていた。

 大通りの両側には店がずらりと並び、大声で客を呼び込んでいる。


『今日も大通りは賑やかだな……』


 まぁ、それがこの港町の良いところでもあるんだがな。

 しばらく歩いたところで、ミュラがぼやいた。


「……へった~……」


 その声に俺とコヨミはミュラの方を見る。


「どうしたっスか?」


 コヨミが聞くと、ミュラはお腹を押さえた。


「おなか……へった~」


 その瞬間、ミュラのお腹からグゥ~と音が鳴った。

 いつもの聞き慣れた音だ。


「もう、そんな 時間か」


 ミュラの腹の虫が鳴いた……という事は、もうお昼時というわけか。

 そう思うと、俺も腹が減ってきたな。


「食堂 帰る? どこか 適当な店 探す?」


 俺が問いかけると、コヨミは腕を組んで少し考え込んだ。


「ん~…………あっ」


 コヨミが何かを思い出したように顔を上げる。


「そういえば最近、新しいレストランできたって聞いたっスよ」


「新しい……レス トラン?」


 俺の言葉に、コヨミが頷く。


「そうっス、この近くにできたらしいっスよ。結構おいしいって噂だし、そこ行ってみるっスか?」


 コヨミはそう言いながら、俺たちを見た。

 ミュラはおいしいという言葉に、表情がぱっと明るくなる。


「いく!」


 安定の即答。


「おいしいごはん、たべたい!」


『新しいレストランか……』


 それは、かなり興味をそそられる話だな。

 一体どんな料理が出てくるのか楽しみだ。


「行こう」


「決まりっスね」


 コヨミは軽く手を叩いた。


「じゃあ、レストランに向かうっス」


 コヨミが先頭を歩き、その後を俺たちはついて行った。

 そして通りを曲がり、港の方へと歩き始めた。




 しばらく歩くと、木造の建物が見えてきた。

 入口の上には新しい看板が掲げられている。

 そして、その店の前には行列ができていた。


「ここっス」


 コヨミが指をさす。

 レストランを見たミュラが目を輝かせた。


「わぁ……!」


 レストランからいい匂いが漂ってきている。

 この行列に、この匂い……これは期待が高まるな。


「それじゃあ、並ぶっス」


「うん!」


「ああ」


 数十分後、俺たちの番が回ってきた。

 コヨミが扉を開けると、カランと小さな鈴の音が鳴った。

 レストランの中は……思っていたより広いな。


「いらっしゃいませ~」


 穏やかな声で女性の店員がすぐに、こちらへ歩いてくる。


「3名様ですか?」


「はいっス」


「では、こちらへどうぞ」


 店員に案内され、俺たちは窓際の席に座った。

 椅子に腰を下ろすと、ミュラは周囲をきょろきょろと見まわした。


「きれいなおみせだねぇ」


「ほんとっスね」


 コヨミも頷いた。


「こちら、メニューになります」


 俺たちはメニューを受け取り開いた。


「んー……」


 新しい店だと、何を食べるか迷うな。

 肉……魚……どれにしよう。


「ん~……悩むっスね」


「ぜんぶ、たべたい!」


 ミュラの奴、とんでもないことを言ってる。

 そんな量を食べられるわけがないぞ。


「無理 だ」


「え~」


「えー……じゃ ない。おすすめ……聞く?」


 俺の言葉に、コヨミは頷いた。


「そっスね。すみませんっス、このレストランのおすすめって何っスか?」


「そうですね……」


 店員は少し考え、コヨミのメニューの1つに指をさした。


「当店のおすすめは、やっぱりこの麺料理ですね」


「麺料理っスか?」


 コヨミが首を傾げた。


「はい。他の麺料理と違い、うちの麺は特別なんですよ」


 店員の言葉に、ミュラが目を丸くさせた。


「とくべつ……?」


『ふむ……』


 麺料理か。

 この世界にも麺はある。

 基本的に小麦粉と水を練って作るものだ。

 現世界でいう、うどんのようなものだ。


 特別になると、太さやコシがあるって事なんだろうか。


「どうするっス?」


 コヨミは俺たちの方を見る。

 その問いかけに、ミュラが右手を挙げた。


「ミュラ! それたべたい!」


 俺も頷く。


「同じ 物、頼む」


「じゃあ、その麺料理を3つお願いしますっス」


「かしこまりました」


 店員は軽く頭を下げ、厨房へと戻っていった。



 三人で料理を待つ。

 その間、ミュラはお腹を押さえながらそわそわしていた。


「まだかなぁ、まだかなぁ」


「もう少しで来るっスよ」


 コヨミが苦笑しながら、ミュラをなだめる。


 そして、しばらくしてから店員が3つの器を運んできた。


「お待たせしました」


 湯気が立ち上る料理が、俺たちテーブルの上に置かれた。

 それを見て、ミュラが思わず身を乗り出す。


「わぁ~!」


 器の中には、たっぷりのスープ。

 そして、その中には太い麺。

 見た目だけなら、まさに太いうどんだな。

 この太さなら、この世界では普通の部類だ。

 スープも海鮮のいい匂いはするが……特に変わった感じはない。


 中身を見て、コヨミは眉を上げた。


「パッと見は……普通の麺料理っスね」


「そう……だな」


 俺はフォークを手に取り、麺を巻いた。

 そして、麺を持ち上げてみる。


『…………ん?』


 麺の色が白色じゃなくて黄色だ。

 これが特別という事なのだろうか。

 俺は、その麺を口へと入れた。


「もぐ……――っ!」


 麺を噛んだその瞬間、俺の目が見開かれた。


 この世界の麺は、小麦粉と水で作る。

 だから食感はどうしても、うどんに近くなる。

 だが、この麺は……違う。

 この弾力。

 このしなやかなコシ。

 この食感は……。


『間違いない! これは……ラーメンだっ!』


 見た目は太いうどんなのに、食感は完全にラーメンだ。

 あの独特の風味とコシは、錯覚なんかじゃない。


『……』


 俺は無言のまま、持ち上げた麺を見つめた。


「……? ゴブ、どうしたの?」


「ゴブくん? 口に合わなかったっスか?」


 まさか、この世界で……ラーメンに出会えるなんて思いもしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ