第十五話 「正しさ」
固有能力、能力、神器などなどを募集します。感想に書いてもらえるととても嬉しいです。名前だけとか能力の内容だけでも全然OK。
いいセンスのものがあればどんどん本編に組み込んでいくので、どうかよろしくお願いいたします。
Side テミスレーナ
【精霊王の加護】『大精霊結界』
テミスレーナが術を発動すると、普段、テミスレーナだけを守っている精霊による守護防壁が街を覆う。
それは、きらきらと輝いており、夜空と合わさって街の上空はまるでオーロラのようになっていた。
「おぉ―――☆さっすがだね~~♪テミスレーナ様、これ、いつまで維持できる?」
「そうですね·····。さすがにこの規模だと消費が激しいですからね。貯めておいた分を全て使い切っても、朝までが限界です。」
「いや、そこまで出来れば十分だよ☆むしろこの規模の障壁を一人で朝まで維持できるなら、最高だよ♪元々、視界の悪い夜に戦闘しない為の作戦だったしね♪」
視界の悪い夜において魔物との戦闘は、危険度が跳ね上がる。視界が効かないのは魔物も同じ条件だが、彼らは視覚以外の感覚が人間より優れているし、何より同士討ちを恐れない。
数で劣っているアドミレス陣営が仮にも対抗出来ているのは、一部の強者による蹂躙と、魔術による広範囲殲滅があるからだ。しかし、後者は同士討ちの危険のせいで夜は使用出来ない。
そこで、目がつけられたのがテミスレーナの固有能力【精霊王の加護】だ。彼女の能力は強固な障壁を少しの魔力で展開出来る。さらにはテミスレーナ本人もエルフという種族なだけあって魔力量は多い。
故に、テミスレーナは予め、夜になる、または戦況が取り返しのつかないぐらい危険に陥った場合、能力を発動させることになっていたのだ。
「でも······」
スウィーの手放しでの称賛に、しかしテミスレーナは不安そうな表情を見せる。
「分かっているよ♪テミスレーナ様の懸念は、あの巨大モグラでしょ☆でも~それなら――」
「私が焼きましたから、大丈夫ですよぉ」
スウィーの言葉に、かぶせるように発言したのは、小さな狐ことハルだ。
「ハルさん!大丈夫だったのですか!?」
「えぇ、まぁ、大丈夫と言えば大丈夫ですかねぇ。いきなり、そこのゴキブリに拉致られたので身体中べとべとですが。」
「アハハ!ゴキブリって酷いな~♪」
ハルの言う通り、その身体は粘着性のベトベトとしたものが纏わりついており、顔は見るからに不機嫌だった。
それもそのはず、ギガントモールを倒したと思った瞬間、地面に引きずり込まれ、街まで強制的に連れ込まれたのだ。そりゃあ不満だろう。
ちなみに余談だが、身体がベトベトなのは半分ハルのせいである。抵抗せずそのまま引きずりこまれればベトベトにはならなかったのだが、連れられる最中、抵抗して何匹かスライムを殺したので、その死体がスウィーによって回収されず、身体に纏わりついているのだ。
「まぁ、そこのゴキブリは置いといて。懸念って何なのですぅ?」
「えっと、私の【精霊王の守護】も完全ではないので、強度以上の攻撃をぶつけられると破壊されてしまうのです。」
「? それなら懸念はギガントモールでは無く、魔人の方では?」
「え、でも魔人は『樹妖精』なのですよね?なら多分、大丈夫です。」
【精霊王の守護】によって展開する障壁は、一つ能力を持っている。それは完全な魔術攻撃の無効化だ。
そもそも精霊とは意思をもった魔力だ。精霊自身が魔力である以上、魔力を消費して発動する攻撃は精霊の意思によってキャンセルが可能なのだ。
そして【精霊王の守護】の障壁は精霊が構成している障壁であり、その存在を対象に魔術攻撃は一切発動しない。そう、正確に言えば魔術の無効化というより、魔術の発動を無効化出来るのだ。
そして『樹妖精』含む、妖精系の魔物は身体的な能力を持たない代わりに、魔術行使に特化しているのだ。そして、だからこそ絶対に【精霊王の加護】は破れない。
「魔術無効化する人多すぎませんかぁ?私の立場が······」
テミスレーナの能力を知ってハルは少し落ち込んだ。この街に来てから、味方側に自分特攻の人が多すぎる気がするのだ。
「ふむ·····これは········。よし、ハルちゃん少し一緒に来てくれない?」
「はっ?何ですか急に。なんであなたの言うことを聞かなきゃ―――」
「ちょっとユキ君について話したい。」
「···············分かりましたぁ。はぁ·····」
一方、スウィーはテミスレーナが【精霊王の守護】の能力の説明を受けていた間、なにやら作業をしていたらしく、しばらくするとハルに声を掛けた。
ハルとしては殺し損なったスウィーは正直大嫌いなのだが、ユキのことと言うと聞かない訳にはいかない。
「テミスレーナ様は···、一応、一緒についてきてもらえる?今、あなたを狙われる訳にはいかないからね♪街の中は安全だと思うけど、念のため。」
「わ、分かりました。」
テミスレーナは何処かスウィーに違和感を覚えながら、その後についていく。
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「ぐぅ·······」
「いってぇ、いてぇよ~~」
「そっちの患者に鎮痛剤!包帯、無駄遣いしないでよっ!!」
スウィー達が訪れたのは負傷者が集まる、野戦病院だ。この世界には治癒魔術が存在するし、冒険都市であるアドミレスには多数の治癒術士がいるが、それでも手が足りていない。魔力を無駄にする訳にもいかないので本当の死にかけの重症者以外には普通の治療しか施せていないのだ。
そこは鮮烈に戦闘の惨さを見せつけてくる場所だった。
「うっ·······」
「お姫様には辛い場所かも知れないけど、吐くなら外でしてね。」
その血と臓物の匂いにテミスレーナが吐き気をもよおし、地に膝をついた。それは、温室で生きて来たテミスレーナにとってはあまりに凄惨すぎる光景。
目に写る人々の多くは身体の何処かを失っている。中には、全身を包帯で巻かれている人や、どう見ても既に息をしていない人間すら存在する。死体をどかす暇すらないのだ。
正にここは戦場以上の地獄だった。
「こっちだよ。」
しかし、スウィーの態度は冷たかった。その言葉にはいつものような、おちゃらけた物は無く、その顔には何の感情も浮かんでいなかった。
テミスレーナはどうにか吐き気を押し込むと、スウィーの後をついて行く。
ふと、そんな中、妙に人が集まっている場所を見つける。
「あれは····?」
「あぁ、うん。そうだね。折角だし、少し様子を見ていこうか。」
「え?」
言うやいなや、スウィーはすたすたと人だかりの方へ歩いていく。ハルは少し不満そうだったが、大人しくその後に続いた。
テミスレーナは、何故か嫌な予感を感じつつ、しかし、じっとしている訳にはいかないので、少し遅れてスウィーについていく。
その一角に集まっている人間は、7人。その全員が医療術士らしく、全力で魔術を使い治療している。
そこにいたのは―――
「全く、無様なものだね。ギラン君」
「ひっ!」
おやっさんと皆に慕われていた、この街の第4級冒険者ギランだった。
しかし、その姿には以前のような屈強さは存在しない。全身は血にまみれ、様々な所があらぬ方向に曲がり、内臓が所々腹から漏れ出している。
そして何より、その身体には左腕と左足が存在していなかった。
「ぐっ、がはっ······はぁはぁはぁ。その声は···スウィー···か······?」
「しゃべらないでくださいっ!」
満身創痍のギランは、スウィーの声に反応する。治療士が、必死で傷を治そうとしているが、傷が深すぎ、このままでは焼け石に水状態だった。
「そうさ。君がバカなことをしてくれたせいで、絶賛ピンチのスウィーちゃんだよ。」
「っ!?スウィーさん!」
「ガハハ····手厳しい····な、ゴホッゴホッ·····」
スウィーは死にかけのギランに、しかし、厳しい言葉をかける。その声音には確かに彼を責めるニュアンスが含まれていた。
「テミスレーナ様。こいつはたかが7級のガキ一人を助けようとして、この傷を負ったらしいですよ?全く本当にバカな人間ですよね。ギラン君、今回の一件が終わったら、君の冒険者資格をはく奪します。」
「そんなっ!?いくらなんでもひど過ぎます!ギランさんはこんなに傷ついているのですよ!」
「だから何だって言うのですか?」
「っ、」
テミスレーナは、怪我人に対して酷い言葉を掛けるスウィーを非難する声を上げる。
しかし、それに対するスウィーの態度はひどく冷たいものだった。彼女の目には子供のような無邪気さを微塵も感じられず、その表情にはただひたすらに「無」があった。
「傷ついているのは、皆同じです。ここにいる人間で傷を負っていない人間なんて存在しません。その中で何故、彼だけ惜しみなく全力で治療されているのか分かりますか?
彼が必要だからです。
戦いに勝つために彼の力が必要で、彼の存在が必要だからです。決して、必要なのは雑兵の命では無い。こいつは、そんなことも分からないバカだったというだけの話です。」
「そんなっ!ギランさんは人を助けたのですよね!?だと言うのに何故、そこまで言われなければいけないのですか!?」
――――チッ。これだからガキは。
スウィーの顔がテミスレーナの発言で歪む。その表情は確かに「いらだち」を表していた。
「いいですか?テミスレーナ様。彼とたかが7級冒険者では命の重さが違います。これはどうしたって変わらない事実です。」
「っ!」
「冒険者には、その富と自由の対価に力無き人々を守らなければならない、という絶対原則が存在します。彼はそれを破ったのです。ここで彼がバカなことに命を使ったことで私達が負けたらどうなると思いますか?
死ぬのは私達だけではすまない。そもそもこの街は近隣の街を大魔境から守るために存在するのです。それが破られれば、当然、多くの街が滅びの運命を辿るでしょう。破壊された街の再建は容易ではありません。一体また人が住める土地になるまで幾年の歳月が必要でしょう?
ここで私達が魔物共に敗北をすれば、一体どれだけの人間が傷つき、苦しむことになるか。あなたも仮にも王族だと言うのなら、綺麗ごとという名のうすっぺらい正義感は捨てなさい。
私達は負ける訳にはいかないのですよ!」
スウィーの言葉は、テミスレーナの心に重くのしかかる。
それは彼女の言葉にある重さだ。つまりは彼女の「覚悟」に他ならない。
スウィーだって決して好きでギランに厳しく当たっている訳ではない。しかし、彼女は誰が何と言おうと、絶対にこの街を守るという「覚悟」を持っているのだ。
それは、この街を守り多くの人々を守るためなら少数の犠牲を斬って捨てることの出来る「覚悟」。迂闊に触れれば火傷してしまほどの圧倒的な「正しさ」だ。
「けど―――」
そう。スウィーはきっと「正しい」のだろう。
「それでもあなたは―――」
それでもテミスレーナは思うのだ。きっと、その「正しさ」は――――
「間違っている」
「っ!」
「目の前にいる人の命を救うことが「間違い」で、見捨てる行為が「正しい」なんて·······そんな「正しさ」を私は認めない!!」
テミスレーナは正面からスウィーから、言い放つ。
スウィーの顔を驚愕に染まった。ここに来た時点では彼女は世間を知らないお嬢様だったはずだ。
なのに、その表情には、その声には、確かに「覚悟」があった。
「君は――――」
「よく言ったな。テミスレーナ。」
「っ!?」
スウィーの言葉を遮って現れたのは、白いマフラーに白い髪をした。腹に穴の開いている少年――ユキだった。
「ゆ、ゆ、ゆ、ユキさんっ!?どうしたのですか!?お腹に穴空いていますよ!!」
「もう、また油断したんですかぁ?」
その明らかに致命傷だろう傷を見て、テミスレーナは驚愕の表情を見せる。しかし、その姿を見てもハルは呆れたような顔をするだけで心配する様子は無い。
「あはは、悪い、悪い。大丈夫だよ、テミスレーナ。こんなのすぐに塞がるから。」
そうして懐から出したのは、『生命薬』。ユキはそれを口に含む。
「おっ。今回は比較的当たりかな。おいしくは無いけど、不味くも無い。」
そうしてしばらくすると、ユキの腹に空いた穴が急速に閉じていく。それは、まるでマジックのように瞬きの瞬間に治ったのだ。
「え?え?え?」
「君が今口に入れたのは万能薬かなんかかな?」
「残念ながら、ちょっとした栄養剤みたいな物ですよ。俺は再生能力は持っていないのでね。」
スウィーの目が一瞬鋭くなり、『生命薬』を睨むが、ユキは肩をすくめて彼女に希望を否定する。
実際、『生命薬』に傷を治す力は無い。ただユキの特異体質と合わさることで特殊な力を発揮するというだけだ。
「よぉ、おっさん。元気してるか?」
「誰だ····お前は········。」
ユキは傷が治ったことは、どうでもいいとばかりにすたすたと歩いて行き、まだ意識が朦朧としているギランに話しかける。
「まぁ、俺は、そうだな······そこにいるテミスレーナの友人とでも思ってくれ。あんた、テミスレーナのこと知ってんだろ?」
「そうか······、その友人が、ゴホッゴホッ·····吾輩に何か用か?」
「あぁ、一つ聞きたいことがあってな。」
「一体なにを――――」
「邪魔しないでください。」
「っ!?」
ユキがギランと話すことをスウィーが遮ろうとするが、その前に立つのはユキの従者、ハルだ。彼女はただ悠然とユキの隣に立つことで、彼の邪魔をしようとする物全てを威嚇する。
そしてユキはギランの傍に座り込むと、彼に問いをかける。
「おっさん、あんた後悔しているか?」
「·········」
「話は聞いたよ。自分よりも遥かに実力の劣る奴を助けたらしいな。そのせいでそれだけの怪我を負ったと。
あんたのその判断のせいで、この戦いは負けてしまうかも知れない。そのせいで多くの人々が傷つき、死んでしまうかも知れない。
それ以前にこうしてギルドマスターから責められ、冒険者資格も無くなってしまうかも知れないぜ。
で?
そこまでしてちっぽけな一人の人間を助けたことを、あんたは後悔していないか?」
ユキの声は真剣そのもの。それは彼なりのけじめだ。
ユキの全力をもって、救うだけの価値があるのか。圧倒的な呪われた力を振るうだけの意味があるのか。
その答えを求めているのだ。
「小僧、名はなんと言う?」
「は?」
しかし返って来たのは、更なる問い返し。ユキは思わず、間抜けな顔をしてしまう。
「いいから、ゴホッ···答えろ。」
「······ユキだ。」
質問の意図は分からなかったが、ユキは聞かれたままに答える。
「そうか、ではユキよ。貴様がさっき「ちっぽけな人間」と言ったやつの名を知っているか?」
「········いや、俺は、今その話を聞いたばかりだからな。」
「そいつはヒースという名でな。年は今年で19になる。
あいつがまだ冒険者学校で学んでいた頃に、初めて出会った。その頃はまだまだ生意気でなぁ、剣技が少し上手いからと言って調子に乗っ取った。
だがある日、学校の授業の一環で初依頼を受けた時、身の上以上のものを受けて、仲間を失ったことがある。その時、ヒースを助けたのは吾輩なのだがな?それ以来、妙に懐かれてしまった。依頼に行くときにもついてくるようになってな。吾輩が何度、同年代とパーティーを組めと言っても、首を横に振るばかりなのだ。
最初は、単純に懐かれているのだと思っておった。でも残念なことに少し違った。ヒースはまだ初依頼の時にパーティーメンバーを死なせてしまったことを悔やんでおるのだ。だから吾輩たちのようなベテランとしか組まない。同年代と一緒に行くぐらいなら一人で行って死んでしまったほうがいいと思っているのだ。
バカな奴だろう?他にも、ヒースは、ゴホッゴホッ!!」
ギランが長々と語ったのはヒースという個人の話。彼は、その話をする間、まるで自慢するかのように終始、笑顔だった。
その顔には微塵も「後悔」なんて浮かんでいない。
「まぁ、つまりだ。吾輩が助けたのは名も知らぬ大勢の人間では無く、「ヒース」という吾輩にとって息子のような青年である。」
「そのヒース君を助けたことに、本当に後悔は無いと?」
「ない。後悔するとしたら、それは吾輩の実力不足のみだ。」
「そのせいで多くの人間が死ぬことになったとしても?」
「ないな。たとえ「間違い」であったとしても、どうして家族を助けたことを後悔できようか?」
ギランは迷いなく言い切る。その目には少しの迷いも感じさせなかった。
だからユキは―――――
「ふふふふふ、あはははははは!!!!いいね。そうでなくちゃ!
気に入った。
安心しろよ、おっさん。あんたの答えは、満足のいくものだったよ。お礼にこの街、俺の「全力」でまるっと全部ハッピーエンドにしてやる。
終わったら晩飯おごれよ。」
ユキは真剣な顔から一転、その表情は笑顔になる。その笑い声は絶望に包まれている病院に響く。
「なぁ、スウィー・ミレン。
命の重さ、つまりはどれだけ重要な人間か、は確かに皆、違うかも知れない。ギランのおっさんがしたことは「間違い」なんだろうさ。
でもさ、でもだよ。出来ることなら、誰もが助かって誰もが救われる、そんな終わり方がいいだろう?
だから俺はそんな未来を目指すよ。そして、もしそうなったら、おっさんは「正しい」ってことになるよな?」
「···········」
ユキはスウィーに向かって堂々と宣言する。
しかし、ユキの問いにスウィーは答えなかった。
「テミスレーナも手伝ってくれ。お前が本当にギランのおっさんを「間違っていない」というのなら、それを証明して見せろ。」
「········はいっ!」
テミスレーナはユキの言葉に元気に返事をする。
彼女は気づいていない。ユキから「さん」が無くなり、敬語では無くなったということに。それはユキがテミスレーナを認めたという証拠だった。
「さぁ、やろうか。」
これは近い未来「白の英雄」と呼ばれる少年の英雄譚。その1ページ目だ。
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Side ボロス(アイルベット大森林)
「くそっ!この私がたかが人間如きに負けるなんて、ありえないっ!!!」
ボロスの目の前にいるのは葉っぱを全身に巻いた女性――――型の魔人「樹妖精」だ。
その身体は世の女性が羨むようなプロポーションなのだが、右手だけが存在していなかった。
彼女は地団駄を踏んで、周囲の魔物達に当たり散らしている。元々の顔は美人だったのだが今は、それも歪んでしまっていた。
どうやら彼女はユキに負けたことが心底、ムカついているらしい。
「犬っころ!来なさい。」
「なんだ。」
彼女はまだ癇癪が収まらないまま、ボロスを呼ぶ。本来、狼の獣人に「犬」と言うのは最大限の侮辱なのだが、ボロスはそのことについて特に文句は言わなかった。
「このノロマッ!そもそもあんたがあのスライムを倒すのに手間取るから、私がこんな目にあったのよっ!」
「ぐっ、すみません······。」
樹妖精はボロスのことを蹴りつける。言っていることは完全に八つ当たりだった。
しかし、ボロスは反撃しない。彼には彼女に逆らえない理由があるのだ。
「ふんっ、あんまり無能だと、コレは上げられないわよ。」
「くっ、それだけはどうか·······。」
「なら私の足を舐めなさい。」
「··········分かりました。」
ボロスは樹妖精に何かを見せられた瞬間、苦渋に満ちた顔をする。
そして彼女に命令された通り、足に顔を近づけて――――
バンッ
ボロスの舌が足に触れる瞬間、足を振り上げた。それは、そのままボロスの顎を蹴り上げる。
「ぐはっ!」
「アハハハ!あんたになんか舐められたくないわよ!足が汚れちゃうじゃない。」
顎を蹴られたことでうめき声をだしたボロスに対して、樹妖精は嗜虐的な笑顔を浮かべて、楽しむ。
「うふふ、次は無いものと思いなさい。しくじったらどうなるか、分かっているわよね?」
「·······はい。」
「じゃあ、もう行きなさい。あんたのブサイク顔なんて見たくないわ。」
そう言われたのを見計らってボロスは樹妖精の前から下がる。
ボロスが少し森を歩くと、現れたのは小さな古ぼけた小屋。
これはアイルベット大森林内にいくつか存在する冒険者の休憩場所の小屋―――だったものだ。
ボロスはそこで眠っている一人の少女に近づく。
少女が気持ちよさそうに眠っている姿を見て、ボロスは胸を撫でおろす。
そして少女の名を呼んだ。
「アンリ·······」
はい、題名変わりました。
というより事前のプロットの三分の一の内容ですね。はい。ですので「ユキVSボロス」は次回か次々回になります。
あれですね。主に、ギランとユキが思ったより喋ってしまったのが原因でしょうか?
え?お前が悪いって?・・・・いいですか、何事も予想通りには行かないものです。
ハイ、私が悪いです。――――申し訳ございませんでした。
(この話、第1章で何文字になるんだろう?)




