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龍人な少女の召喚記~一人一人が主役な舞台の世界~  作者: スカイア=ライメト
第二部:クラン編 第二章:刹那の迷宮
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閑話 夢か幻か、将又現実の境界か

 

 何かが強烈で鈍い打撃される音が響く。それは断続的であるが、一定のテンポで行われているようだ。

『何をしているのですか?』

「ん?ああ、転生トラックの出動とか、うっかり植木鉢の発注をしているんだ」

『ん?何ですか?それは』

「最近の世事には疎いんだったか。折角だし、移動も流行りに乗ろうかと思ってね。それに、こちら側としても偏ってたら詰まらないじゃない?」

 お道化た様子で喋る奇妙な男は、作業を再開した。興味がなくなったのか、喋りかけていた虚ろな目の女性は部屋を出ていく。彼女が出て行ったのも束の間、荒々しく歩く音が聞こえる。

「ねえ、ちょっと!五月蠅いんだけど?」

 背部から神々しい光を放つ女性が入ってきた。ただ、彼は顔を気づかれないように、少しだけ顰めたようだ。

「これはこれは、かの太陽神様が何用で?」

「今貴方、顔を顰めたし対応が雑よね?まぁ良いわ、その事は。要件はね五月蠅いのよ!音を少しは鎮めなさい!」

「はて、何のことやら?これは仕事ですからねぇ」

 肩を竦めながら煽って煽って馬鹿にしよる。これには彼女もニッコリ、ようは激おこだ。額に青筋を出し、中々に恐ろしい。

「仕事でも、周りに迷惑を掛けてはいけないって、教えられなかった?ねぇ?どうなのよ」

「…チッ」

「今、舌打ちをしたわよね。あ、逃げるな!」

 彼は逃走を計り、見事成功した。彼女も後を追い、部屋から出ていく。部屋には誰も居ないようで、確かに誰かが居るのを感じる。

「姉さんも困ったものよね。あの馬鹿もだけど」

「ふふ、面白くて仲の良い家族で良いじゃない。これといった戦争が無いしね」

「貴女達に比べればそうでしょうけれど。それにしても、何をやろうとしていたのか」

「彼?彼なら区間内での例の仕事よ。他と同じく、嗜好を凝らしているみたいね」

 二人の人影、片方は月を模した髪飾りと黒髪の女性で、もう片方は濃密な死の気配―――死に際が見えてしまうほど―――を纏い、鏡に映る肌は青黒い女性である。

「ああ、あれね。それにしても、姉が迷惑をかけたから、少しは手伝いたいのだけれど…」

 目の前の機械を少しいじり、止めた。と言うより、手が止まってしまう。

「駄目ね、殆ど自動化されてるわね。下手にいじって良いものじゃないか。これを作れるなんて、流石司っているだけあるわ」

「そうなの?疎いから分からないわねぇ」

 美人が可愛らし気に傾げるのは、良いものである。と言っても、這い寄る死が如何ともし難いが。そこさえなければ、良き風景だ。

「少しはどう?楽になるし。それに娯楽も楽しめる」

「無理ねぇ。今までの物の方が慣れてて楽よ。直ぐに適応出来る方が少数よ?」

 そんなものかしら。と呟き一緒になって出ていく。少しした後、入れ替わりに奇妙な男が帰って来た。息を切らしてとても倦怠感溢れ出ている。

「はあ、はあ。何てしつこいんだ。たく楽しもうと思ったのにさ!よっこらせっと」

 椅子に座り画面に目を向けた瞬間、突如笑いだした。それも大きな声で嗤いも嘲笑(わらい)も込めに混め、蔑みだけで腹が捩れそうになっている。

「いやー才能は有っても、馬鹿しか居なかったか~。見込み違いが過ぎたか。この世界はやはり駄目だったか」

笑いが収まったかと思うと、落胆の声音で見る者に心胆を寒からしめる雰囲気を纏う。そして何かしらの手続きをし、骨董品風の受話器で連絡を取る。

「頼まれていた事はしたが、検討外れもいいとこだぞ」

『息抜きには良いだろう?少しは楽しめたと思うがねぇ』

「そのせいで、余計な事柄増えたんだが?」

『カーッ!分からねぇもんかねぇ?手際が良けりゃ良い話だぞ』

「まっそうなんだがな。いや、今回の転生者共は慎重な者が、全くと言っても良い程居なかったんだが?」

『何だ、今回は不正(チート)能力を与えなかったんだな?』

 彼は受話器を肩に挟み、タイピングを始める。何かしらのプログラムを書き込んでるようだ。速度はかなりのもので残像が見える、がそれに耐えうるキーボードも可笑しいのでは。

「一辺倒じゃ楽しめないだろう?時間は有るんだしな」

『それもそうだな。注意事項は話したんだろう?』

「まあ、な。婉曲過ぎたやも知れんがな」

『それも試練ってか?そんじゃ、後はやっとくぜ。管理局からも連絡が来たことだしな』

「ああ、それじゃあ宜しくな」

 溜息が聞こえ、視界が闇に閉ざされる。再び光が見えたかと思うと、違う景色だ。そこには巨大な木の根が地面から、虚空の裂け目から、視界の至る所で生えている。ふと気を緩めたら、天地が分からなくなってしまいそうだ。

 宙を飛んでいる感覚に陥いる錯覚を感じ、目を閉ざす。次に目を開けると視界を埋め尽くしていた根が、綺麗さっぱりに消え去っていた。そこには何も無かったかのように。幻想が夢と現実の境界を揺らがせたとき、確かに起こるのだろう。

 世界の終焉にして結末とは、存外淡白に感じてしまう。リセットボタンは無いにしても、デリート行為はあるのだから。

箸休めならぬ筆休めとして。

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