第29話 対立中
助けてくれー。
と、俺は悲惨な目にあっていた。
右翼と左翼。しかし、見た目はどちらもかわいい。いわゆる美少女という分類をしてもいいような女子だ。雑誌モデルにスカウトされてもおかしくはないような2人だ。そんな2人に迫られている。
普通の人であったら、お前羨ましいな。リア充死ね。爆発しろとか言われてしまうだろう。でも、そうならない理由がある。
右翼と左翼と言ったが、これがすべてだ。
こんな政治的主張の強く女子にみんなドン引きしていた。あ、勘違いしないでほしいのは、女子は政治に関わるなということではない。この2人の主張が強すぎて一般人からしてみればおかしな人という分類になってしまうほどの個性だったのだ。
政治に関わってしまっていた俺でもちょっとなあと思ってしまうから他のクラスメイトだと政治に興味ない奴もいるからなおさらだ。
他のクラスメイトは本当に薄情だ。
どうして俺は目で他のみんなに助けを求めているというのに誰も助けてくれないのだろうか。
こういう時、山田君は助けてくると思っていた。俺はクラスの廊下側で前から3番目の席に座っている山田君に助けを求めていた。山田君は、かなりの女好きだ。女子がかわいければナンパをしょっちゅうするというかなり残念な男だ。それなのに今回はどうして助けてくれないんだ。
女好きなのに。
もう一度言う。女好きなのに。
「野田君。さあ、私の見方をしてよ」
相崎が強行的に俺に味方をしてほしいと訴えている。
いやいや、やめてくれ。本当にこれ以上相崎が俺に助けを求めるとなると他のクラスメイトに俺が右翼だったということがバレてしまう可能性があるじゃないかよ。
「せんせー、早く来てよおおおおおおおおおおお」
「はーい、じゃあ、授業始めますよー」
「はい?」
俺が、叫ぶと同時に1限の授業担当の英語の村上先生(女性、28歳独身、結構かわいい)が教卓の前に立っていた。
時計を見る。
時間は1限の開始時間1分前だった。普段だったら文句を言う時間だが、今日の俺は違う。
「よし、では、先生授業始めましょう!」
勢いよく俺は村上先生に向かって言う。
それは、他のクラスメイトも同様だった。
ああ、授業の時間が伸びるがそのかわり面倒ごとに巻き込まれなくて済む。俺らは、その後者の考えにしたが授業を再開したのだった。
でも、授業が終わったらまた俺は2人に巻き込まれてしまうのか。
それを思うと授業に十分に集中することなどできるわけなく、今日やった内容はまったくといってもいいほど頭の中に入ってこなかった。
ああ、この部分テストに出ないでほしいな。
出ないでくれないかな。
そんなことを考えるだけで授業が終わった。
しかし、授業が終わったら絡んでくると思った相崎は絡んでこなかった。相崎が絡まなかったので福島もおとなしくしていた。
普通だったら転校生が来たらその子のもとにクラスメイトが集まって「今まで何していたの~」とか、「部活何する?」とか「趣味は?」とか質問攻めにあうのが基本だと思うが、そんな光景はなく福島は1人ぽつんと席に座っていた。
その状態が2、3限の後の休みも続いた。
状況が変わったのは、4限の終わりすなわち昼休みであった。
俺はお昼を食べようとするとトントンと肩を叩かれる。
叩いたのは相崎だった。
「野田君、来て」
俺は、逆らわず素直について行った。
教室外で話すならクラスメイトに聞かれないで済むという判断のためだ。
そして、屋上へと続く扉の前で相崎は、俺に話しを振ったのだった。




